イシス編集学校の軌跡

 ★松岡正剛&イシス編集学校『インタースコア――共読する方法の学校』(春秋社、2015/12)

2000年に創設されたイシス編集学校の15年の歩みを振り返り、現在とこれからを展望した本。

あまりにも多様な内容でおいそれとは要約できないけれど、「編集」というキーワードから派生して、これだけのことが考えられ、試みられ、生み出せるという事例集としても活用できそう。

とりわけ、松岡校長がイシス編集学校を創設する前夜と経緯について、つまりそうした学校をつくろうと思い立った動機と方針を語った巻頭の「インタースコアする編集力」は、データや情報の山と流れを前にして、これを扱いあぐねている人や組織には示唆するところ大だと思う。

ともかくモンダイを発見したら、対処のためのルールやしくみをこしらえるだけでなく、実際に遊んで試してみる。ここで「遊ぶ」というのは、文字通り楽しむということもあるけれど、それ以上にルールやしくみがどういう範囲で稼働できるかということを試してみるという意味でもある。そうした試行錯誤を通じて得られたものは、また次の材料と手がかりになる。この過程からさらに新たなモンダイにも遭遇する……。雑駁にいえば、どうもこれが松岡さんの流儀ではないかと思う。この本を読んでいると、イシス編集学校とは、そうした「遊び」の実験場でもあるという次第もよく分かる。それが15年も盛んに続いていることにも驚きだ。

昨年の夏、同校のイシスフェスタにお招きいただいて、「知のゲームを編集する夜学」という講座+実習を担当した。事前の打ち合わせで、同校林頭の吉村堅樹さんとお話をしながら企画の意図を伺って、「そうだ、ゲーム制作ってそれ自体がまさに編集の塊だものな」と再認識。

ゲーム制作は、多種多様な要素を編みあわあせる、まさに「編集」の技だ。なにしろ、各種のルールや道具、またコンピュータゲームならテキスト、グラフィック、サウンド、振動、そして人間といった要素をひとつのしくみとして構成するわけである。どうしたって編集がモンダイなのである。

そこになんらかの「知」をテーマとして放り込んだら、どんなゲームをつくれるか。というので、3時間ほどだっただろうか。ゲームをつくるにはあまりにも短い時間だけれど、ご参加くださったみなさんでチームをつくり、めいめいが脳裏に持っている知や経験を出し合って、ゲームを編集したのだった。

特にゲームの場合、ルールをいかに編みあわせるかというさじ加減次第で、遊び心地がまったく違うものに仕上がる。自分が組み合わせてつくったゲームを、自分でも試してみられるのがこれまたゲームの面白いところ。しかも、難しいことを考えずとも、遊べばたちどころに面白いかそうでないかも感じられてしまう。問題点に気づいたらチューニングしてまた試せばよい。まことゲームは編集トレーニングのよき題材だと思う。

イシスフェスタでは、必ずしもゲーム制作に馴染みのない人たちと共に、こうしたことを改めて実感したのだった。

それにしても、会場となったイシス編集学校が誇る「本楼」の、6万冊の書物による文字通りの壁に囲まれた空間は、そこに坐っているだけでもいろいろなアイディアがむくむくと湧いてくる場でもあった。

『インタースコア』をルールブックに見立てて、いろいろ遊んでみたいと思う。

インタースコア: 共読する方法の学校

インタースコア: 共読する方法の学校

 

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