日本における辞典と事典の歴史


目下は、もっぱら二つのテーマを追跡しています。一つは、ロンドン王立協会について。もう一つは字典・辞典・事典の歴史。備忘録を兼ねて、手にした本などのことを記してゆこうと思います。


杉本つとむ『日本語講座3 辞典・事典の世界』(桜楓社、1979/06、ISBN:B000J8G33G


本書の巻頭に見える「日本の辞典・事典の歴史」は、タイトルの通りその歴史を辿り、概要を脳裏に描く上で大変有益です。主に江戸の終わり辺りまでを凝縮して論じています。


辞書は、その時代の文化や社会を言葉の面で反映する器のようなものでもあります。それだけに「辞典の編集・研究の跡をたどってみると、おのずから日本文化の本質や構造を知ることができると思う。辞典は文化でありそのもっとも象徴的な存在である」(同書、まえがき)と言えましょう。


また、面白いことに辞書をいろいろ見てゆくと、各種の書物や辞書からの抜き書きを集めたものであることも少なくありません。「こんな言葉の使い方をした人がいた」という事実の記録でもあり、厖大な文書から他ならぬその文章を選んで集めた編纂者のものの見方の記録でもあります。


さて、杉本さんの同書は以下のような目次です。

口絵写真(4ページ)
まえがき
一 日本の辞典・事典の歴史――辞書史のための試論
二 『早大本 節用集』の考察――『節用集』研究のための序説
三 『増補下学集』の構成と語彙――辞典編集の方法をさぐる
四 永井如瓶子『邇言便蒙抄』小見――近世語研究の鍵
五 中村綃斎『訓蒙図彙』の構造――日本最初の絵入百科事典
あとがき
索引


この本は、杉本つとむ日本語講座」(全7巻)の一冊で、この叢書は以下のような構成です。

第1巻 異字体とは何か
第2巻 方言はどう探究されたか
第3巻 辞典・事典の世界
第4巻 語彙と句読法
第5巻 国語学と蘭語学
第6巻 外国語と日本語
第7巻 国語学の諸問題


版元は桜楓社(現・おうふう)。



杉本氏は、最近も『日本本草学の世界――自然・医薬・民俗語彙の探究 』(八坂書房、2011/09、ISBN:4896949811)を刊行したところです。最近のまとまったものとしては、八坂書房から杉本つとむ諸作選集」(全10巻)が刊行されています。


杉本つとむ著作選集」全巻構成

第1巻 日本語の歴史
第2巻 近代日本語の成立と発展
第3巻 日本語研究の歴史
第4巻 増訂日本翻訳語史の研究
第5巻 日本文字史の研究
第6巻 辞書・事典の研究I
第7巻 辞書・事典の研究II
第8巻 日本英語文化史の研究
第9巻 西欧文化受容の諸相
第10巻 西洋人の日本語研究 総索引 総目次


以下に同著作選集のパンフレットがあります(pdf)。


⇒八坂書房 > 「杉本つとむ著作選集」
 http://www.yasakashobo.co.jp/books/images/1247571285-phpeU.pdf