そして吉田健一といえば、すごい本が出ましたね。
川本直・樫原辰郎・武田将明編『吉田健一に就て』(国書刊行会、2023/10/24)です。
外ならぬ吉田健一の著作に『英国に就て』がありますが、これを当人に差し向けたわけですね。目次は以下の通り。
川本直「序文」
I. 文明
伊達聖伸「宗教と世俗の歴史から見た人新世の吉田健一」
佐藤亜紀「ヨオロッパの世紀末」II. 言葉
大野露井「Quuely Nativeーー奇妙にぺらぺら」
高遠弘美「静寂と響きーー吉田健一に教へられた詩の世界」III. 近代
渡邊利道「吉田健一と近代」
樫原辰郎「モダニズムの忘れもの」IV. 酒肴酒
堀田隆大「吉田健一と「飲む場所」ーー現実と夢幻を巡って」
山﨑修平「淡いを愛する」V. 文学
武田将明「〈芸術家としての批評家〉の誕生ーー『英国の文学』と『英国の近代文学』を読む」
小川公代「吉田健一と「社交」ーーG・L・ディキンソン、ヴァージニア・ウルフ、E・M・フォースター」
小山太一「大海蛇のうねり」
川本直「小説家としての吉田健一」VI. 文学的交友録
渡邊利道「石川淳と吉田健一ーー酒の友であり文学の友」
渡辺裕真「小林秀雄と吉田健一ーー正面から来る近代と己に内在する近代」
浜崎洋介「福田恆存と吉田健一ーー『日本に就て』を肴に」
山中剛史「三島由紀夫と吉田健一ーー「絶好」物語再考」
中西恭子「澁澤龍彦と吉田健一ーーそれぞれの島宇宙で」VII. 吉田健一頌
大塚健太郎「ソネット」
磯崎純一「英国人の見た吉田健一」
富士川義之「回想の中の吉田健一」武田将明「あとがき」
編者のお一人である川本直さんの「序文」によれば、「本書のコンセプトは、野暮を承知で、偶像崇拝的な従来の吉田健一像を打ち壊し、吉田健一の新たな可能性とその限界をも提示することによって、現時点での吉田健一をめぐる書物としての決定版を目指した」(同書、p. 6)とのこと。
私にとっての吉田健一は、ご本人が書いたものはいずれかといえば苦手だけど読むと面白さを感じるという対象で、付かず離れずという付きあいをしてきました(翻訳はまた別です)。その審美の感覚には必ずしも賛成できないけど、その手つきには興味を惹かれるという感じでしょうか。そこで、各種文庫などをはじめ、吉田健一の本が出るとそのたび買って読むということはしてきた次第です。いわゆる気になる存在というやつかもしれません。
本書で多方面からの読み方を教えてもらおうと思います。