2011年の抱負(野望)


これまた個人的な覚書のようなもので恐縮ですが(と申しますか、書いている本人以外のほぼ全人類にとってはどちらでもいいようなことですが!)、2011年の予定を益体もないコメントと共に少し書いておこうと思います。一部願望を含んでおります。大風呂敷を広げて自分をその気にするというやり方であります。他人のものでも、計画や企画を見るとワクワクする向きには、ちょっぴり楽しんでいただけるかもしれません。これを一名風呂敷芸と申します(ちなみに私は人様のものであっても、計画や予定を拝見するのが好きであります)。


■著述篇


「文体百般」(『考える人』新潮社)


『考える人』2011年冬号から新連載を始めた「文体百般」は、8回分の目次を設定してあります。そこで、順調にゆけばこれから2012年にかけて3ヵ月に一度書き進めてゆく予定です。書かれた文章の姿かたちを通じて、読み、書き、考えるという営為についてあれこれ考察してみようという趣旨であります。素材とするのは、従来の文体論のように文学に限定せず、理系の文章をはじめ、節操なくいろいろ取り上げるつもりです。乞うご期待。


『哲学の劇場』


相棒・吉川浩満id:clinamen)との共著第3弾です。構想数年で企画の存続自体が危ぶまれていますが(?)、これを形にして、「哲学の劇場」ユニットの活動を再開したいと念じております。「新たなる百学連環」(学術史論)をベースにして、「知」や「知識」について考える書物になりそうです。




■翻訳篇


★ケイティ・サレン+エリック・ジマーマンルールズ・オブ・プレイ――ゲームデザインの基礎(下)』ソフトバンククリエイティブ


前エントリーでご紹介した翻訳書の下巻の作業を終わらせる予定です。下巻には、ユニット3「遊び」、ユニット4「文化」という、ゲームとゲームデザインについて考える上で重要な考察を多々含んでいます。また、訳者あとがきでは、著者たちがその後刊行した著作などについても少し詳しくご紹介したいと思っています。


西周『百学連環』現代語訳+注釈(私家版)作成


2010年に制作しようと思いつつできなかった『百学連環』講義の現代語訳と詳細な注釈をつけた私家版を造りたいと思っています。同書は、弟子が書き取った講義録ですが、なんのかんのといっても、やはり現代日本語の基礎でもある明治期日本語の一角を築いた立役者の一人、西周の重要な仕事です。全集の第4巻に入っていますが、とても手に入れにくいのと、ひょっとすると明治期の文献を読み慣れぬ人にとっては、読みづらいテキストであるかもしれないと思い、なにかの機会でもあれば公にするつもりで、しかしさしあたっては私家版として作成しようと考えていたのでした。(確定していませんが、ひょっとしたら意外に早くなんらかの形で公開できるかもしれません)


アタナシウス・キルヒャー『光と影の大いなる術』翻訳(私家版)


キルヒャーという人物の仕事は、誠に興味が尽きないものなのですが、現代における「有用性」が感じづらいためか、ほとんど翻訳されていないようです。待てど暮らせど邦訳が出る気配がないので(いえ、ひょっとしたら水面下では動いているのかもしれませんが!)、自分が読みたいものは自分で訳してしまえの精神で、とりあえずは『光と影の大いなる術』を訳出してみようと思っています。翻訳することは、なによりの熟読でもあります。原書は稀覯書の類でありますので、おいそれと手に入れるわけにも参りませんが、幸いドイツ方面の図書館で電子化されたファイルを入手できます。これを1ページずつプリントアウトして、ノートに貼り、手書きで訳文を作成してゆくという昔ながらのやり方です。どうやらその電子化されたテキストをそのまま印刷した書冊版も出回っているようですが、そのようにして書籍化された別の本を以前手に入れたところ、やたらと小さく印刷されていてかえって難儀したことがありました。後日念のため手に入れてみようとは思っていますが、そんなわけで原書の姿に近いPDFに基づいて作業をいたします。




■ウェブ/ソフトウェア篇


「リテラエ・ウニヴェルサレス」(ウェブサイト)


目下はドメインのみを残して休業中の同ウェブサイトのために構想したアプリケーションの開発を進めたいと思います。当初はHTML+CSS+JavaScriptで制作しようと目論んでおりましたが、ブラウザの差を確認吸収しながらの煩瑣な作業にうんざりしたため(笑)、別の方法で構築することにしました。これは一種のウェブ用テキスト+図版閲覧ツールです。ある文書に対して俯瞰と詳細閲覧を自在に操作できるようなインターフェイスを実装します。昨年、西荻ブックマーク(木村カナさんに企画していただいたリテラエ・ウニヴェルサレスの公開編集会議)にて、PowerPointでお見せしたデモンストレーションを、ウェブで動くようにするというものです。なにより自分が欲しいツールなので、つくり進めたいです。


タイトル未定(ゲーム)


ここしばらくアイディアを温めてきたゲームの制作に着手しようと考えています。まず、小さなアクションゲームから。そして、かつて『That's QT』(ファッション・シミュレーション・ゲーム)で用いた手法の延長上で、シミュレーションゲームを一つと、かつてないテーマ設定のRPGを一つ。だなんて欲張っても詮無いので、これはこつこつ仕様書を書き、絵と音を制作し、プログラムで実装してゆこうと思います(そう、1人制作ゲームなのであります)。


多言語辞書(仮)(アプリケーション)


あと、できれば学術用語を中心として、各種言語の語源と用例を可視化するような自分でとことんカスタマイズできる辞書ソフトも欲しいと思っています。日本語の概念から、その翻訳元にあるヨーロッパ諸語や翻訳に際して流用された漢語、あるいはそうした諸語がそもそも根としているアラビア語ラテン語、さらにはギリシア語などの言葉のつながりが見えるようなハイパー単語帖みたいなものです。パソコンでの多言語環境も、ようやく整ってきたので、そろそろこしらえたいところ。できれば、用例については、いくつかのテキスト・アーカイヴからそのつど動的に抽出・生成するようなものにしたいとも。と、日ごろ読書や書き物をしながら、「こんなソフトがあればいいのに」と思っているものの一つなのでした。もちろん、既にどなたかがつくってくれているものが流用できれば、それが楽ちんです(ので同時に探そうとも思います)。




■講義篇


「映像文化論」一橋大学


目下担当させていただいている「映像文化論」は、2011年夏学期も開講させていただく予定です。基本的な設計は今回のものを踏襲しますが、題材やトピックスは大幅に入れ替えたいと思っています。武村知子さんにお声かけいただいて、一橋大学/大学院での講義もかれこれ四度目になります。あと半期、なんとか勤め上げられるよう精進いたします。


「ゲーム企画」「ゲームシナリオ」(東京ネットウエイブ)


東京ネットウエイブでの2011年度の活動は未定ですが、順当にゆけば例年通りゲーム企画やゲームシナリオを担当することになろうかと思います。




と、比較的確度の高いものを並べてみたつもりでありますが、読み返すとやっぱり大風呂敷です。もっとも年頭の抱負という名の野望なので、書いてみるだけは自由なのであります。


さて、こうした話は以上にして、以後は再び折々手にした書物や見聞きしたことについて、雑談して参りたいと思います。


(よもやそんなことはないと思いますが、万が一「おい、あの件が書いてないじゃないか!」といった抜けがありましたら、ご指摘くださいませ。)