「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第3部 [再生]」東京都写真美術館


全4部で写真の歴史を概観する写真展シリーズ「写真はものの見方をどのように変えてきたか」の第3部「再生」が東京都写真美術館で開催されている。


写真の誕生を概観する第1部、19世紀末から1930年代のモダニズムの時代を検証する第2部につづく第3部では日本の1930年代から1960年代における写真史の紆余曲折を12名の写真家の仕事で辿る。


鈴木佳子『写真の歴史入門 第3部「再生」』(とんぼの本、新潮社、2005/07)
時代区分からもわかるように、戦争と写真の関係を再考する内容でもある。報道写真はどのように国策に利用されていったのか、そうした流れのなかで個々の写真家は戦争とどのように向き合ったのか。


登場する写真家は、小石清(こいし・きよし, 1908-1957)、河野徹(こうの・とおる, 1907-1984)、木村伊兵衛(きむら・いへい, 1901-1974)、林忠彦(はやし・ただひこ, 1918-1990)、植田正治(うえだ・しょうじ, 1913-2000)、濱谷浩(はまや・ひろし, 1915-1999)、桑原甲子雄(くわばら・きねお, 1913- )、熊谷元一(くまがい・もといち, 1909- )、中村立行(なかむら・りっこう, 1912-1995)、大束元(おおつか・げん, 1912-1992)、福島菊次郎(ふくしま・きくじろう, 1921- )、東松照明(とうまつ・しょうめい, 1930- )。いずれも名だたる写真家である。


多川精一『戦争のグラフィズム——『FRONT』を創った人々』(平凡社ライブラリー、平凡社、2000/07)
写真だけが記録・伝達できる現実があり、そのような写真の機能ゆえに写真はときとして写真家の意図に反して「修正」されもする。この展覧会に出品されている写真のなかにも、プロパガンダのために「修正」を施されたものがある。どの写真のどこにそのような「修整」がなされたのか、という意識をもって写真に対峙することで、ある種の緊張感が生じる。商品広告の写真など、ディジタル技術の応用によって「修正された写真」を見慣れすぎてしまった現代の眼から見ても、それが「修正」であることに気づいたときには軽いショックを受けるのではないだろうか。それはおそらく、写真に施された修正そのものに対する驚きというよりは、そのような修正を施した修正者の意図への驚きである。


多川精一『焼跡のグラフィズム——『FRONT』から『週刊サンニュ-ス』へ』(平凡社新書、平凡社、2005/04)
もちろん、テーマは戦争だけではない。戦中戦後の生活風景、満州、沖縄、銀座、ヒロシマ、新宿(68年)といった街の様子、子供たち、ヌード、作家、民俗など、それぞれの写真家の作風をうかがわせる作品も多数展示されている。また、写真誌『NIPPON』『FRONT』ほかの現物もガラスケースにはいってではあるが出品されている。


会期は2005年09月11日まで。


⇒作品メモランダム > 2005/06/25
 http://d.hatena.ne.jp/yakumoizuru/20050625
 第2部「創造」についてのメモランダム


⇒作品メモランダム > 2005/05/06
 http://d.hatena.ne.jp/yakumoizuru/20050607
 第1部「誕生」についてのメモランダム


東京都写真美術館
 http://www.syabi.com/