★『にっぽん三銃士 博多帯しめ一本どっこの巻』(96min, 1973)
上記作品の第二部。夜行列車(の貨車)にまぎれこんで東京を脱出した三銃士のその後の話。
それぞれの出自と苦境を後にした三人は、列車に運ばれるままたどり着いた新天地・博多でまたまた一騒動に巻き込まれる。
作品の冒頭には、前作を観ていない人を配慮して(?)、前作のダイジェストまではいっている(ナレーションは小沢昭一)。といっても、ストーリーをわからせるというより、笑わせるのがねらいなのだ(「モンティ・パイソン」にも「番組を見損なってしまった視聴者のため」と称してその回の冒頭から終わりまでをダイジェストで見せるネタがある。これもまた、観ていない人には意味をなさないダイジェストという笑いをねらったもので、「なんでそういう要約になるの!」というツッコミを誘発する内容になっている)。
話は、三人が転がり込んだスラムのあねしゃんことカラスのお新(市川翠扇)が経営するビール工場(飲み屋の飲み残しを回収・ブレンドした独自のビール)とヤクザの利権争いを軸に進められる。前作と立て続けに観たこともあってか、インパクトは三人のキャラクターがくっきりと見える『おさらば東京の巻』のほうが強いのだが、任侠映画をパロディした北風のケンと呼ばれる男(田中邦衛)の生真面目さと滑稽さが隣り合わせになった人物造詣など、見所もある。
また、細かい箇所になるけれど、オカマバーのオカマさん二人が、どちらがその店のナンバーワンかをめぐって「あたしがワンよ」「あなたはツーよ」「ワンよ」「ツーよ」「ワン!」「ツー!」「ワン!」「ツー!」というやりとりをするカットから、それとは別の場所で行われる歌の演奏開始につなぐところや、後輪が一本パンクしてガッタン、ガッタン、ガッタン、ガッタンというアメ車の走行音をリズムにして黒田忠吾(小林桂樹)が軍歌を歌う場面など、シビれる演出も多い。
五木寛之の原作では、三人は日本も出てヴェトナムへ行ったりするようだが、いったいどうなるのか行く末が気になるので探して読んでみたいと思う。
この作品を観ていて思ったのだけれど、岡本喜八という人は、車で大勢の人間が移動するさまを描くのが好きなのではなかろうか。本作でもヤクザがトラックやワゴン車にのってがーっと目的地へ移動するシーンをやたらと描いているのだが、その派手さと丁寧さに比べると、そのようにして移動した先で起こる肝心の乱闘自体はやけにあっさりとしているのだ。この傾向は、『暗黒街の弾痕』(1961)や、『顔役暁に死す』(1961)でも同様だったように思う。
⇒日本映画データベース > 『にっぽん三銃士 博多帯しめ一本どっこの巻』
http://www.jmdb.ne.jp/1973/cw000070.htm
⇒日本映画専門チャンネル > 監督・岡本喜八の世界
http://www.nihon-eiga.com/kihachi/index.html