『週刊現代』7月8日号(講談社)に書評を寄稿しました。
評したのは、ルトガー・ブレグマン『隷属なき道――AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働』(野中香方子訳、文藝春秋)です。
貧困の問題を解決するには、ベーシックインカムと労働時間の短縮と国境の開放が有効だとする政策提案を見ると、反射的に「お気楽なことを言ってからに」と感じる向きもあろうかと思います。
著者が貧困解決のためのもう一つの課題だと指摘しているのは、まさにこのことでした。つまり、そんなふうに人間が抱きがちな固定観念や思い込み、そこから生じる決めつけ、当世風にいえば各種の認知バイアスの存在を踏まえた上で、なおもどう解決に向けて物事を変えてゆけるか、というわけです。
そういう意味では、同書は歴史の検討と人間心理(認知心理学)を踏まえた政治・政策のあり方を模索するための本と位置づけられるでしょう。人間を理性的な存在と仮定するのではなく、その心理に備わっているらしい各種の性質を前提として、経済や政治の政策をくみたてたり実行するにはどうしたらよいか。このところ各領域で見られるようになってきた認知科学・認知心理学の知見を踏まえた学術の試みであります。
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隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働
- 作者: ルトガーブレグマン,野中香方子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2017/05/25
- メディア: 単行本
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