山口昌男内田魯庵山脈——〈失われた日本人〉発掘』晶文社、2001/01、amazon.co.jp


内田魯庵といえば、山口昌男(やまぐち・まさお、1931- )氏の愉快きわまりない人脈網文化史誌内田魯庵山脈——〈失われた日本人〉発掘』晶文社、2001/01、amazon.co.jp)はこんな風に語りおこされていた。

内田魯庵。普通の小説家志望の男女の反応、「知らないね、そんなの」。


やや読書好きの青年子女、「文庫に『社会百面相』というのと『思い出す人々』というのが二冊入ってるんじゃない。あ、あー、それにこないだ伝記が出て結構売れてるってんじゃない」。


近代文学史などというおぞましきものを少し齧っているうるさい連中、「大学予備門などというところに入って、早い頃に英語を齧り、紅葉などの出たての作家を脅して気にされ、丸善の番頭になって親方日の丸の博識で世間を煙に捲き、嫌味の大家であったために社会諷刺家と誤解されてこわもてし、小林秀雄の出現により一挙に世間から忘れ去られた、かつての作家・文学批評家の出来損ない、と言っておこうか」。


文化人類学志望の若者、「何やそれ、おじさんみたいに忘れ去られた文化人類学者の類か」。

(同書、17ページ)


山口氏がこう書いてから4年(『群像』連載時から数えたら6、7年?)で、魯庵をめぐる状況がどう変化したのか不案内でよくわからないけれど、書店に並ぶ魯庵の作を見る限りでは微前進といったところだろうか。本書についてはまた改めてメモランダムを作る機会を設けたい。


ちなみに山口氏が上記引用文中で触れている伝記は、野村喬内田魯庵傳』(リブロポート、1994/05、amazon.co.jp)であると思われる。同書は、内田魯庵全集』(全17巻、編集・解説=野村喬、解題=片岡哲、ゆまに書房、1983-1987)の編者でもある野村喬氏によるもので、魯庵の生涯を知るにはうってつけの一冊。


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