★C.ダグラス・ラミス『経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか』(平凡社ライブラリ513、平凡社、2004/09、amazon.co.jp)
2000年に平凡社より刊行された語りおろし作品のライブラリ化。著者によるライブラリ版あとがきと、辻信一の解説つき。
本書では、経済の問題だけではなく、戦争と平和、安全保障、日本国憲法、環境危機、民主主義などが、多岐にわたって論じられている。だとするとなぜ、『経済成長がなければ……』なのか? それは、経済発展を目指すことこそが現実的であり、それ以外は理想論にすぎないという考え方にこそ、本書で扱った多くの問題の核心があるからである。
C.ダグラス・スミスの著作にはほかに以下のものがある。
・『ラディカルな日本国憲法』(晶文社)
・『憲法と戦争』(晶文社)
・『ラディカル・デモクラシー』(岩波書店)
・『日本は、本当に平和憲法を捨てるのですうか?』(平凡社)
★松岡心平『宴の身体――バサラから世阿弥へ』(岩波現代文庫学術129、岩波書店、2004/09、amazon.co.jp)
・身体の声の森へ
・第1章 演劇としての宗教――時宗〈四条道場〉論
・第2章 バサラの時代――パフォーマンスの考古学
・第3章 宴の身体――連歌・一揆・会所
・第4章 夢幻能の発生――勧進能のトポス
・第5章 稚児と天皇制
・第6章 稚児としての世阿弥
・第7章 花・幽玄・しほれ――稚児の美学
・第8章 能の空間と修辞――世阿弥の”遠見”をめぐって
・第9章 世阿弥の身体
・第10章 カマエの成立
・第11章 紀貫之と世阿弥
親本は1991年に岩波書店から刊行。文庫版の解説は今福龍太。おもろい。
★加藤周一+木下順二+丸山眞男+武田清子『日本文化のかくれた形(かた)』(岩波現代文庫学術128、岩波書店、2004/09、amazon.co.jp)
1981年に行われた連続講演を採録し、1984年に岩波書店から刊行された一冊。
・武田清子「まえがき――日本文化のかくれた形」
・加藤周一「日本社会・文化の基本的特徴」
・木下順二「複式夢幻能をめぐって」
・丸山眞男「原型・古層・執拗低音――日本思想史方法論についての私の歩み」
・武田清子「フロイト・ユング・思想史――補論」
★ウィンパー『アンデス登攀記(上)』(大貫良夫訳、岩波文庫赤239-3、岩波書店、2004/09、amazon.co.jp)
Whymper, Travels amongst the great Andes (1892)
岩波文庫収録のウィンパー作品には『アルプス登攀記』(浦松佐美太郎訳、岩波文庫赤239-1, 2、1966)もある。
『アルプス登攀記』のウィンパー(1840-1911)は、1879年から80年にかけて南米に遠征、エクアドル・アンデスの高峰に挑んだ。画家らしい観察眼で、登攀の実際、アンデスの風景や民俗を生き生きと描いた、秀逸な紀行。自筆挿画多数。
今月の岩波文庫新刊、他はすべて改版版でした。
★『江戸川乱歩全集 第19巻 十字路』(光文社文庫、光文社、2004/09、amazon.co.jp)
収録作品=「防空壕」「大江戸怪物団」「十字路」「魔法博士」「黄金豹」「天空の魔人」
以下は古本屋を散策してひろいあげた本たち。
★ジェルメーヌ・タイユフェール+フレデリック・ロベール『ちょっと辛口――タイユフェール回想録』(小林緑訳、白水社、2002/01、amazon.co.jp)
Germaine Tailleferre, Mémoires à l'emporte-pièce (1986)
エリック・サティに「見出された」フランス六人組の一人、ジュルメーヌ・タイユフェールの回想録。サティはもちろんのこと、ラヴェル、チャップリン、ヴァレリー、ディアギレフ、ピカソ、ルービンシュタインといったひとびととの交流も描かれていて興味が尽きない(のはこうした回想録の愉しみなわけだけれど)。
★V.グルシコフ+V.モーイェフ『コンピュータと社会主義』(田中雄三訳、岩波新書青版987、岩波書店、1976/12)
1974年にソ連共産党中央委員会から刊行された一冊。原題は「管理の手綱」とでも訳される言葉なのだとか。数学者ヴィクトル・ミハイロヴィチ・グルシコフと経済問題を専門とするジャーナリスト、ヴィターリー・アレクサンドロヴィチ・モーイェフとの対談形式で、経済管理におけるコンピュータの役割を考察している。1970年代にソ連でコンピュータがどういうものとみられていたのか、読んだらレポートしてみたい。
★Eberhard Freitag, Arnold Schönberg (rororo, Rowohlt, 1973)
ロロロ叢書の評伝シリーズ、シェーンベルク篇。
★太田典禮『恋愛社会主義』(文林堂、1948/12)
ある大学の学生諸君に座談会をたのまれ、題は自由につけてよいといつたら「社会主義と恋愛」でした。その時の問答をもとにして、その後、友人やいろいろな人と恋愛を語り、論じたのをまとめたのがこの本です。
恋愛論を書くほどの余力も力もないが、問題を提起するだけでも意義があると思つて出すことにしました。はつきりした結論がなくて物足りないだろうと思うが、むつかしい問題だから、今のところこのぐらいが私のせい一ぱいのところです。私の考えも今後もつと発展するだろうし、またそうあらねばならないので、大いに自信ができたら書き改めねばならないものと考えています。
読者諸君の思いのままの御批判をお願いします。
一九四七年十月
目次はつぎのとおり。
・恋愛論の必要
・恋愛の定義
・恋愛の歴史
・今日の恋愛
・恋愛の条件
・結婚と恋愛
・失恋論
・これからの恋愛
開口一番、「恋愛の社会主義なんて題をつけて、どういうことをいうつもりですか」だなンて対話っぽくはじまるちょっと愉快な本。この前読んだ、吉本隆明『超恋愛論』(大和書房、2004/09、amazon.co.jp)というのもヘンな本だったなァ。なにが「超」なのかわかりませんでした。
そういえば思い出しただけですが、ヴェルナー・ゾンバルトに『恋愛と贅沢と資本主義』(金森誠也訳、講談社学術文庫、2000/08、amazon.co.jp)という本がありましたね。
★八束はじめ『空間思考』(弘文堂、1986/10、amazon.co.jp)
柄谷行人、ドゥルーズ=ガタリ、プリゴジーヌ(プリゴジン)、マンデルブロート(マンデルブロー)、ヴァレーラ、ハーケン、清水博、ルーマン、ミース・ファン・デル・ローエ、フンボルト、チョムスキー、サピア、ウォーフ、デリダ、ソシュール、パース、ヴィトゲンシュタイン、ラカン、ゲーデル、カール・クラウス、市川浩、クリストファー・アレクサンダー……
リゾーム、オリジナルとコピー、散逸構造、シナージェティクス、フラクタル、ホログラフィ・パラダイム、モルフェ、イソモルフィズム、エクリチュール、DNAのグラマトロジー、オートポイエーシス、メビウスの輪、自動筆記、フォルマリズム、プロブレマティック……
わずか7ページのあいだになんとたくさんの固有名詞や概念が乱舞していることか。時代の雰囲気を垣間見た気になる一冊です。
★鶴見俊輔+粉川哲夫『メディアへのダイアローグ――思想の舞台』(田畑書店、1985/09)
東京堂ふくろう館の坪内祐三氏による棚から拾った一冊。これまた1980年代日本の(メディアにあらわれた)思想状況を垣間見るのに格好の本。
★鈴木布美子『映画の密談――11人のシネアストに聞く』(リュミエール叢書18、筑摩書房、1994/09)
11人=アキ・カウリスマキ、ジム・ジャームッシュ、陳凱歌、ペドロ・アルモドバル、フィリップ・ガレル、侯孝賢、ヴィム・ヴェンダース、ピーター・グリナウェイ、パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ、アラン・タネール、エリック・ロメール。これも東京堂ふくろう館の紀田順一郎氏によるお買い得コーナーで入手(ほんとにお買い得だった)。
★アルベール・ゲラール『世界文學体系 別巻1 世界文学序説』(中野好夫訳、筑摩書房、1961/05)
先だって完結した筑摩書房の「世界文学体系」の別巻1は、まるごとゲラールの『世界文学序説』。その後「世界」もずいぶん広くなりました。
★中井正一『生きている空間――主体的映画芸術論』(てんびん社、1971/12)
辻部政太郎編・解説・解題。中井正一の随筆から映画芸術論を集めたもの。最近出た中井正一関係の書物には以下のものがある。
・鈴木正編『中井正一エッセンス』(こぶし文庫 戦後日本思想の原点、こぶし書房、2003/08、amazon.co.jp)
・木下長宏『増補 中井正一――新しい「美学」の試み』(平凡社ライブラリー、平凡社、2002/07、amazon.co.jp)
また、手軽に読める本として岩波文庫から――
・長田弘編『中井正一評論集』(岩波文庫青198-1、岩波書店、1995/06、amazon.co.jp)【品切】
が出ている。
★青木富夫『小説 突貫小僧一代記 子役になってはみたけれど』(都市出版、1998/10、amazon.co.jp)
小津安二郎の映画『会社員生活』(1929)で子役デビュー。『突貫小僧』で主役を演じて「突貫小僧」の愛称で呼ばれた青木富夫の自伝的小説。日本映画人多数登場。
★辻邦生『私の映画手帖』(文藝春秋社、1988/10、amazon.co.jp)
目下新潮社から全集(全20巻)が刊行中の辻邦生(1925-1999)による映画随筆集。
⇒新潮社 > 『辻邦生全集』
http://www.shinchosha.co.jp/zenshu/tsujikunio.html
★四方田犬彦編『吉田喜重の全体像』(作品社、2004/08、amazon.co.jp)
四方田犬彦、山本直樹、斎藤綾子、平沢剛、木下千花による吉田喜重論。吉田本人による講演「他者としての、みずからを語る」も採録。『ユリイカ』2003年4月臨時増刊号は吉田喜重を総特集していましたね。
★『CAHIERS DU CINEMA JAPON 【映画の21世紀】VII』(勁草書房、1998/03)
・パリ/東京 シネマ 1997-1998
★Wim Wenders, Le souffle de l'ange (Cahiers du cinéma, 1988)