『顔役暁に死す』(97min, 1961)


丘倉市長に再選された佐伯大三(林幹)をスナイパーの銃弾が襲う。佐伯市長は倒れ、スナイパーを現場に薬莢を残して去った。


そこへ佐伯の息子佐伯次郎加山雄三)がアラスカから帰国する。自宅には次郎の不在中に佐伯の妻となった女・久子島崎雪子)がいる。アラスカ帰りの次郎は行動力あふれる男で、現市長・今村(柳永二郎)や佐伯暗殺事件を担当した細木警部(田崎潤)のもとを訪れ、未解決のままの事件の解明に乗り出す。やがて明らかになったのは、丘倉市の縄張り争いを展開する二組のやくざ、後藤興業(ボスの後藤は平田昭彦)と半田運送(ボスの半田は田中邦衛)、警察の汚職がかかわっているということだった。事件の解明をの鍵となる薬莢をめぐって警察と二組のやくざと次郎の利害が入り乱れる。


大藪春彦の小説『火制地帯』に基づいて池田一朗が書いた脚本は、冒険小説の王道的な展開で、推理小説や冒険小説を読んでいる観客なら、早々にストーリーの行く先は見えるだろう。しかし、ストーリーはもはや映画をつくるアリバイなのではないか。良家の坊ちゃんという設定も手伝ってか、苦境に悩まないカラリとした次郎(加山雄三)の言動に魅せられていると、これが一種の復讐劇であることを忘れそうになる。


今回観たフィルムは、現在唯一上映できるものだそうで、そのかわり劣化が目立ち、退色、コマ落ちする。人物がぱっと消えて次の瞬間少し離れたところにあらわれたりと、一種のジャンプ・カットになっていて、それはそれで新鮮であった(いや、要するに作品が愉快なのでほとんど気にならなかったのであった)。


⇒日本映画データベース > 岡本喜八 > 『顔役暁に死す』
 http://www.jmdb.ne.jp/1961/ck001820.htm