★『新潮』第101巻第5号、2005年5月号(新潮社)#0348
「映画との対話」と題する特集は、三つの企画で構成。
1:浅田彰+蓮實重彦「対談 ゴダールとストローブ=ユイレの新しさ」は、過日日本でも新作『ノートル・ミュジック(われらの音楽)』(2004)が上映されたジャン=リュック・ゴダールと、やはり新作『ルーヴル美術館への訪問』(2004)が上映されたジャン=マリ・ストローブとダニエル・ユイレをめぐって行われた対談。あいかわらず刺激量の多い対話であると同時に耳が痛い。ものを知らず、知らないでも黙っているならまだしもそのうえに居直ってものを書く。これを厚顔無恥と言わずしてなんと称すか(ごもっとも)。
ゴダールの作品は秋に公開予定(配給プレノンアッシュ)。ストローブとユイレの新作は、紀伊国屋書店からDVDとして発売される予定とのこと。
⇒Prénom H
http://www.prenomh.com/index.html
2:四方田犬彦「エミール・クストリッツァと軌跡」は、今年6月に日本公開を控えた『ライフ・イズ・ミラクル』(Zivot je cudo)(2004)の監督・エミール・クストリッツァ(Emir Kusturica, 1954- )をめぐる論考。これもまた四方田氏が書いてくれなければ誰が書けるのかと思われる複雑な歴史背景と作品を相互に照射させながらのありがたい読解。より長いクストリッツァ論を書いてくださらないだろうか。
昨年末に刊行された、『映画『アンダーグランド』を観ましたか?——ユーゴスラヴィアの崩壊を考える』(彩流社、2004/11、amazon.co.jp)は、東欧史の研究者・越村勲氏と山崎信一氏による共著で、クストリッツァの『アンダーグラウンド』を使ってユーゴスラヴィア史を解説したブックレット。
3 :新作『エレニの旅』(ΤΡΙΛΟΓΙΑ: ΤΟ ΛΙΒΑΔΙ ΠΟΥ ΔΑΚΡΥΖΕΙ)(2004)が2005年4月29日から日本での公開が予定されているテオ・アンゲロプロス(Θεοδωροσ Αγγελοπουλοσ, 1935- )氏*1と柳美里氏の対談。
アンゲロプロスといえば、私は未読だけれど、若菜薫『アンゲロプロスの瞳——歴史の叫び、映像の囁き』(鳥影社、2005/03、、amazon.co.jp)が刊行されたところ。
⇒THEO ANGELOPOULOS official website(英語/ギリシア語)
http://www.theoangelopoulos.com/
⇒『エレニの旅』
http://www.bowjapan.com/eleni/
——と書いていると、映画雑誌について書いているようだけれど、これは文芸雑誌なのだった。
上記のほか、椹木野衣による新連載(隔月連載)「文化の震度1 K.K.の密室」がはじまった。
小説は、村上春樹の連載短篇「東京奇譚集3 どうであれそれが見つかりそうな場所で」、古井由吉「雪明かり」、舞城王太郎の新作「ディスコ探偵水曜日 第一部」も掲載されている。
⇒新潮社 > 『新潮』
http://www.shinchosha.co.jp/shincho/index.html
*1:ただし、フォントの都合上、記号は省略し、文末のシグマも文末形で記していない。