塚原史ボードリヤールという生きかた』(ライブラリー・レゾナント010、NTT出版、2005/04、amazon.co.jp)#0372


一時期、映画マトリックスシリーズが公開されていた頃、同作でウォシャウスキー兄弟が参照していたこともあって(劇中にも同書の英訳版がチラっと見えていた)、いくつかの書店に赴くとボードリヤールシミュラークルとシミュレーション』(竹原あき子訳、叢書・ウニベルシタス、1984/01[1981]、4588001361)が平積みされて、ネオ(キアヌ・リーヴス)のイラストをあしらったポップが添えられていたのを思い出す。


という与太噺はおいといて。本書はありそうでなかった日本語によるジャン・ボードリヤール(Jean Baudrillard, 1929- )氏に関するモノグラフィー。著者は、これまでに多くのボードリヤール作品の翻訳を手がけてきた塚原史(つかはら・ふみ, 1949- )氏。ダダ・シュルレアリスム方面の研究でも著作もある。


全体は全七章からなり、最初の一章でボードリヤールの経歴を紹介したのち、残りの六章で主著を時代背景との関係のなかで解説してゆく構成。一時期、この国でも一部で熱狂的に受容された「フランス現代思想」がなぜ時代の(輸入)思想として受け入れられたのか/受け入れられなかったのか、を検証するうえでも有益な一冊。

ボードリヤールという生きかた——序に代えて
・第一章 誰も知らなかったボードリヤール——生い立ちと思想形成
・第二章 モノから始まる冒険——五月革命と『物の体系』
・第三章 記号化する人間——『消費社会の神話と構造』
・第四章 象徴交換とシミュレーション——『象徴交換と死』『シミュラークルとシミュレーション』
・第五章 ポストモダンと人生の曲がり角——ポストモダンの時代と『アメリカ』……
・第六章 「歴史の終わり」から9・11へ——『透きとおった悪』『不可能な交換』『パワー・インフェルノ』……
・終章 もうひとりのボードリヤール——光と影、現代アートの経験、日本とのかかわり
ボードリヤール略年譜+ブックリスト
・あとがき



ボードリヤールついでに。やはり塚原氏による翻訳で、ボードリヤールと建築家ジャン・ヌーヴェル(Jean Nouvel)の対話『les objets singuliers——建築と哲学』塚原史訳、鹿島出版会、2005/03、amazon.co.jp)が刊行されている。こちらも目を通したらメモを作成しようと思う。


⇒L'Herne(仏語)
 http://www.editionsdelherne.com/
 Cahier de L'Herne の第85号はボードリヤール特集


⇒Baudrillard on the Web(英語)
 http://www.uta.edu/english/apt/collab/baudweb.html


⇒Jean Baudrillard: A Bibliography(英語)
 http://sun3.lib.uci.edu/~scctr/Wellek/baudrillard/
 ボードリヤールの書誌情報


⇒Jean Baudrillard(英語)
 http://englishscholar.com/baudrillard.htm
 ボードリヤール関連のリンク集


⇒Ateliers Jean Nouvel(仏語/英語)
 http://www.jeannouvel.com/
 建築家ジャン・ヌーヴェルのサイト