「持ってたはずなのに近頃見かけないな」と思っていた本が、電子化した本を放り込んでいるフォルダに見つかるケースがままある。
先日、電車での移動中、iPad Proの画面を見ながら、「そういえば」とたいそう久しぶりに電子書籍管理アプリを起動してみたところ、そこには「どこへ行ってしまったのだろう」という本の電子版(自分でPDFにしたもの)が並んでいるのが目に入った。
「おお、ここにいたんですか」と分類を施した「棚」を見てみると、そうだった、そうだった、この本も裁断してPDFにしたのだったと思い出されたりする。
他方で、こうして目に入るまで、存在を忘れていたものも多々あったりして、なかなかままならない。
私はどうもコンピュータの記憶装置にしまったファイルのことをすぐ忘れてしまうようだ。音楽、映画、ゲームなども同様に山ほどしまってあるものの、大半を忘れて過ごしている。(そんなこともあって『記憶のデザイン』という本を書いたのだった)
これを解決するには、仕事机や書棚に、そうした電子ファイルの存在を思い出させる表示を仕込むのがよいのではないか。
例えば、書棚に電子化してある本をあらわす代本板を置いておくわけだ。
などと時々考えるものの、これまで実行に移したことはなかった。
そんな意味のことを、Blueskyに投稿したところ、コメントをいくつか頂戴した。コメントを読むうちに、かつてTwitterに投稿したアイデアを思い出す。それはこんな投稿だった。
テーマに沿って本を選んで棚の構成を考える作業はなんべんやっても楽しい。トレーディングカードゲームで、デッキを組むのとも似た愉悦。
— 山本貴光 (@yakumoizuru) 2017年11月4日
実際に書影をカードにしておいてもよい気がしてきた。記憶装置としての本のミニチュアとして。そのカードを、アンドレ・マルローの「空想美術館」のように床やテーブルに並べて、ああでもないこうでもないと並べ替えたりして。 pic.twitter.com/9DbkAUB0uN
— 山本貴光 (@yakumoizuru) 2017年11月4日
デジタルでもいいけれど、名刺くらいの紙で、トランプかタロットでも扱うように、ささっと動かせるのがいい。さしあたり千冊分くらいつくってみて、別途専用のカードボックスをこしらえて、ポータブル記憶喚起装置とするのはどうだろう。
— 山本貴光 (@yakumoizuru) 2017年11月4日
並べたカードを撮影しておくと、その本の組み合わせや相互の位置がデータとして保存される。ブックフェアの棚を、終わった後でも再現できるように、本の集合をそんなふうにアーカイヴする。
— 山本貴光 (@yakumoizuru) 2017年11月4日
また、そのカードをタブレットPCやスマートフォンなどのカメラに写すと、デジタル化してあるファイルが呼び出されて読める状態になる。うん、いいかも。いまはクラウドに1万冊分くらい電子化した本のデータを置いているんだけど、そこから検索で探すのって、存外手間暇かかるのよね。
— 山本貴光 (@yakumoizuru) 2017年11月4日
別途構想・設計している知識OSの一環としてもよさそうな気がしてきた。唯一のモンダイは、そういうカードをばーっと広げられる場所をどうつくるかだわね……。
— 山本貴光 (@yakumoizuru) 2017年11月4日
ここに書いたアイデアについて、その後実行していない。
他方で、『記憶のデザイン』(筑摩書房)に書いた「知識OS」というアイデアについては、目下INSTeMという組織の研究メンバーとして、吉川浩満くんとともに実装を目指しているところ。
上記のツイートに記したアイデアも、その一環として考えてみようと思う。
ということを、まとめておかないとまた忘れてしまいそうなので、ここに記しておく次第。
ついでながら、私はTwitterやBlueskyの投稿も、一種のカードのようなものと思って使っている節があるようで、ここに記したアイデアとも重なり合っているのだった。さらに言えば、そうしたSNSへの投稿をカードのように束ねたり、並べたりしたいとも考えている。これはアプリにしてみてもよいかもしれない。