ルスタム・カーツ『ソヴィエト・ファンタスチカの歴史』

★ルスタム・カーツ『ソヴィエト・ファンタスチカの歴史』(梅村博昭訳、世界浪漫派叢書、共和国、2017/06)
 Рустам Кац, История советской фантастики (2013) 

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革命後のソ連文学史は、ファンタスチカ(SF+幻想文学)による権力闘争の歴史だった――。粛清、雪どけ、そしてペレストロイカまで。本国ロシアでは社会学者や報道関係者が「事実」として引用した、教科書にぜったい載ってはならない反革命的メタメタフィクション、まさかの日本語版刊行!

(帯文より)

待ってました!

折しも文学の社会への影響や虚構と事実の違いについて考えている最中のわたくしには、天の恵みのような1冊です。うれしいなあ。

もちろん、そんなわたくしの個人的事情とはまったく関係なく、こんな面白い本を見逃す手はありません。だってほら、こんなふうに始まるんですよ。

ソヴィエト連邦の歴史には、こんにちに至るまで(文書館の秘密指定がとかれた時代にあってさえ)研究者らが明確な回答を出す状態になく、仮説を組み立てるだけ、といった傾向の問題がかずかずある。そのような問題のひとつが、V・I・レーニンは〈赤い月面人〉の創設に直接関与していたのかどうか、というものである。

目次は次のとおり。


第1章 〈赤い月面人〉の離陸と墜落(1921年〜1928年)

第2章 ソロフキのカタパルト(1929年〜1932年)

第3章 「では同志ウェルズに発言願います……」(1933年〜1936年)

第4章 内なる敵、外なる敵(1937年〜1945年)

第5章 世界的優位をめぐるたたかいとその破滅的帰結(1945年〜1953年)

第6章 霧の中より月出でて……(1954年〜1968年)

第7章 ポケットからナイフを引き抜いた(1968年)

第8章 審理が始まる(1969年〜1978年)

第9章 『ルナリウム』とその周辺(1979年〜1984年)

第10章 エピローグ(1985年〜1993年)

参考文献一覧

月への道半ばで、あるいはカーツ博士の馬のボリバル
 ――編者あとがき(ロマン・アルビトマン)

訳者解説(梅村博昭)

人名索引

 「ロシア革命100周年を記念して、初版のみカバーに「鎌とハンマー」の抜き型加工。」とのこと。保存用にもう1冊入手しようかな……。

 

昔読んだ亀山郁夫さんの『磔のロシア――スターリンと芸術家たち』のことも思い出しました。芸術家たちが、「二枚舌」を駆使して、どのように政治批判を行ったかを書いた本でした(たしか)。