目下は、いくつかの本の企画、執筆、翻訳などを進めております。
10面指し将棋の様相を呈しておりますが、落ち着いて一つずつ形にして参る所存です。
現在のところ、最もゴールに近いのは、『「百学連環」を読む(仮)』(三省堂)です。以前、三省堂ワードワイズ・ウェブで連載した原稿をもとに手を入れて、単行本として仕立て中であります。
担当してくださっているのは、連載中もおおいにお世話になった荻野真友子さん。それどころか、そもそもこの連載が始まったのも、もとはといえば、私がブログかSNSかどこかで、「西周「百学連環」の現代語訳私家版をこしらえよう」といった趣旨のことを書いたのを、荻野さんが目聡く見つけて「それならいっそ公開でいかがか」(大意)とお声かけくださったのがきっかけでありました。よもやこんな形になるとは思っておらず、思えば遠くへ来たものだ、と我ながら驚いています。
週に一度、一つのテーマについて連続した文章を書き継ぐという連載を、これほど長く続けたのは初めてのことで、ものの書き方という点でも勉強になりました。それにしても、連載という形式を編み出した人は偉いものだと思います。
単行本化に際しては、連載の原稿から、重複や連載時にしか意味をなさない文章は別として、それ以外は無理に削除したりはしておりませなんだ。それだけに結構分厚くなりそうです。
読解対象である「百学連環」の「総序」と、読解に費やされた言葉の量のギャップに萌えていただければ幸いです(なんだそれ)。
⇒三省堂ワードワイズ・ウェブ > 「「百学連環」を読む」目次
もう1冊完成を目指して進めているのは、『夏目漱石『文学論』を読む(仮)』(幻戯書房)です。こちらは書下ろしで取り組んでおります。
編集してくださっているのは、中村健太郎さん。彼が誠信書房に在籍中、『誠信プレビュー』第113号(2011/10)への寄稿の依頼をいただいて、「寅彦曼荼羅――因果の網状図」という短いエッセイを書いたあたりから交流が始まり、以来一緒にあちこち歩いたり(中村さんは、ともかくよく歩く人なのです)、随分いろいろな話をしました。そうしたやりとりの中から、いくつかの企画案が生まれました。その第一弾が、この『文学論』論です。私の怠惰のために完成が遅れに遅れてきましたが、そろそろ完成にこぎつけるべく進めております。
――という具合に、近著2冊は明治づいております。これは、いずれも「学術」「文学」なるものについて、現在の土台をつくった時代をまずは見ておこうという意図もあってのこと。もういくつかの領域や概念について、同様の試みを行いたいとも念じております。
その他については、別途ご報告したいと思います。
⇒誠信書房 > 『誠信プレビュー』第113号
http://www.seishinshobo.co.jp/files/pre-113.pdf
なお、思い出しついでながら、寅彦先生については、池内了責任編集『寺田寅彦――いまを照らす科学者のことば』(KAWADE道の手帖、河出書房新社、2011/11)に、「知を結ぶ――寺田寅彦 学術連環」という一文を寄稿したことがありました。これは、寅彦先生の仕事の全貌をマッピングしてみるという試みです。同書の編集は、高野麻結子さん。後に『サイエンス・ブック・トラベル――世界を見晴らす100冊』(河出書房新社、2015/03)でも高野さんのお世話になりました。
寺田寅彦---いまを照らす科学者のことば (KAWADE道の手帖)
- 作者: 池内了
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2011/11/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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