チェスタトン『求む、有能でないひと』



★G. K. チェスタトン『求む、有能でないひと』
 (阿部薫訳、妹尾浩也装幀、237ページ、国書刊行会、2004/02、1800円+税、ISBN:4336046190


 本書は、訳者の阿部薫氏による編訳書。G. K. チェスタトン(Gilbert Keith Chesterton, 1874-1936)のエッセイを選び、訳出してあります。訳者あとがきによると、出典は以下の通り。

The Illustrated London News
Whats Wrong With the World
Eugenics and Other Evils
Utopia of Usurers
The End of the Armistice
All Things Considered
Daily News


 以下は、詳細な目次。「よるべなき人」などの言葉は、目次のなかで各エッセイを分類するためのもの。「・」で始まるのがエッセイのタイトルです。チェスタトンのエッセイについては、またの機会に検討してみますが、「求む、有能ではないひと」という表題作が典型であるように、一見「常識」の反対のような主張を持ち出すことで、読み手を「え?」と揺さぶりつつ、考えさせ、自らの議論に引き込む手腕は、何遍読んでも舌を巻きます。必ずしもチェスタトンと考え方が一致しないとしても、こうした議論をする相手であれば、意見の相違点を巡って話し合うのも楽しく、建設的なものになりそうです。読み手の思考の振幅や柔らかさを計ってみるという意味でも、チェスタトンのエッセイをつまみ読みしてみる甲斐はあろうかと思います。本書は、訳者もおっしゃるように、これからチェスタトンに触れてみようという読者にもうってつけの入門書です。

よるべなき人
・求む、有能でないひと
・「あいまい」さと孤立
・「近代」の発端
・自由思想の自縛
・民主主義の根拠
・「過去」をとりもどす自由
・「保守」と「進歩」の由来
・根なし草スナオ


隷属
・財産の敵
・本来の財産
・自由喪失
・危機
・監獄の「進化」
・みんなの監獄
・労働の強制
・未来の勤労者


フェミニズム
・官印、烙印、執行
・真摯さと絞首刑
・女と権力
フェミニズムと俗物
・現代の奴隷


ジャーナリズムと科学
・現代の議論
・悪いジャーナリズム
アインシュタイン
・進化論と倫理
・遺伝について
・科学原理について


精神の衰弱
・理解しない精神
・知力の退行
・奴隷国家の宗教
・うぬぼれ
・幻想の社会
・ムシの帝国
・国家の狂気


法律と科学
・アナーキイな政治
・狂人と法律
無神論者のスタイル
・予防と権威
・「科学」という国家宗教


戦い
・軍人精神
・信義とたたかい
・エゴイスト
・平和的侵略
・戦争と軍備について


教育
・教育と決定論
・「教育環境」とは
・教育についての真実
・教育の価値
・教育と権威
・謙虚なやかまし屋
・「エリート校」について
・偽善者の学校
・プライド(思いあがり)
・教育崇拝
・ロマンスとリアリズム
・精神の健康と古典学習
・ビジネス教育について
・哲学の授業


自由
・政治優先
・レジャー
・奴隷の休暇
・ほんとうの安息
アイデンティティ
・ドラマと人生の自由意志
・芸術の「進歩」
・近代人の「論理」
・パラドクス二種


訳者あとがき

国書刊行会
 http://www.kokusho.co.jp/index.html


Wikipedia > List of books by G. K. Chesterton
 http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_books_by_G._K._Chesterton