2024年3月の平凡社ライブラリー

2024年3月の平凡社ライブラリーは次の2点です。

★962:クラウス・リーゼンフーバー『中世哲学の射程 ラテン教父からフィチーノまで』(村井則夫編訳、平凡社、2024/03/05)

『中世哲学の源流』(創文社、1995)、『中世における理性と霊性』(知泉書館、2008)に収録された論考を中心として、単行本未収録の論考1篇を加えた本。

序にかえて

第1部 中世思想の構造
 第1章 ラテン教父の思考様式と系譜
 第2章 ラテン中世における教父神学の遺産
 第3章 被造物としての自然ーー教父時代および中世における創造論
 第4章 中世における自己認識の展開ーー近代思想いそうの歴史的源泉をめぐって

第2部 中世の思想家たち
 第5章 ボエティウスの伝統ーープラトン主義とアリストテレス論理学の中世への継承
 第6章 信仰と理性ーーカンタベリーのアンセルムスにおける神認識の構造
 第7章 サン=ヴィクトルのフーゴーにおける学問体系
 第8章 人格の理性的自己形成ーートマス・アクィナスの倫理学の存在論的・人間論的構造
 第9章 知性論と神秘思想ーー十三・十四世紀スコラ学の問題設定
 第10章 神認識における否定と直視ーークザーヌスにおける神の探求をめぐって
 第11章 否定神学・類比・弁証法ーーディオニュシオス、トマス、クザーヌスにおける言語の限界と超越の言表可能性
 第12章 マルシリオ・フィチーノのプラトン主義と教父思想ーーキリスト教哲学の一展望

村井則夫「解題 理性の歴史ーー超越論哲学と否定神学」
編訳者あとがき
索引

今月、講談社学術文庫から刊行された、クラウス・リーゼンフーバー『存在と思惟 中世哲学論集』(山本芳久編)も『中世哲学の源流』から論考を選んで編んだ本でした。見たところ、本書と重なりはないようです。

また、平凡社ライブラリーに収録されたリーゼンフーバーの著作と関連書には、次のようなものがあります。

り2-1:『西洋古代・中世哲学史』(平凡社ライブラリー357、2008)
り2-2:『中世思想史』(村井則夫訳、平凡社ライブラリー485、2003)
り2-3:『中世哲学の射程 ラテン教父からフィチーノまで』(村井則夫編訳、平凡社ライブラリー962、2024)

『中世思想原典集成 精選』(全7巻)は、『中世思想原典集成』(全20巻+別巻、1992-2002)を元に、その一部を選んで再編集したもの。上記『中世思想史』は、その別巻に収められたものを改訂した本でした。

 

★963:越智敏之『[増補] 魚で始まる世界史 ニシンとタラとヨーロッパ』(平凡社、2024/03/05)

『魚で始まる世界史ーーニシンとタラとヨーロッパ』(平凡社新書、2014)を改訂増補した本。

偶然ではありますが、この本の冒頭は、上記した『中世思想原典集成』からの引用で始まっています。