慈善病院から乳飲み子を抱いて出てきた女性(エドナ・パーヴィアンス)が、思い余って高級住宅の前に止めてある車にその子を置いてゆく。せめてお金持ちに拾われてほしいとの親心。ところがその車が泥棒に盗まれて子供は途中で捨てられる。捨て子を拾ったのはチャーリーで、あちこちに捨て置こうとするも失敗し、「この子をお願いします」との手紙を読むにいたって自ら育てることとあいなったのだが……。
今回は終盤に置かれた夢のシーケンスが強く印象に残る。キッドとはなればなれになったチャーリーは疲れて家の戸口で眠ってしまう。その眠りのあいまに見た夢は、人間がねたみやそねみとは無縁の無垢な世界だった。人びとは白い羽の生えた服を着て空を飛びさえする(ワイヤーアクション!? しかも仔犬まで飛びます)。そこへ悪魔がしのびこみ、人びとに嫉妬やよこしまさを吹き込んでまわる。このユートピアが現実の世界と同じものへと壊れてゆく夢によって、チャーリーが置かれた世知辛く貧しい世界のやりきれなさがよりいっそうひきたっている。
また、不覚にも冒頭でキッドの母が慈善病院をあとにしたつぎのカットで画面に映るものを、何度観てもそれがなんであるか見逃してしまう。十字架を斜めにせおってゴルゴダの丘へとのぼりゆくイエスを模した像のように見えるのだけれど。
という愚生の与太はおいといて。一人の捨て子を媒介にして人間関係の諸相が映し出される名作。