高田理惠子『グロテスクな教養』(ちくま新書539、筑摩書房、2005/06、amazon.co.jp)#0432


『文学部をめぐる病い——教養主義ナチス旧制高校松籟社、2001/06、amazon.co.jp)の著作もある高田理惠子(たかだ・りえこ, 1958- )氏の新著。


教養というどこか得体の知れないものをめぐる言説の変遷に着目して、「どのような階級の人間の、どのような欲望に基づいて、どのような教養論や教養観が生産・消費されてきたか、されているか」を論じる一冊。


日本における教養の問題は、つづめて言ってしまえば「なぜ、人文書を読むのか?」という問題に集約してみることができる。そのさい「なぜ」という問いのうちには、就職や実生活には役立たないのに、という実利的な観点が含まれている。このことを考えるためには、逆に「なぜ、就職や実生活に役立たない人文書を人は読んできたのか?」という観点から歴史を振り返るのが有益だろう。


本書は、そうした「欲望」の観点がはいっていて、このことを考えるうえで参考になる。

・第一章 教養、あるいは「男の子いかに生くべきか」
・第二章 戦争、そして教養がよみがえる
・第三章 出版社、この教養の敵
・第四章 女、教養と階級が交わる場所


⇒作品メモランダム > 2003/07/29 > 教養とは何の謂い?
 http://d.hatena.ne.jp/yakumoizuru/20030729/p1