この本を企画して、編集担当の瀧澤さんと私とでミーティングを重ねてゆくうちに、瀧澤さんから『こんにちはマイコン』(小学館、1982、ISBN:B000J7IP74)の思い出話が出た。
この本は、漫画家のすがやみつる先生(現在は小説家でもある)によるもので、人気作品『ゲームセンターあらし』のキャラクターたちが登場して、マイコンの歴史やプログラムを学んでゆくという構成の学習マンガである。
ちょうど1980年代の初めに10代でパソコンを触り始めた私たちは、このマンガから多大な刺激を受けた世代でもある。私の周りにもまだ自分のパソコンは持っていないけれど、いつか自分でもパソコンを買おうと思って、この本で憧れを膨らませたり勉強をしている子どもが少なからずいたし、私自身もこのマンガからパソコンがどういうものなのかということを教えてもらった。
かつて読んでいた同書は、四半世紀の歳月のなかでどこかに行ってしまった(友人が借りていったのだったかしら)ので、内容をじっくりご紹介というわけにいかないのが残念だけれど、丁寧に作られていて子ども心にもかゆいところに手が届く本だと思ったことをいまでも覚えている。
だから瀧澤さんが、「『こんにちはマイコン』みたいな役割を果たしてくれるような本を目指したいですね」(大意)と言うのを聴いたとき、私ももしそんな本が書けたら、すがや先生から受けたご恩をいささかなりともお返しできるかもしれないと思ったのだった。
1980年代に私が読んだコンピュータ入門書の大半とすがや先生の本の最大のちがいは、失敗や試行錯誤を見せるか否かという点にある。『こんにちはマイコン』では、あらし(登場人物)たちがプログラムを学びながら、あちこちでエラーに遭遇して困っていたように思う。他方で、多くの入門書では、うまくいく場合だけを提示していた。最近でこそ「失敗学」だなんてことも言われるけれど、プログラミングのトレーニングでもこの考え方は有効ではないかと思う。
拙著を作る出発点でこそ、瀧澤さんのデバッグするとプログラムの見方が磨かれるという経験談があったものの、振り返ってみればたぶん、私たちはかつて読んだ『こんにちはマイコン』のことをどこかで覚えていたのだと思う。
こうした経緯や思いをうまくまとめられず、書物のなかに記すにはいたらなかったけれど、このようにして瀧澤さんと私がこしらえた『デバッグではじめるCプログラミング』という本は、すがやみつる先生による『こんにちはマイコン』の影響下に作られたのだった。改めて、すがやみつる先生に感謝申し上げたい。ありがとうございました。
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また、ウェブ上でもいくつかのサイトで拙著へコメントを頂戴しました(下記リンク先をご参照あれ)。書物の作りからプログラムに関する技術的なご批判を含め、いずれもありがたいご意見ばかりです。自分のクセでプログラムを書いてしまっている部分もあるため、ご指摘にいちいち頷きながら拝読しました。
また、お恥ずかしながら、誤植・誤変換なども見つかっており、これについては追って拙ウェブサイト(哲学の劇場)などでサポートページを開設させていただこうと思います。
自分としても悔やまれるのは、諸般の事情から書名を並べるだけに終わってしまった巻末のブックガイドですが、これについても本来書きたいと考えていたコメントを別途当ブログでも掲載したいと思います。
⇒すがやみつるホームページ > 日記
http://www.m-sugaya.com/nikki/
2008年6月2日の日記で拙著をご紹介いただきました。ありがとうございます!
⇒「こんにちはマイコン」
http://www.m-sugaya.com/arashi/pc-index.html
⇒ときどきの雑記帖 i戦士篇
http://www.kt.rim.or.jp/%7ekbk/zakkicho/08/zakkicho0806a.html#D20080607-5
コメントと問題点などのご指摘をいただきました。ありがとうございます!
⇒なつたん > 2008.06.05
http://natu.txt-nifty.com/natsutan/2008/06/c_38af.html
同じくコメントと問題点などのご指摘をいただきました。ありがとうございます!
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