★廣野由美子『批評理論入門——『フランケンシュタイン』解剖講義』中公新書1790、中央公論新社、2005/03、amazon.co.jp)#0341


京都大学大学院人間・環境学研究科で教鞭を執る廣野由美子(ひろの・ゆみこ, 1958- )氏による批評理論入門書。


メアリー・シェリー(Mary Wollstonecraft Shelly, 1797-1851)の小説フランケンシュタイン——あるいは現代のプロメテウス』(森下弓子訳、創元推理文庫東京創元社、1984/01、amazon.co.jp*1を題材にとり、さまざまな文学理論の概念を解説するとともに実際にその概念で同作品を解釈してみせる、という趣向。



全体は「小説技法篇」と「批評理論篇」の二篇からなり、「小説技法篇」では「冒頭」「ストーリーとプロット」「語り手」「焦点化」「提示と叙述」「時間」「性格描写」「アイロニー」「声」「イメジャリー」「反復」「異化」「間テクスト性」「メタフィクション」「結末」といった概念を、「批評理論篇」では「伝統批評」「ジャンル批評」「読者反応批評」「脱構築批評」「精神分析批評」「フェミニズム批評」「ジェンダー批評」「マルクス主義批評」「文化批評」「ポストコロニアル批評」「新歴史主義」「文体論的批評」「透明な批評」といった批評の諸スタイルが解説される。


文学の読み書きに関わらない読者もわきまえておいたほうがよいと思われる要素が多数含まれている。たとえば、同義で使われていることも多々ある「ストーリー」と「プロット」はどうちがうのか? 不明なあなたは本書を繙いてみよう。


巻末には文献案内や索引も備わっており、文学理論小事典としても使えるようになっている。


中央公論新社
 http://www.chuko.co.jp/

*1:amazon.co.jp のデータベースでは、なぜか訳者・森下弓子氏が著者として登録されているのでご注意。