★『大航海』No.55(新書館、2005)
特集は「現代日本思想地図——現在に向けて発言する25人を検証する!」。
25人の内訳は、東浩紀*、小熊英二、斉藤環*、福田和也*、齋藤孝、宮台真司、大澤真幸*、大塚英志、浅田彰*、金子勝、村上龍、村上春樹、中沢新一*、姜尚中、佐伯啓思、鷲田清一*、上野千鶴子、加藤典洋、岩井克人、藤森照信、柄谷行人*、宮崎駿、西部邁、荒川修作、西尾幹二。
(ちなみに「*」を付した人物については、拙サイト「哲学の劇場」に簡易書誌情報を作成してあるのでご覧いただけたらと思う〔URLは後述〕)。
本誌について、双風舎を主宰する id:leleleさんが、こう述べている。
そもそも、この特集のコンセプトが面白いではありませんか。それだけでも「買い」だと思います。自分なりに、「誰に誰を検証してもらったら、もっと面白いのになあ……」などと空想するのも一興です。
(はてなダイアリ「双風亭日乗」より)
小生も書店で本誌を目にして「お」と感じた口で、leleleさんに同感である。
こうしたカタログ的な特集はいろいろな意味で興味深い。テーマの設定にたいして、どんな選定がなされるのか(なされないのか)。そしてなされた選定をながめて、「あの人は?」「この人は?」とそこにない名前をあれこれ思い浮かべてみる愉悦もある。そこに掲載されていないけれど関連しているものへの記憶や連想を喚起することもカタログ的企画の立派な効用のひとつだと思う。
ときに。本号の特集は「現代日本思想地図」と銘打っている。現代(時間)・日本(場所)・思想(主題)の地図といえば、趣旨を明示しているようでもあるけれど、「思想」のところがミソというかヌエというかおもしろいところだと思う。『思想』といえば岩波書店が刊行している雑誌のタイトルでもあるわけだが、『思想』の執筆者(旧帝国大学教員筋?)と、『大航海』の現代日本思想地図に名のあがる作家とは赴きがだいぶ異なっている。また『現代思想』(青土社)といえば、『大航海』の編集長・三浦雅士(みうら・まさし)氏がかつて編集長を務めていた雑誌であり、これまた執筆者の面子に独得の傾向がある(ように外からは見える)。
そんなこと言ったって、雑誌はそれぞれ成り立ちも編集部と執筆者のコネクションのあり方も違うのだから当然ではないか、と言ったらそれまでなのだけれど、「思想」という一見、学問領域のなかに囲い込まれていてもおかしくなさそうな事柄にかんする雑誌が、アカデミーの外にあってその外にいる読者に(も)向けられていることと考え合わせるとちょっとおもしろいことが見えてくるように思う。
青木保(あおき・たもつ, 1938- )氏の新連載「移動文学論」もはじまった。
⇒新書館 > 『大航海』
http://www.shinshokan.co.jp/daikoukai/dai-index.html
⇒双風日乗 > 2005/06/06 > 季刊『大航海』が面白い!
http://d.hatena.ne.jp/lelele/20050606/p1
⇒哲学の劇場 > 作家の肖像
http://www.logico-philosophicus.net/profile/index_profile.htm