★ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ『ピラネージ建築論 対話』(横手義洋訳、岡田哲史校閲、acetate 004、編集出版組織体アセテート、2004/10、ISBN=4902539047)#0177
 Giovanni Battista Piranesi, PARERE SU L'ARCHITETTURA(1765)


ジョバンニ・バッティスタ・ピラネージ(Giovanni Battista Piranesi, 1720-1778)による対話体で書かれた建築論。


古典ギリシアの建築の称揚に対して、古代ローマ建築の長所を主張する目的で書かれている。対話する人物の一方、プロトピロは古典ギリシアを、他方のディダスカロは古代ローマを擁護する。


古典ギリシア建築を理想とし、ウィトルウィウスを信奉するプロトピロの、余計な装飾は排すべきだという主張を逆手にとって、ディダスカロは「あなたの言い分にのっとると、あれもいらないしこれもいらない」と言ってつぎつぎと「装飾」をそぎ落としてゆく。プロトピロでなくとも「そんなむちゃくちゃな」と言いたくなりそうな仕儀だけれど、ディダスカロによる徹底はプロトピロのあいまいさを浮き彫りにする。ついには建物は解体されてなにも残らなくなる。邦訳書では、この過程を編集部が加工した四枚の図に起こしていておもしろい*1


本文はきわめて短いものだが、下記のとおり本文の理解を助ける種々の資料(本文の原文を含む)が併載されている。

口絵(8枚)
長尾重武「序 ピラネージとは誰か」 e-text
G.B.ピラネージ「建築に関する所感 対話 プロトピロとディダスカロ」
横手義洋「解題 ピラネージの『対話』について」
「写真 プリオラート聖堂 1766 ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ」(撮影=岡田哲史
岡田哲史「付論 ロードリとピラネージの建築論——十八世紀モデルニズモをめぐる論考」
「原文 PARERE SU L'ARCHITETTURA」


本書は、編集出版組織体アセテートが刊行する書籍 acetate の第4冊目。入手を希望される方は、下記のアセテート・ウェブサイトまで。


acetate 005 は、E.A.T.のビリー・クルーヴァーによる『ビリーのグッド・アドヴァイス』(2005年02月刊行予定)とのこと。こちらもたのしみ。


編集出版組織体アセテート
 http://www.acetate-ed.net/


編集出版組織体アセテート > 『ピラネージ建築論 対話』
 http://www.acetate-ed.net/bookdata/004/004.html

*1:テリー・ギリアムモンティ・パイソンでつくっていたアニメーションを思い出させる。もっとも本書にはギリアムの場合とちがって、「余計なもの」をとりさる手(どこからともなくあらわれる手)もなければ、パーツが取り去られるさいの「ポン」という唇による効果音もないのだけれど。