2021年前半の講義

2021年の前半が終わった。

今年は、4月から東京工業大学に勤めはじめて、第1クオーターは「立志プロジェクト」と「哲学B」という科目を担当した。所属は、リベラルアーツ研究教育院といって、宗教人類学者の上田紀行先生が院長を務めておられる。

また、昨年講師として就任して今年は非常勤講師を務める立命館大学大学院 先端総合学術研究科では、去年に続いて小川さやか先生、西成彦先生とともにゼミに参加している。

東工大での講義は、すべてZoomで行った。

特に聴講者が150名弱の「哲学B」では、どうしたら学生たちとやりとりしながら進められるだろうかと考えて、チャット欄を積極的に使うことにした。シラバスでも、講義中の意見や質問を歓迎・評価すると記しておいた。

蓋を開けてみると、意見や質問は思いついたときにいつでもどうぞと毎回促したこともあってか、100分のあいだに20から30、多いときには50ほどのコメントが寄せられた。

そうした質問や意見には、できるだけ応答して、時間が許す限り講義内で応え、時間が足りない場合には、次回の冒頭で話すようにした。

このやりとりのおかげで、検討が深まったり、一方的に話した場合には、通り過ぎたかもしれない論点について論じることもできた。

Zoomでの講義は、隔靴掻痒の点も少なくないが、このチャットを用いたやりとりについては、明らかにメリットだと思われる。というのも、この規模の講義を教室で行った場合、質問を促してもあまり出ないことが多い(とは、私の経験の範囲でのこと)。30人程度の教室であれば、講義を重ねるうちに、学生たちが「この教師は、何を質問しても考え、応えようとする」ということが伝わると、やがて放っておいても質問が出るようになる。だが、人数が多い場になると、そうもいかなくなる。

Zoomでも、発言でもよいし、チャットでもよいとお伝えしておいた。最も多かったのは、プライヴェートなチャットで、私だけに宛ててメッセージを送ってくるものだった。それを私が読み上げて応える。ラジオのハガキコーナーのようでもある。質問に応答してもらった学生は、さらに質問を重ねたり、感謝の意を伝えたりする。

これについては以前、日経新聞の「プロムナード」という連載エッセイを担当した際、「教室のノーガード戦法」という文章を書いたことがあった(後に『投壜通信』本の雑誌社に収録)。

東工大にかんする仕事としては、2021年5月22日(土)に、東工大ホームカミングデーのイヴェントの一環として行われたミニシンポジウム「リベラルアーツへのいざない」で、毛塚和宏先生とミニレクチャーを担当した。