岩波文庫、2021年5月の新刊に、J. S. ミル『功利主義』(関口正司訳、岩波文庫白116-11)が入った。
このエントリーでは、同書を中心として、書誌や関連文献についてまとめておこう(適宜追記してゆく予定)。
訳者によれば、もとは1861年に『フレイザーズ・マガジン』に連載され、1863年に本として刊行されたという。原題は、Utilitarianismという。今回の岩波文庫版は、その第4版(1871)を訳したもの。
また、附録として、ミルの別の本、『論理学体系』の一部を併録している。
■目次
目次は以下の通り。
第1章 概論
第2章 功利主義とは何か
第3章 道徳的行為を導く動機づけについて
第4章 効用の原理の証明について
第5章 正義と効用の関係について
附録
一 自由と必然について(『論理学体系』第6巻第2章)
二 道徳と思慮を含む実践あるいは技術の論理学について(『論理学体系』第6巻第12章
訳注
解説
索引
■既訳
『功利主義』は、これまで何度か翻訳されているものの、文庫化は初めて。
ちなみにこの本を最初に日本語に訳したのは、西周(1829-1897)で、その際は『利學』(上下巻、1877)と題されている。下記リンクは、国立国会図書館デジタルコレクションで公開されているデジタル版。
■初出
初出の『フレイザーズ・マガジン』は、Fraser's Magazine for Town and Countryといって、1830年から1882年にかけてロンドンで発行された雑誌(オンラインで読める同誌についてはこちらのサイトにまとめられている)。『功利主義』は、その1861年の第64巻に掲載されている。
■岩波文庫のJ. S. ミル
岩波文庫に入っているJ. S. ミルの本はこれで11冊目。
岩波文庫では、それぞれの著者に固有の番号が与えられる。ミルの場合なら、白の116番。ついでながら、これまで岩波文庫で刊行されたミルの本を並べておこう。
116-1:『経済学原理(一)』(末永茂喜訳、1959.12.20)
116-2:『経済学原理(二)』(末永茂喜訳、1960.03.25)
116-3:『経済学原理(三)』(末永茂喜訳、1960.07.05)
116-4:『経済学原理(四)』(末永茂喜訳、1961.02.05)
116-5:『経済学原理(五)』(末永茂喜訳、1963.12.16)
116-6:『自由論』(関口正司訳、2020.03.13/塩尻公明+木村健康訳、1971.10.16)
116-7:『女性の解放』(大内兵衛+大内節子訳、1957.03.25)
116-8:『ミル自伝』(朱牟田夏雄訳、1960.02.05/西本正美訳、1928.12.15)
116-9:『代議制統治論』(水田洋訳、1997.05.16)
116-10:『大学教育について』(竹内一誠訳、2011.07.15)
116-11:『功利主義』(関口正司訳、2021.05.14)
(私は残念ながら、上記のうち『経済学原理(四)』を持っていない)
■J. S. ミルの翻訳
目下、岩波文庫以外の文庫で読めるミル作品には次のものがある。
★『自由論』(山岡洋一訳、光文社古典新訳文庫、2006.12.07)
同書は後に、日経BPクラシックス(2011.09.01)として改訳版が出ている。
★『自由論』(斉藤悦則訳、光文社古典新訳文庫、2021.06.12)
*この項目は追記してゆく予定。
■J. S. ミル全集
J. S. ミルの全集には、例えば次のものがある。
★Edited by J. M. Robson, Collected Works of John Stuart Mill, 33 volumes, Toronto: University of Toronto Press, London: Routledge and Kegan Paul, 1963-1991.