★五十嵐太郎『過防備都市』(中公新書ラクレ140、中央公論新社、2004/07、amazon.co.jp)
二〇〇一年の同時多発テロは、セキュリティ過剰に向かう、世界的な流れを決定的なものとした。たえず漠然とした不安が煽られる。新しい時代の始まりである。イラク戦争は、先制攻撃によって防衛するというセキュリティの戦争だった。戦争とテロ、有事と平時の境界が曖昧になっていく。二〇〇三年、筆者は『戦争と建築』を刊行し、主に有事における両者の関係を考察したが、ここでは平時における路地上の軍事化を検証する。そこでファシズムに対する抵抗運動を行う、戦時下のローマを描いたロベルト・ロッセリーニの『無防備都市』(一九四五年)をもじって、本書では、セキュリティを過剰に求める監視社会を「過防備都市」と命名しよう
★志摩園子『物語 バルト三国の歴史――エストニア・ラトヴィア・リトアニア』(中公新書1758、中央公論新社、2004/07、amazon.co.jp)
「中世から21世紀まで大国に翻弄された800年」(帯より)
★亀山郁夫『ドストエフスキー――父殺しの文学(上下)』(NHK BOOKS 1007 & 1008、日本放送出版協会、2004/07、amazon.co.jp)
本書は、ドストエフスキー文学における最大の謎とされる「父殺し」の主題を扱っている。しかし「父殺し」における「父」とは、作家の父ミハイル・ドストエフスキーを意味するにとどまらない。それどころか、絶大な皇帝権力のもとに生きるロシア知識人、いやロシア社会全体を包みこむ主題だったと述べても少しも過言ではない。
同叢書から出ていた埴谷雄高の『ドストエフスキー――その生涯と作品』(NHK BOOKS 31)も装を改めたようです。
★木下長宏『中井正一――新しい「美学」の試み』(平凡社ライブラリー438、平凡社、2002/07、amazon.co.jp)
★ジョアン・コプチェク『わたしの欲望を読みなさい――ラカン理論によるフーコー批判』(梶理和子+下河美知子+鈴木英明+村山敏勝訳、青土社、1998/06、amazon.co.jp)
Joan Copjec, Read my desire: Lacan against the historicists (MIT Press, 1994)