★『東京原発』(2002、日本)


監督=山川元。東京都知事役所広司)が都庁の局長クラス職員を会議室に集めて、「東京に原発を誘致するぞ、ゴルァ」と発言。是非をめぐって会議が右往左往するプロットと、政府が極秘裏にフランスから運輸して東京経由で福島へ移動させようとしていたプルトニウムの輸送車が爆弾マニアの少年にのっとられてしまうというプロットがからみあう。


知事と職員と専門家のやりとりを通じて、「だって電気にたよりっきりの生活なんだから誘致したって文句言えないじゃん」という賛成派の意見と「そうはいってもとんでもなくリスキーだし、実際のところ原発なくたってOKなんじゃないの?」という反対派の意見の典型的な対立を見せながら、歴史的にも実用的にもけっこうエエ加減な利権がらみの原発開発の現状を皮肉っているのだが、それは同時になんにも知らない(?)観客に対するレクチャーでもあるという皮肉。


これをほかならぬ都庁のお膝元・新宿前武蔵野館で観るわたしなぞは、「おい、これってばあんたの問題だぜ、どうすんのよ?」と説教されるために代金を払ったような具合であるのだが、それでも細部の可笑しさが積み重なって笑いながら深刻になる/深刻なのに笑っちゃうという次第。


この映画、原発推進派にしてみればなるたけ人に観てほしくない作品であろうが、忌野清志朗の(「なにいってんだ、ふざけんじゃねぇ、核などいらねぇ〜」という)歌ほどには直截的ではないので、それほど物議をかもしていないのかもしれない、って憶測でものを言ってますがわたし(これもまた世間への無関心のなせるわざか)。


この映画、あらゆる主要登場人物が予期せぬ失敗を犯す映画でもある。この数々の人為の失敗と、しそこなうということが考えられない自然(放射性物質放射線を放射しそこねることはない)の厳然さの対比が実をいえばこの映画があらわにしようとしていることなんではないか。そんなことはともかく、おもろかった。