アミーア・アレクサンダー『無限小』

★アミーア・アレクサンダー『無限小――世界を変えた数学の危険思想』（足立恒雄訳、岩波書店、2015/08）

　Amir Alexander, Infinitesimal: How a Dangerous Mathematical Theory Shaped the Modern World (2014)

「無限小――どんな数よりも小さいが、0ではない。この不思議な「数」の正体をめぐって、数学は矛盾のない絶対的真理の世界だと信じる陣営と矛盾があっても現実的に役に立てば良いと考える陣営の間で、激しい論争が持ち上がる。

これは同時に、宗教的権威や絶対君主制を守ろうとする陣営と、対立的意見も許容し、経験の積み重ねが進歩をもたらすと信じる陣営との闘いでもあり、微積分学が、文化の中心地だったイタリアではなく、イギリスなどで発展する原因ともなった。

ガリレオ裁判以上に、後世に大きな影響を及ぼした、もうひとつの異端論争の知られざる歴史を描く。」（同書見返しより）

■目次

序章

　ソルビエール

　無限小の問題

　失われた夢

第1部　無秩序に対する戦争――イエズス会 vs ガリレオ派

　第1章　イグナティウスの子供たち

　　ローマでのある会合

　　皇帝カール5世 vs マルティン・ルター

　　混沌の始まり

　　一筋の光明

　　イグナティウスの子供たち

　　イエズス会の逆襲

　　学問の帝国

　　混沌から秩序へ

　第2章　数学的秩序

　　教育する修道会

　　報われない男

　　宇宙を秩序づける

　　数学の勝利

　　数学の確実性

　　クラヴィウス vs ベラルミーノ

　　パラドクスと無限小

　　謙虚な修道士カヴァリエリ

　　布と本の譬え

　　注意深い不可分主義者

　　ガリレオ最後の弟子

　　21個の証明

　　パラドクスへの情熱

　第4章　「消すか、消されるか」――無限小を巡る戦争

　　無限小の危険性

　　検閲・第一部

　　ルカ・ヴァレリオの没落

　　グレゴワール・ド・サン・ヴァンサン

　　イエズス会の凋落

　　ウルバヌス八世の危機

　　検閲・第二部

　　パラヴィチーノの屈辱

　　恒久的解決

　第5章　数学者の闘い

　　ギュルダン vs カヴァリエリ

　　ベッティーニの一刺し

　　アンドレ・タッケ

　　陰の無限小撲滅キャンペーン

　　無限小最後の抵抗

　　イエス会の滅亡

　　近代化の二つの夢

　　秩序の国

第2部　リヴァイアサン vs 無限小――実験的経験主義の勝利

　第6章　リヴァイアサンの到来

　　ディガーズ

　　国王不在の国

　　真冬の熊

　　人生は「汚らわしく、卑しく、短い」

　第7章　幾何学者トマス・ホッブズ

　　幾何学と恋に落ちて

　　幾何学的国家

　　解けない問題

　　リヴァイアサン、円積問題を解決

　　希望なき探究

　第8章　ウォリスとはいったい何者か？

　　若いピューリタンの教育

　　聖職者、そして教授

　　陰鬱な季節のための学問

　第9章　新世界の数学

　　無限個の線分

　　実験的数学

　　ウォリスが数学を救う

　　リヴァイアサン vs ウォリス

　　どちらの数学を選ぶのか？

　　未来へ向けての戦い

エピローグ　二つの近代化

登場人物

年表

訳者あとがき