鎌田哲哉『LEFT ALONE 構想と批判』(ブックレット重力 NO.1、「重力」編集会議、2005/02)#0272


映画『LEFT ALONE』の書籍版(明石書店刊)は、映画の素材となったインタヴュー(インタヴュアー=絓秀実)を活字に起こし編集を加えたもの。ところが、この書籍版は映画に登場した松田政男西部邁柄谷行人津村喬鎌田哲哉花咲政之輔の諸氏のうち、鎌田氏のインタヴューが採録されない不完全なものだった。書籍版では、編集部に依頼されて鎌田氏が書いた文章に他の対談者への批判が含まれているため、編集部が掲載を不適当と判断。これを受けて鎌田氏が対談の掲載を辞退した、と説明されていた。


このたび緊急出版された本書、『LEFT ALONE——構想と批判』(ブックレット重力 No.01、「重力」編集会議)は、書籍版『LEFT ALONE』に掲載されなかった絓氏と鎌田氏の対談「小ブル急進主義は原理たりうるか」のほか、刊行の経緯を説明した「編者序文」、前記書籍版に寄稿する予定だった「途中退場者の感想——『LEFT ALONE』批判」、鎌田氏の求めに応じて書かれた井土紀州氏の応答「末吉」(絓氏、吉岡文平氏にも寄稿を依頼したが応答はなかったとの由)、穂積一平氏による「「途中退場者の感想」を読んで」、参考資料として鎌田氏の以下の文章が収録されている。


・「井土紀州の映画について」(初出=『sagi times 2-1/2」2000年03月、所収)
・「絓秀実は探している」(初出=「進行中の批評」第3回、『早稲田文学』2001年07月号、所収)
・「定説の破壊——絓秀実『「帝国」の文学』書評」(初出=『群像』2001年11月号、所収)


鎌田氏による映画『LEFT ALONE』批判の主眼は、同作品において「資本と国家への対抗運動」として構想・組織されたNAM(New Associationist Movement)への言及・検討がなされていない(回避されている)点にある。私も映画を観るまで、NAMは、この映画において議論されることのひとつだろうと思っていたのだけれど、ほとんど語られず仕舞だった。早稲田サークルスペース「闘争」の模様を(あのような編集で)いれるくらいなら、NAMの問題を扱ったほうがよほど興味深い作品になったのではないかと思う(映画については別途メモをつくるのでこの点についてはそのさいにもすこし述べてみたい)。本書に寄稿している井土監督は、あの映画でNAMを扱わなかったのは「本質的に興味を持てなかったからだ」と述べている。この点は私も一観客として残念に思う。NAMについては、次号『重力』で特集するようだ。


なお、本書は書店店頭に並ぶかどうか不明なのだけれど、映画『LEFT ALONE』をかけている渋谷ユーロスペースで販売している。価格は税込600円。


追記:web重力によると、本ブックレットは、3月6日まではユーロスペースでのみの販売とのこと(道理で書店で見つからないはず)。


⇒作品メモランダム > 2005/02/08 > 『LEFT ALONE 持続するニューレフトの「68年革命」』
 http://d.hatena.ne.jp/yakumoizuru/20050208#p8


⇒web重力
 http://www.juryoku.org/


⇒Q-project > 京都オフライン会議議事録・西部柄谷論争の公開
 http://www.q-project.org/q_kyoto.html