若松孝二『時効なし。』(小出忍+掛川正幸編、ワイズ出版、2004/12、amazon.co.jp)#0057


映画監督若松孝二(わかまつ・こうじ, 1936- )への聞き書きで構成する映画人生回顧録。一見デタラメな人生(←これ、褒め言葉)とけじめのある言動のバランス*1


数々の作品の撮影背景のエピソードや、「俺ほど映画のなかで警官を殺した監督もいないんじゃないか」という氏が反権力的になったいきさつや、赤軍――PFLP・世界戦争宣言』(1971)*2を撮ったいきさつはとりわけ興味深い。


あさま山荘事件を映画化しておきたい、という氏の抱負どおり、ぜひ映画をつくってほしいと思う。


なお、本書には時代背景の概説や人物についての註がついているので、「赤軍ってなあに?」という読者も安心です。


本書の目次は以下のとおり。


第一章 この男、”国際テロリスト”につき
・ウィーン国際映画祭へ招待されて
・映画館を持っている映画監督
・肺ガン手術からの生還
・ガサられ専門家


第二章 癒しのパレスチナ
・『赤軍――PFLP・世界戦争宣言』
パレスチナ参り


第三章 誰でも映画監督になれる
・バカ松から若松へ
・ピンクからメジャーへ
・映画からテレビへ
・若松流映画監督入門


第四章 風景の中の少年
・新作に託す熱き思い
作品リスト


余談になるけれど、上記の浜野佐知さんは、一度、若松孝二のもとで助監督を務めたことがあるとの由。ただし、『女が映画を作るとき』によると、現場での衝突がもとで、一日で飛び出したのだとか。


警察が若松プロの事務所をガサ入れ(若松氏は赤軍との関係で公安から目をつけられており、赤軍関係者が事件を起こすたびガサ入れをされたようだ)したさいに盗撮したというヴィデオ、ソフト化しないだろうか。


⇒IMAGE FORUM > 若松孝二
 http://www.imageforum.co.jp/wakamatsu/
 略歴やフィルモグラフィー、現在購入できるヴィデオ作品の情報など。


⇒IMAGE FORUM > 『俺は手を汚す』
 http://www.imageforum.co.jp/wakamatsu/wk-ort.html
 1982年に刊行された『俺は手を汚す』の冒頭を読むことができる。1998念01月にダゲレオ出版より再刊されたとのこと。


⇒シネマスコーレ
 http://www.cinemaskhole.co.jp/cinema/html/home.htm
 若松孝二氏が1983年に設立した劇場。JR名古屋駅徒歩二分。


⇒insite-tokyo > 若松孝二インタヴュー
 http://www.insite-tokyo.com/interview_ja/15wakamatsu/content.html

*1:自ら回顧しているのだから当然といったらそれまでだけれど

*2:「戦争」の「戦」の字が表題どおりに出せず。