★岡倉天心『茶の本』(大久保喬樹訳、角川ソフィア文庫ビギナーズ日本の思想、角川書店、2005/01、amazon.co.jp)#0151
大久保喬樹(おおくぼ・たかき, 1946- )氏による新訳。同書には、『東洋の理想』の「序章」「終章」の翻訳のほか、各章についての解説ノート、さまざまな資料からの引用を中心に構成した「エピソードと証言でたどる天心の生涯」が収録されている。
岩波文庫版には、天心の弟・岡倉由三郎氏による「はしがき」(6頁)と、福原麟太郎氏による「解説」(3頁)が収録されている。また、講談社学術文庫版(訳者=桶谷秀昭)には英文も併録されている。
現代世界において、人類の天空は、富と権力を求める巨大な闘争によって粉々にされてしまっている。世界は利己主義と下劣さの暗闇を手探りしている有り様だ。知識は邪心によって買い求められ、善行も効用を計算してなされるのである。東西は、荒れ狂う大海に投げ込まれた二匹の龍のように、人間性の宝を取り戻そうとむなしくもがいている。
(大久保訳より)