★高崎金久『ツイスターの世界——時空・ツイスター空間・可積分系』(共立出版、2005/05、amazon.co.jp)#0424
ロジャー・ペンローズ(Roger Penrose)といえば、日本では『皇帝の新しい心——コンピュータ・心・物理法則』(林一訳、みすず書房、1994、amazon.co.jp)や『心の影——意識をめぐる未知の科学をさぐる』(林一訳、全2冊、みすず書房、2001-2002、amazon.co.jp)など、心脳問題に数学・物理学(量子重力論)の方面から切り込んでいるヘンなおじさん、というイメージが先行しているかもしれない。
ペンローズの本職は数学・物理学で、本書は彼が1960年代に提唱したツイスター理論(Twistor Theory)*1を数理的に概説した一冊だ。これまで日本語で読めるまとまった文献がなかっただけにありがたい仕事(数式を追うのが少し骨ですが)。目次はつぎの通り。
・第1章 ミンコフスキー時空と自由場の方程式
・第2章 ツイスター誕生
・第3章 層と複素多様体
・第4章 層係数コホモロジーとペンローズ変換
・第5章 ゲージ場のツイスター理論
・第6章 重力場のツイスター理論
・参考文献
著者高崎金久(たかさき・かねひさ, 1956- )氏は、現在京都大学大学院人間・環境学研究科教授。本書のほかにも可積分系の本や数学入門書を書いている。
ツイスター理論については、ペンローズの新著『THE ROAD TO REALITY: A Complete guide to the laws of the universe』(KNOPF, 2004, amazon.co.jp)の第33章「More radical perspectives; twistor theory」に、本人によるコンパクトな解説があるので併せ読むと理解が深まるかもしれない。
同書の古典ギリシアからはじまる「実在への道」(1000ページ)はまことに刺激的。
ツイスター理論への入門書には、竹内薫『ペンローズのねじれた四次元』(講談社ブルーバックス1260、講談社、1999/07、amazon.co.jp)がある。こちらは、ツイスター理論へ接近するために必要な、特殊相対性理論、一般相対性理論、量子力学の入門書にもなっている。ツイスター理論は、相対論を拡張して量子論的なことも扱えるようにしようと目論む理論体系であるためこれら諸理論の理解が不可欠なのだ。といっても、さすがに新書一冊でツイスターの理論体系に踏み込むわけにはゆかず、入り口までの案内となっている(それ自体はすばらしい仕事だと思う)。ぜひここからもう一歩踏み込む本をつくっていただきたい。
⇒高崎金久ホームページ
http://www.math.h.kyoto-u.ac.jp/~takasaki/
⇒高崎金久ホームページ > 『ツイスターの世界』
http://www.math.h.kyoto-u.ac.jp/~takasaki/books/twistor.html
詳細な目次の紹介と正誤表
⇒共立出版 > 『ツイスターの世界』
http://www.kyoritsu-pub.co.jp/shinkan/shin0505_06.html
⇒作品メモランダム > 2005/03/07 > Roger Penrose, THE ROAD TO REALITY
http://d.hatena.ne.jp/yakumoizuru/20050307/p3
*1:"Twister"ではなく、"Twistor"。