下巻刊行いたしました



大変長らくお待たせしたケイティ・サレン+エリック・ジマーマンルールズ・オブ・プレイ――ゲームデザインの基礎(下)』ソフトバンク クリエイティブ、2013/05)を、先月刊行しました。


上巻を刊行したのが2011年2月でしたから、それから数えても2年以上が経ってしまい、申し訳なく思います。


この本は、全体が四つのユニットに分かれています。

ユニット1 核となる概念
ユニット2 ルール
ユニット3 遊び
ユニット4 文化


このうち最初の二つのユニットが上巻に、後半二つのユニットが下巻に収められています。ちなみに韓国語訳は、全体を四分冊にして1ユニット1冊にしているそうです。ただでさえ分厚い本なので、分けたほうが取り回しはよさそうですね。


さて、上巻ではゲームを分析したりデザインする際に鍵を握るいろいろな概念や考え方を整理したうえで、ゲームの中心となるルールが検討されていました。


私は、目下東京ネットウエイブという専門学校でゲームデザイン他を教えているのですが、学生のみなさんにゲームを考えようというと、まずはみなさんルールやシステムを考えます。そして、そこで満足するのか、止まってしまいます。もちろん、ルールがなければゲームが成立しないので、それでよいのです。でも、そこで止まってしまうといけません。


さらに重要なことは、そのルールやシステムを使って、実際にプレイヤーがどんな遊び(play)を味わえるのかということです。本書下巻のユニット3「遊び」では、ゲームが遊ばれる場面に迫っています。いったいぜんたい、ゲームで遊ぶ人は、どうして楽しいと感じたり、失敗しても、「ようし、次こそは!」と再度挑戦したくなるのでしょうか。そこを考え抜かないと、いくら素晴らしいルールを思いついたとしても圧倒的に足りないのです。


そればかりではなく、続くユニット4では、そうしたゲームや遊びが、それを取り囲む環境である社会や文化とのあいだで、どんなやりとり(相互作用)を生じさせているかということにまで考察が及びます。


一昔前に較べると、コンピュータゲームは、一部のゲーム愛好者だけでなく、もっと日常的に、気軽に遊ばれるものにもなっています。それだけに、ゲームで遊ぶということが、人びとの生活や文化に、どのような影響を与えるかということは、今後ますます重要な事柄になってゆくと思われます。


また、下巻には、上巻に続いて、二つの「招待ゲーム」が収録されています。ゲストデザイナーが作ったゲーム(紙と鉛筆だけで遊べます)だけでなく、それをデザインする過程でどのようなことを考えたかという、普段はあまり覗くことができないことも開陳してくれているのがうれしいところ。


巻末の参考文献や参考ゲームリストまで含めて、700ページを超えるヴォリュームとなりました。上下巻で1,300ページ超という大変な書物に成長しましたが、ここから先は、ぜひあなたの手で、この本をさらに育てていただければと思います。「え? 本を育てる?」という向きは、下巻の「訳者あとがき」を立ち読みしていただければ幸いです。


さて、これにてようやく長年の宿題を一つ片付けましたので、この翻訳を終わらせるまではと封印していたゲームを解禁したいと思います。なにからやろうかしら。


⇒ウラゲツブログ > 2013年05月06日
 http://urag.exblog.jp/17745063/
 小林浩さんに「ウラゲツブログ」でご紹介いただきました。


ソフトバンク クリエイティブ > 『ルールズ・オブ・プレイ(下)』
 http://www.sbcr.jp/products/4797334061.html