岡 ベルグソンの本はお書きになりましたか。
小林 書きましたが、失敗しました。力尽きて、やめてしまった。無学を乗りきることが出来なかったからです。大体の見当はついたのですが、見当がついただけでは物は書けません。そのときに、またいろいろ読んだのです。そのときに気がついたのですが、解説というものはだめですね。私は発明者本人たちの書いた文章ばかり読むことにしました。
岡 どうして解説書というものが書けるか不思議なくらいです。
小林 自分でやった人がやさしく書こうとしたのと、人のことをやさしく書こうとするのとでは、こんなにも違うものかということが私にはわかったのです。
岡 それはいいことがおわかりになりましたね。それはだめにきまっていると思います
(同書、p.184)