この春は、週に一度月曜日の昼下がり、日本女子大学にて「現代社会論VII」(情報社会論)という講義を担当させていただくことになり申した。
同大学の遠藤知巳先生が人を捜しておられたところ、加島卓さんの中継によって、小生のところにボールが飛んできたのでありました。
一瞬「キラーパス」という言葉が念頭に浮かびかけましたが、それだとパスをもらった小生がこれからゴールを決めるストライカーであるかのような、僭越にもかっこいい意味になってしまうわけですけれど、もちろんそうではなくて、試合を観ている観客席から「えっ、そんなところにパスが通るの!?」と驚いたという、そんなイメージです。あ、当事者としては青天の霹靂と云えばいいのですかそうですか。
「情報」も「社会」もよく分からないわたくしですが、それだけに人一倍勉強させていただき、学生のみなさんとあれこれ検討して参りたいと思います。遠藤・加島両先生には、このような機会を与えていただいたことに、心から感謝申し上げる次第です。
シラバスは、こんな感じです。
■概要
20世紀後半から始まったコンピュータとネットワークの開発・普及によって、人類史上かつてない速さと規模のデータを交換しあう世界が到来しました。現代社会はそのただ中にあります。それは個々人の生活から、文化、技術、政治、経済、国際関係といったあらゆる方面にわたって、私たちの行動や考え方に変化をもたらしているところです。いったいなにが起きているのか、起きようとしているのか。まさに世界を挙げて社会実験を進めているところだと言っても過言ではありません。
本講義では、こうした現状やその先に訪れる未来について考えるための材料を提供し、受講者と共に考えます。講義全体は三つの部分から成ります。第一は、現在私たちが置かれた位置を把握するために必要な準備として、情報の歴史、それを扱う人間の知覚や認知、情報の中核となる言語の性質を確認します。第二に、人類が情報とどのように付き合ってきたかについて、いくつかの具体的な事例を通じて検討します。そして第三として、コンピュータとネットワーク、あるいはそこで提供されるソフトウェアやサーヴィスがもたらした変化や可能性、その問題点を考察してゆきます。
■講義予定
01 プロローグ:わからなさを抱きしめて――「情報」に躓く
第I部 準備篇――探険の道具を整える
02 まずは地図を広げてみる――情報の歴史
03 私たちは何を知ることができるのか?――経験の条件/情報の生理学
04 ことば、ことば、ことば――"Language is a virus."
第II部 歴史篇――人間は情報とどうつきあってきたか
05 知のネットワークを編み上げる――ロンドン王立協会の場合
06 言葉でつくる宇宙の模型――百科全書と情報の編集
07 同じ本は二度と読めない――「読む」ことの現象学
08 文書の帝国――統治からビジネスまで
09 秘密と公開――情報をめぐる静かで激しい戦い
第III部 現代篇――ビットの時代を生きるために
10 すべてが情報化する――ビットの誕生とその波及
11 コンピュータにできないこと――Computerを訳したら
12 バベルの図書館の歩き方――さがしものはなんですか?
13 アルス・コンビナトリア――新たなる結合術とネットワーク科学
14 サイバースペースでつかまえて――「関係」の未来
15 エピローグ:物質と記憶をデザインする――断片化に抗うたった一つの冴えたやり方