イヴェント「科学と科学哲学――はたして科学に哲学は必要なのか?」

2月22日は、ゲンロンカフェのイヴェント、伊勢田哲治×三中信宏「科学と科学哲学――はたして科学に哲学は必要なのか?」で司会を務めました。

以下では、イヴェントで触れた本について簡単にご紹介してみます。

今回の対談イヴェントのきっかけとなったのは、『系統体系学の世界――生物学の哲学がたどった道のり』(けいそうブックス、勁草書房、2018)で、三中さんが、須藤靖さんと伊勢田哲治さんの対談本にコメントしたくだりでした(同書347ページ以下)。

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三中さんは、須藤さんの科学者としての立場からの意見にも、伊勢田さんの科学哲学者としての立場からの意見にも同意できないと書いています。

2018年の夏にこの本の刊行を記念した鼎談イヴェントを、やはりゲンロンカフェで行ったのですが、その鼎談後のおしゃべりで、いっそのこと須藤さん、伊勢田さん、三中さんの3人で話す場を設けたらどうだろうという話になって、今回のイヴェントが実現されたのでした。

須藤靖さんと伊勢田哲治さんの対談本はこれです。

『科学を語るとはどういうことか――科学者、哲学者にモノ申す』(河出ブックス、河出書房新社、2013)

科学哲学はなにをする学問なのか。それは科学とどんな関係があるのか。およそ300ページにわたって議論が続きます。一切の予定調和と妥協を排した対談は、スリリングといっては生ぬるく感じるような激論です。読んでるこっちの情緒も揺さぶられます(お二人のどちらの立場に共感するかによってもまた違う揺れ方をするでしょう)。

これを読むと、プラトンが描くところのソクラテスと対話する相手は、どれほど物わかりがよい人なのかと思えます。須藤さんは、腑に落ちないことや納得のいかない点を明確に何度でも指摘するし、それを受けた伊勢田さんはそのつど角度を変えて説明を試みます。

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また、伊勢田さんの近著に『科学哲学の源流をたどる――研究伝統の百年史』(叢書・知を究める13、ミネルヴァ書房、2018)があります。19世紀から20世紀初頭にかけての科学哲学の流れを探る本です。「サイエンティスト」という言葉の来歴なども検討されています

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また、今回の科学哲学をめぐる対談に直接関係しませんが、社会科学における因果の考え方に検討を加えた本として、佐藤俊樹『社会科学と因果分析――ウェーバーの方法論から知の現在へ』(岩波書店、2019)を並べて読むと面白いかもしれません。

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2月22日のゲンロンカフェの対談、伊勢田哲治×三中信宏 司会=山本貴光「科学と科学哲学――はたして科学に哲学は必要なのか?」は3月1日までニコニコ動画のタイムシフトでご視聴いただけます。(冒頭15分は無料でご覧いただけます)