解説書はだめよ



小林秀雄岡潔「人間の建設」(1964)

 ベルグソンの本はお書きになりましたか。


小林 書きましたが、失敗しました。力尽きて、やめてしまった。無学を乗りきることが出来なかったからです。大体の見当はついたのですが、見当がついただけでは物は書けません。そのときに、またいろいろ読んだのです。そのときに気がついたのですが、解説というものはだめですね。私は発明者本人たちの書いた文章ばかり読むことにしました。


 どうして解説書というものが書けるか不思議なくらいです。


小林 自分でやった人がやさしく書こうとしたのと、人のことをやさしく書こうとするのとでは、こんなにも違うものかということが私にはわかったのです。


 それはいいことがおわかりになりましたね。それはだめにきまっていると思います

(同書、p.184)