★辻惟雄『奇想の系譜――又兵衛―国芳』(ちくま学芸文庫ツ7-1、筑摩書房、2004/09、amazon.co.jp)
日本近世絵画の系譜を「奇想画」で辿る一冊。遡上にのぼせられる画家は、岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曾我蕭白、長沢蘆雪、歌川国芳。本書は1968年に『美術手帖』に連載された原稿に加筆して1969年に刊行された。親本のあとがきで辻氏が、日本のコレクターにむけて本書でとりあげた作家たちの作品を袖にせず「いまからでもおそくない」から目にとめるように(そうでないとどんどん海外のコレクターの手にわたってしまう)呼びかけているのが印象的だ。
★アンリ・フォシヨン『かたちの生命』(阿部成樹訳、ちくま学芸文庫フ23-1、筑摩書房、2004/09、amazon.co.jp)
Henri Focillon, Vie des formes, suivi de Eloge de la main (P.U.F., 1943)
Henri Focillon, 'Paroles de pierres' in Témoignage pour la France (1945)
アンリ・フォシヨン(1881-1943)1934年の著作で、本邦訳書はちくま学芸文庫のために訳しおろされた新訳。かたち(forme)を「空間」「素材」「精神」「時間」の観点から考察する。邦訳にはほかに、『形の生命』(杉本秀太郎訳、岩波書店、1969)がある。
★ナンシー・Y.デーヴィス『ズニ族の謎』(吉田禎吾+白川琢磨訳、ちくま学芸文庫テ4-1、筑摩書房、2004/09、amazon.co.jp)
Nancy Yaw Davis, The Zuni enigma: A native american people's possible Japanese connection (W.W.Norton, 2000/08)
「遥か昔アジア人(モンゴロイド)が、ベーリング海峡が陸続きであった頃に北アジアからアメリカ大陸に移動して行き、やがて南アメリカまで広がったと言われている。この人々がアメリカ大陸先住民の先祖であるという説は、学界の定説であり、常識になっている。海面の上昇に伴いベーリング海峡が出来て以後、コロンブスが新大陸を発見するまでの期間にアジア人が太平洋を渡ってアメリカに達した可能性は一般に否定されてきた。ところが、日本人が一三世紀(鎌倉時代)に太平洋を渡ってアメリカ大陸に到達し、やがてズニ族の村に住み着いたのではないかという、驚くべき説を様々な角度から検証しようとしたのが本書である」(訳者吉田禎吾氏による解説より)
★大塚英志『江藤淳と少女フェミニズム的戦後――サブカルチャー文学論序章』(ちくま学芸文庫オ14-1、筑摩書房、2004/09、amazon.co.jp)
「サブカル化日本との闘い/サブカルと文学の選別に拘泥し続けた作家/その理由と基準に迫る新しい江藤淳論」(帯より)――親本は2001年11月に筑摩書房より刊行された。
★『内田百輭集成24――百鬼園写真帖』(ちくま文庫う12-25、筑摩書房、2004/09、amazon.co.jp)
毎月のおたのしみだった百輭集成もこれにて御仕舞い。最終巻は写真帖。あのどこかしら怒っているようにも見える口元の様子も歳をおって眺められます。
★『井伏鱒二文集 第1巻――思い出の人々』(ちくま文庫い51-1、筑摩書房、2004/09、amazon.co.jp)
鱒二のとぼけた妙味あふるる随筆を四巻に編集した文集。
★ヘルマン・ブロッホ『夢遊の人々(上)』(菊盛英夫訳、ちくま文庫ふ32-1、筑摩書房、2004/09、amazon.co.jp)
Hermann Broch, Die Schlafwandler (1931-1932)
ついに文庫化、ヘルマン・ブロッホ(1886-1951)がヒトラー台頭へと向かうドイツを描いた全体小説。上巻には「第1部 1888年 パーゼノウまたはロマン主義」「第2部 1903年 エッシュまたは無政府主義」を収録。600ページ+入野田眞右「ヘルマン・ブロッホ」+ドイツ近代史略年表(1861-1921)。親本は1971年中央公論社から刊行されたもの。
★臼田捷治『装幀列伝――本を設計する仕事人たち』(平凡社新書241、平凡社、2004/09、amazon.co.jp)
戦後日本の装幀文化史を追う好著。といってもこれから読むところなわけですが、書物や装幀に関心がある向きには興味深い一冊かと。初出は『デザインの現場』の連載。
★猪瀬直樹『マガジン青春譜――川端康成と大宅壮一』(文春文庫い17-11、文藝春秋社、2004/09、amazon.co.jp)
「1899年生まれの川端康成と1900年生まれの大宅壮一。純文学とジャーナリズム、作品も人物も対極の二人だが、青年時代には大きな共通点があった。雑誌投稿である。自らの進むべき道を求め、挫折の中で這い上がる二人を主人公に、芥川龍之介、菊地寛を脇に、欲望と大志のエネルギーあふれる大正メディア群像を描出した青春評伝」 親本は1998年5月、小学館刊行。
★川上弘美『センセイの鞄』(文春文庫、文藝春秋社、2004/09、amazon.co.jp)
もいちど読みたいなァと思っていたら文庫になってました。解説は木田元さんです。
★飯沢耕太郎監修『世界写真史』(美術出版社、2004/09、amazon.co.jp)
美術出版社のこのシリーズ、ハンディなのに「世界××史」とおおきなタイトルが付してあってつい読んでしまいます。目次の項目はつぎのとおり。
1.写真の誕生
2.経験の拡大――19世紀後半
3.近代写真の成立――1900-1930年代
4.写真表現の拡大――フォト・ジャーナリズム、広告・ファッション写真
5.現代写真の胎動――1950-1970年代
6.写真の現在――1980-20世紀末
7.写真技術史
8.写真をめぐる技法・用語解説