★エルンスト・ブロッホ『ルネサンスの哲学——ライプチヒ大学哲学史講義』(古川千家+原千史訳、白水社、2005/04、amazon.co.jp)
Ernst Bloch, Philosophie der Renaissance
本書は、まずは旧東独のライプチヒ大学で、その後テュービンゲン大学でも再講義された講義記録をもとに成立した。採り上げられた面々は、フィチーノ、ブルーノ、カンパネッラ、パラケルスス、ベーメ、ベーコン、ニュートン、ガリレイ、ホッブズら10余名。
ルネサンスは中世の闇を啓き近代を準備した、としばしば語られる。しかしブロッホによれば、ルネサンスとは単なる古代の復興でも近代の前段階でもない、それは「人間の脳裏に未だ浮かんだことのないものの新生」なのであり、独自の価値を有しているのだとされる。こうして著者は、月並みな哲学史の教科書とは異なり、今まで顧みられることのなかった目立たぬもの、副次的なものを新たな仕方で救済しようとする。哲学史の断片にすぎなかったものが異化されコラージュされて、新たな地平が眼前に展開されるのだ。ギリシャ神話の巨神プロメテウスとゲーテのファウストとがパラケルススにおいて結びつき、神の超越は解体され、人間たちによる第2の天地創造が始まる。
これは一例に過ぎない。読み進めるうちに読者は、無限の宇宙を見つめるブルーノ、魂の内奥を覗き込むベーメ、この極大・極小の2者のまなざしを持つ者こそブロッホであると知ろう。
従来のルネサンス観を一変させる、すぐれて批判的、エッセイ的試み。
(出版社からのコメントより)