『思想』No.976、2005年08月号(岩波書店


特集は、「医療における意思決定」

加藤尚武「思想の言葉」
清水哲郎「医療現場における意思決定のプロセス——生死に関わる方針選択をめぐって」
立岩真也「他者を思う自然で私の一存の死」
・柘植あづみ「終末期医療をめぐる諍い——テリ・シャイボの事例が映すアメリカの現在」
・中山茂樹「法における「尊厳死」の捉え方」
・鎌江伊三夫「患者中心医療における意思決定——ベイズ主義の適用と限界」
・鈴木利廣「医療上の選択と日本法——医療裁判の現場から判例の紹介を中心に」
・一ノ瀬正樹「ベイズ的認識論の可能性——医療的意思決定を視野に入れて」


・S.ウォリン「ポストモダン・デモクラシー(下)——虚像か、一時的なものか


脳死や永続的植物状態(PVS:persistent vegetative satate)と判定された場合、当人の意思を知る術はない。このときそういう状態になった人の治療や生命維持を打ち切ることは是か非か。


アメリカで起こったテリ・シャイボの事例では、永続的植物状態と判定された女性テリ・シャイボの生命維持の打ち切りをめぐって、彼女の夫(生命維持打ち切り)と両親(生命維持継続)のあいだでその是非が戦われた(最終的には夫の意向どおり生命維持を打ち切り、テリ・シャイボは死亡)。一見プライヴェートなこの問題は、同時に宗教的な見解や政治の次元での問題としても争われることになり、メディアから断片的に伝わる情報だけからはその全容をつかみづらいものだった。


本号に掲載された柘植あづみ氏の論文は、この事例をめぐる複雑な要素を整理し、争点を浮かび上がらせている。終末医療における意思決定が孕む困難と問題について考えるうえでも格好の事例。


⇒arsvi.com > euthanasia > Terri Schiavo
 http://www.arsvi.com/0p/et-usa05.htm
 立岩真也氏のサイトにあるテリ・シャイボ関連の資料


岩波書店 > 『思想』
 http://www.iwanami.co.jp/shiso/index.html




以下は岩波書店、2005年8月の新刊より。