『みすず』no.525、2005年3月号(みすず書房

・ノーマ・フィールド「民主主義を愛したとき——2004年アメリカ大統領選挙
・サラ・ロイ「ホロコーストとともに生きる——ホロコーストサヴァイヴァーの子供の旅路」(岡真理訳)
 Sara Roy, "Living with the Holocaust: The Journey of a Child of Holocaust Survivors" (Journal of Palestine Studies, Vol.32, No.1)
・佐谷和彦「美術行政はこれでよいのか」

ほか小沢信男、佐々木幹郎、植田実各氏の新連載など。


個人的には、佐谷画廊主・佐谷和彦(さたに・かずひこ)氏による「美術行政はこれでよいのか」を興味深く読んだ。


2003年に芦屋市が公表した芦屋市行政改革実施計画によると、支出節約のために芦屋市立美術博物館を売却するという内容を含んでいた。同館存続のための市民グループが活動を行っており、まだ行き先は見えない状況のようだ。佐谷氏はこの問題を糸口に、美術行政の現状を、「美術館のあるべき姿勢」(なにをどのように展示するのか)、「学芸員の制度と現状」(欧米美術館と日本における学芸員の質と量のあまりの違いにびっくり)、「美術品の税法」(日本では美術作品は単なる贅沢な商品という扱い)、「東京都現代美術館」(に見られる不透明な作品購入の問題)というトピックから批判的に概観している。そこに垣間見えるのは、文化行政の美術に対する不見識である*1。対して、大原美術館の創設者である大原孫三郎(おおはら・まござぶろう, 1880-1943)の見識を対置している。


同様にこの国の美術界の体質を象徴的に露呈した出来事として、2005年に開催予定の第2回横浜トリエンナーレ(第1回は2001年)のディレクター交代が記憶に新しい。InterCommunication誌No.52に掲載された辛美沙氏による「ヨコハマ・ブルー——ある国際展で起きた「事件」について」では、磯崎新氏から川俣正氏へとディレクターを交代した経過を、磯崎氏の側から記述している(別途メモを作成する予定)。


また、現代思想2005年03月号(青土社)掲載の高祖岩三郎氏による連載「ニューヨーク烈伝 第四回 反白壁論」は、アメリカ合衆国における美術館運営について筆が及んでおり、上記二つのテキストとあわせ読むと参考になる。


⇒芦屋市立美術博物館
 http://www.ashiya-web.or.jp/museum/01top/f_top.html


⇒芦屋市立美術博物館を考えるワーキンググループ
 http://www.geocities.jp/ohmoriwg/about.html#kinkyou


大原美術館
 http://www.ohara.or.jp/


⇒佐谷和彦の仕事場
 http://www5a.biglobe.ne.jp/~art-del/vr-satani/index.htm
 ただし現在は更新が止まっている


横浜トリエンナーレ2005
 http://www.jpf.go.jp/yt2005/j/index.html

*1:もちろんこうした厳しい条件のもとで創造的な展覧会を企画するキュレーターもいることを忘れないようにしたい。