★天野郁夫『学歴の社会史――教育と日本の近代』平凡社ライブラリー526、平凡社、2005/01、amazon.co.jp)#0017


1992年11月に新潮選書の一冊として刊行された本の新装版。明治時代をつうじて、どのようにして学歴の社会が形成されてきたかを多面的に検証する一冊。おもろい。

試験の社会、学歴の社会というわが国の社会の特徴づけは、内外に広く知られている。しかも試験も、学歴もともに明治維新以前の日本が、知らなかったものである。近代社会を、つくりあげていく過程で、欧米に学び、輸入し、移植をはかったものである。それがなぜ、日本の社会を特徴づけるもっとも重要な要因とされるようになったのか。試験と学歴の二つに視点をすえて、掘り下げていったら、わが国の教育と社会のかくれた構造が、ひいては日本の近代のもつ普遍性と特殊性の双方が見えてくるのではないか。それがこの二つを選び出すにあたっての戦略的なねらいであった。

(同書、pp.5-6)


同著者による姉妹編として、『試験の社会史――近代日本の試験・教育・社会』東京大学出版会、1983/10、amazon.co.jp




ショーペンハウアー『意志と表象としての世界II』西尾幹二訳、中公クラシックスW37、中央公論新社、2004/09、amazon.co.jp)#0018


ショーペンハウアー『意志と表象としての世界III』西尾幹二訳、中公クラシックスW38、中央公論新社、2004/09、amazon.co.jp)#0019


中央公論社から刊行されていた『世界の名著』に収録されていた『意志と表象としての世界』の邦訳を中公クラシックスでは三分冊で収録。他のクラシックス版同様、親本にあった懇切な解説と年表は省略されている。



★ジョゼ・ジョバンニ『気ちがいピエロ』(岡村孝一訳、ハヤカワ・ミステリ1114、早川書房、1970/06)#0020
 José Giovanni, HISTOIRE DE FOU(1959)


作家で映画監督のジョゼ・ジョバンニ(Jose Giovanni, 1923-2004)の小説第五作品。書名は直訳すると「気ちがいの物語」。訳者あとがきによると、主人公ピエール・ルートレル(気ちがいピエロ)は実在の人物だとか。ゴダールの映画気狂いピエロ』(PIERROT LE FOU)(1965, amazon.co.jp)は、この小説とは別のもの。ゴダールの映画の原作は、ライオネル・ホワイト『妄想』(1962)*1


⇒Wikipédia (fr) > Joé Giovanni
 http://fr.wikipedia.org/wiki/Jos%C3%A9_Giovanni


渡辺格宇沢弘文『科学者の疑義――経済学と生命科学の対話』エピステーメー叢書8、朝日出版社、1977/11)#0021


とおりかかった古本屋(明倫館)の露台に、未読のエピステーメー叢書を見つけて引き返す。生物学者の渡辺格と経済学者の宇沢弘文の対話本であった。なぜかその露台にはこの本が二冊まとめておいてある。比べると、一方が第一版で他方が第二版。ぱっと見のちがいは、背表紙にエピステーメー叢書の通し番号(本書は8)がふってあるかないか(第一版にはふってない)。誤植などの訂正もなされているかもしれないからと、第二版を手にとる。本書はもともとエッソ・スタンダード石油株式会社広報部が刊行していた「エナジー対話」の第七号「科学者の疑義」として1977年6月に刊行されたもの。同エナジー対話版に、最終章「『新しい科学』をめぐる疑義」を追加して成ったのが本書。著者たちの写真をみると、二人とも和服姿(というか、温泉宿の浴衣にどてらをはおったような姿)であるのが印象的。本書で「疑義」が呈されているのは「経済性優先社会」「科学と人間」「人間性」「国家の役割」「科学と社会」「弱者」「新しい科学」。目をとおしたらまたレポートしたい。


三島由紀夫『私の遍歴時代1』ちくま文庫み13-5、筑摩書房、1995/04、amazon.co.jp)#0022


上の『科学者の疑義』を手にしたついでに露台をながめわたすと、三島由紀夫のエッセイ集が目にはいる。以前読んだものだけれど、また読みたくなって手にする。三島は小説よりもエッセイや講演のほうがおもしろいと思う。



シモーヌ・ヴェーユ『カイエ1』(山崎庸一郎+原田佳彦訳、みすず書房、1998/11、amazon.co.jp)#0023


上記二冊を手に、明倫館の店内にはいる。科学・数学書の棚をざっとながめて、最後に哲学思想の棚を見ると、昨日気になりはじめたヴェーユの『カイエ』邦訳版が四冊そろっておいてある。価格も自分が知っている相場(というほどのものではないけれど要するに複数の古書店における値づけの平均)よりも安い。これは入手して読みなさいという神の思し召し、と四冊を棚から抜いてレジへ運ぶ。


てな個人的な事情はともかくとして。『カイエ』(CAHIERS=「研究手帖」「覚書」の意味)は、ヴェーユがつけていた個人的な覚書で、各種文献からの引用、読書ノート、覚書、数式、詩が記されたノート。このノートを生前のヴェーユから預かったギュスターヴ・ティボンは、彼女の歿後、これらのノートから重力と恩寵』(La Pesanteur et la Grâce, 1947, Plon)を編集した(邦訳は『シモーヌ・ヴェーユ著作集3』春秋社、1998/10やちくま学芸文庫版がある)。『カイエ』の本邦訳書は、プロン社(Plon)から刊行されたCAHIERS全3巻(1951, 1953, 1956)に加えて、アメリカ・ノート(7冊)とロンドン手記(1冊)の全訳を四分冊にしたもの。


第一分冊には、カイエI〜IVと「諸ウパニシャッドからの抜粋」が訳出されている。


シモーヌ・ヴェーユ『カイエ2』(田辺保+川口光治訳、みすず書房、1993/07、amazon.co.jp)#0024


第二分冊には、カイエV〜VIIIと、「『パガヴァッド・ギータ』の訳」が訳出されている。『パガヴァッド・ギータ』とは、古代インドの叙事詩マハーバーラタの一部。上村勝彦(1944-2003)によるサンスクリット語原典からの邦訳がある(ちくま学芸文庫)。ただし、2003年に上村が歿したため、残念ながら同訳書は途絶している。


シモーヌ・ヴェーユ『カイエ3』(冨原眞弓訳、みすず書房、1995/09、amazon.co.jp)#0025


第三分冊には、カイエVIII〜XIが訳出されている。


シモーヌ・ヴェーユ『カイエ4』(冨原眞弓訳、みすず書房、1992/01、amazon.co.jp)#0026


第四分冊には、「アメリカ・ノート」と「ロンドン手記(1943年)」が訳出されている。原書は、La Connaissance Surnaturelle(Gallimard, 1950)として刊行されたもの。『カイエ』と同様に、さまざまな覚書、読書メモ、引用などが書きとめられている。既存の邦訳書『超自然的認識』(田辺保訳、勁草書房、1976)は、上記ガリマール版からの抄訳。訳者の冨原眞弓氏によると、ガリマール版もまたヴェーユの手稿の抄録とのこと。冨原氏は本書を訳出するにあたって、刊行本だけでなくもととなった手稿を用いているとの由。ありがたい。



★アントナン・アルトー『アントナン・アルトー著作集IV 革命のメッセージ』(高橋純+坂原眞里訳、白水社、1996/05、amazon.co.jp)#0027
 Antonin Artaud, Messages R&eaaute;volutionnaires(Éditions Gallimard, 1971)


「アントナン・アルトー著作集」(全5巻)の一冊。本書に収められた文章のほとんどは、1936年2月から10月にかけてアルトーがメキシコ滞在中に書いたもの。本書は全体が三部にわかれていて、第一部ではメキシコの大学で行った講演が、第二部と第三部には芸術論や政治に関する各種のエッセイが収録されている。個人的には「文化の普遍的基礎」や「芸術が社会にもたらすアナーキー」といったテクストに興味を惹かれています。アルトーの書誌もいつかつくります。



★ヴィンセント・ロブロット『映画監督スタンリー・キューブリック浜野保樹+櫻井英理子訳、晶文社、2004/09、amazon.co.jp)#0028
 Vincent LoBrutto, STANLEY KUBRICK: A Biography(1997)


スタンリー・キューブリック(1928-1999)の評伝。キューブリックが死去する2年前に書かれた本書は、著者の言によると刊行当時「スタンリー・キューブリックに関する初めての包括的な評伝」であるとのこと。キューブリックに関しては、2004年にクリスティアーヌ・キューブリックキューブリックの妻)が編集したスタンリー・キューブリック――写真で見るその人生』浜野保樹訳、愛育社、2004/06、amazon.co.jp)も刊行されている。


ジャン・ジュネ『アルベルト・ジャコメッティのアトリエ』鵜飼哲編訳、現代企画室、1999/10、amazon.co.jp)#0029


ジュネの六編のエッセイを編んだ一冊。

・「アルベルト・ジャコメッティのアトリエ」
・「綱渡り芸人」
・「レンブラントの秘密」
・「犯罪少年」
・「……という奇妙な単語」
・「小さな真四角に引き裂かれ便器に投げこまれた一幅のレンブラントから残ったもの」


★宮下忠安+小竹雅子『もっと知りたい! 国会ガイド』岩波ブックレットNo.642、岩波書店、2005/01、amazon.co.jp)#0030


国会についてもっと知りたかったので手にしてみた一冊。


酒井啓子イラクはどこへ行くのか』岩波ブックレットNo.643、岩波書店、2005/01、amazon.co.jp)#0031


どこへ行くのか知りたかったので手にしてみた一冊。


文學界第59巻第02号、2005年02月号(文藝春秋社)#0032
☆特集=映画の悦楽
蓮實重彦「身振りの雄弁――ジョン・フォードと「投げる」こと」
小津安二郎「文学覚書」
阿部和重「インコンプリート・プロジェクション」


内田樹「私家版・ユダヤ文化論 第2回――ユダヤ人とは誰のことか?」


『新潮』第101巻第02号、2005年02月号(新潮社)#0033
☆小特集=ジャック・デリダ
柄谷行人鵜飼哲浅田彰「re-membering Jacques Derrida
ジャック・デリダ柄谷行人浅田彰「超消費社会と知識人の役割」(再録)

*1:「『気狂いピエロ』を語ろう』、「カイエ・デュ・シネマ」第171号、1965年10月号、所収; 『ゴダール全評論・全発言I 1950-1967』奥村昭夫訳、筑摩書房、1998/06