コードとコードの違いについて

先日、コンピュータのプログラム言語で命令を書き連ねるという意味の「コード」という語は、コンピュータでかつては「コード」のつなぎ替えでプログラムしていたことに由来する(大意)という意味の投稿を見かけました。

ひょっとしたら冗談かもしれませんが、日本語に音写された「コード」という語だけを見ていると陥る罠の典型でもあります。

なにかのちょうどよいサンプルでもあるなあと思ったので、メモを残しておこうと思います。こうしておけば、万が一上記の珍説を信じている人に遭遇した場合にさっと提示できますしね。というのはそれこそ冗談ですけれど。

さて、プログラムを書くという意味の「コード(Code)」と、電線を指す「コード(Cord)」はそもそも綴りが違うので、そうはならないだろうと思うわけですが、念のためと思ってOED(オックスフォード英語辞典)を引いてみました。

まず、code(名詞形)の語源は以下の通り。

フランス語のcodeからの借用とあり、これは法などを集めたものという意味と見えます。さらには古典ラテン語のcodicやcodexに由来するとも。これらは「木の幹」「(木などから作った)本」「ノート」という意味です。

同辞典の「意味と用例」の項目で筆頭に挙がるのは、ご覧のように「法やルールや書かれたもののコレクション」という意味で、14世紀末の最古の用例は法典という意味で使われています。

同じく「意味と用例」の項目の、I.2.a.には「なんらかの主題についてのルールや決め事の体系(システム)もしくはコレクション」(A system or collection of rules or regulations on any subject.)とあり、ここからII.4.a.に載っているような軍事方面で用いられる記号の体系という意味や、II.7の「情報を処理・転送するためのコンピュータやその他のデジタル機械で使えるように情報もしくは命令を表すための記号の体系」(Any system of symbols and rules for expressing information or instructions in a form usable by a computer or other digital machine for processing or transmitting information.)という意味に転じたであろうことも推察されます。

ちなみにコンピュータ用語としてのcodeの初出用例は、1946年のNature誌でした。せっかくなので、このセクション全体を画像で引用しておきましょう。

 

では、電線という意味のcordはどうでしょうか。

同じくOEDで名詞形について調べてみます。まずは「語源」から

これもフランス語からの借用とあります。ただし、codeの場合とは違って、フランス語のcordeからの借用とあります。この語は、「楽器の弦」「紐」「ロープ」という意味で、さらに遡るとラテン語のchorda(コルダ)、さらには古代ギリシア語のχορδή(コルデー)が語源であるとも記されていますね。意味は「動物の腸線」やそれを使った「楽器の弦」とのこと。

あとは省略しますが、「意味と用例」でも「紐(string)」「ロープ」「縄文」「腸」(紐状の臓器)「楽器の弦」などが並びます。