現代思想第17巻第5号、1989年4月臨時増刊号(青土社)#0419


「存在と存在者の違いについて80文字で記せ」? は、80文字で? ええっ! あ。
なんの因果か現代思想をはじめ、いくつかの雑誌のバックナンバーを見つけては入手・繙読する、ということを続けている。


この雑誌は、1973年12月に創刊号(1973年1月号)を発行して、目下33年目にはいっている。だから仮に臨時増刊号をのぞいて年間12冊(1974、75年には二ヶ月合併号もあったけれど)だと勘定しても、384冊+6冊(2005年分)でおよそ390冊ほど刊行されている計算になる。


現代思想のバックナンバーは、古本屋などで比較的でよく見かけるのだが、やはりよく出会う号とそうでない号とで遭遇頻度の差がある。たとえば、1982年3月臨時増刊号のソクラテス以前」*1や、1987年12月臨時増刊号「日本のポストモダンなどは、なかなかお目にかからない号である。今回手にしたファシズム特集号もそうした一冊。この号は、ハイデガーナチスのかかわりを追っていると、しばしば参照先のひとつにあがっている。内容は以下のとおり。

★思想に問われているもの
・J.-P.サルトルレジスタンス、フランスと明日の世界」(松葉祥一訳)
 Jean-Paul Sartre, La Résistance: la France et le monde de demain——par un philosophe


★ファリアス——ハイデガーナチズムについて
・J.ハーバーマスハイデガーの世界と著作——ヴィクトール・ファリアス『ハイデガーナチズム』への序文」(三島憲一+山本尤訳)
 Jürgen Habermas, Heidegger——Werk und Weltanschauung
・R.ローティ「哲学をクソ真面目にうけとること——ヴィクトール・ファリアス『ハイデガーナチズム』」(吉岡洋訳)
 Richard Rorty, Taking Philosophy Seriously (The New Republic, 11/April/1988)
・P.ブルデューハイデガーを語る」(石崎晴己訳)
 Pierre Bourdieu, "Heidegger par Pierre Bourdieu: le Krach de la philosophie" (Libération, 10 mars 1988)
西谷修「数と凡庸への諾と否——「ハイデガー論争」からノマディズムへ」


ハイデガーナチズム(「レフリック」第一部、第二部)
・A.フィンケルクロート+P.オーバンク+L.フェリー(伊野武正訳)
・A.フィンケルクロート+Ph.ラクー=ラバルト+M.リシール(伊野武正訳)
 France Cultureのラジオ番組 "Répulique"で1988年3月12日、3月19日に放送された討議。


★レクチャー
・J.-F.リオタール「ハイデガーの知らなかったもの——〈ユダヤ的なるもの〉と西欧における倫理の問題」(小林康夫訳)
 1988年7月、東京大学教養学部で行われたセミナール「倫理について」の一部。


★われわれはなぜかくもファシズムを嫌悪するのか?
・若森栄樹「他者の簒奪」
子安宣邦「「宣長問題」とは何か」
松浦寿夫「非対称性の謎」


ポール・ド・マンの戦争とは何だったのか?
・J.デリダ「貝殻の奥に潜む潮騒のように——ポール・ド・マンの戦争」(島弘之訳)
 Jacques Derrida, Like the Sound of the Sea Deep within a Shell: Paul de Man's War (Critical Inquiry 14, Spring 1988)


⇒哲学の劇場 > 資料 > 『現代思想
 http://www.logico-philosophicus.net/resource/gendaishisou/index_gendaishisou.htm

*1:青土社の目録では「ソクラテス」となっている。