おしらせ

★11月22日【刊行】

 新著『文学問題(F+f)+』(幻戯書房)刊行予定
 http://yakumoizuru.hatenadiary.jp/entry/2017/10/10/111159 

★12月20日【対談】

 加島卓+山本貴光「エンブレム問題から考えるデザインの過去と未来」
 http://yakumoizuru.hatenadiary.jp/entry/2017/11/19/011531

 

★12月15日【対談】

 神田桂一×菊池良×仲俣暁生×山本貴光「なぜ『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』は10万部も売れたのか?」
 http://yakumoizuru.hatenadiary.jp/entry/2017/11/12/222555

 

★連載中

 「人生がときめく知の技法」(吉川浩満と共著、webちくま、隔週)
 http://www.webchikuma.jp/category/chinogihou

 「人文的、あまりに人文的」(吉川浩満と共著、「ゲンロンβ」隔月)
 https://genron-tomonokai.com/beta/

 「マルジナリアでつかまえて」(『本の雑誌』)

Googleの医療や健康にかんする検索結果の質を向上するアップデートについて

Googleで、医療や健康にかんする検索結果の質を向上するアップデートがなされたとのこと。歓迎したいニュースです。

ただし、利用者が検索結果の真偽や信頼性について自分でも検討・判断する必要があるという点にかわりのないことには引き続き注意が必要であります。

 

それとはまた別に、Googleによる説明文に含まれる次のくだりも重要です。

現在、毎日数百万件以上の医療や健康に関する日本語のクエリが Google で検索されています。これを分析してみると、医療の専門用語よりも、一般人が日常会話で使うような平易な言葉で情報を探している場合が大半です。日本のウェブには信頼できる医療・健康に関するコンテンツが多数存在していますが、一般ユーザー向けの情報は比較的限られています。

 


もし、あなたが医療関係者で、一般のユーザーに向けたウェブでの情報発信に携わる機会がありましたら、コンテンツを作る際に、ぜひ、このような一般ユーザーの検索クエリや訪問も考慮に入れてください。ページ内に専門用語が多用されていたら、一般ユーザーが検索でページを見つけることは難しくなるでしょう。内容も分かりづらいかもしれません。

(「医療や健康に関連する検索結果の改善について」(Googleウェブマスター向け公式ブログ、2017年12月06日の記事)から)

 

この点について、以前、日本保健物理学会「暮らしの放射線Q&A活動委員会」編『専門家が答える 暮らしの放射線Q&A』(朝日出版社、2013)という本の編集をお手伝いした際、痛感したことがあったのを思い出しました。

同書は、2011年3月11日の震災と原子力発電所の事故のあとで、放射線の健康への影響に疑問をもつ人びとから、広く質問を受けつけて答えるという切実な仕事にとりくんだ同名ウェブサイトをもとに編まれたものです。

そのサイトでは、放射線について必ずしも正確な知識をもたない人びとからの質問を受けて、専門家たちが現時点で科学的に判明している知見にもとづいて回答を書き、公開し続けました。関係者のみなさんの熱意と使命感なくしてはなしえなかった大変な仕事です。

先に述べた本では、それらのQ&Aから精選したものにリライトを施しています。私は同書を企画・編集した赤井茂樹さんを手伝ってそのリライト作業に参加しました。

 

その際に遭遇した課題は次の2点に要約できます。

1) 放射線の影響に不安と疑問を感じている人が読んで、できればその不安と疑問を解消・緩和できること。

 

2) 科学の知見の正確さを損ねずに伝えること。

 

これはもとのウェブサイトでも目指されていたことだと思います。

ただし、この二つの要件を同時に満たすことは簡単ではありません。

2の科学的な知見の正確さを確保しようとすればするほど記述は細かくなり、予備知識・予備理解なくしては読みがたいものになります。

さりとて1を満たすことを優先して適当なことを述べるのでは意味がありません。

 

言い換えると、落ち着いて探究心を持って読む、といった読み方ではなく、不安で心配なので本当のところはどうなのかを知りたいという読み方をする読者が読める形で科学の知見を提供する必要があるわけです。

そして、多くの場合、おそらくは「こうです」と白黒がはっきりした回答が期待されるかもしれないところ、実際にはそう割り切れるものではないという話をしなければならないという難しさもあります。

同書では最終的にどのような文章になったかはご覧いただいてご判断いただくよりありませんが、私自身はこのプロジェクトに関わって以降、この課題について考えさせられ続けています。

 

専門用語とは、たとえるなら複雑な仕組みや概念をぎゅっと圧縮して簡素に省略した表現です。「放射性同位体」や「自然放射」などがその例。

背景も含めた知識をもつ当該領域の専門家にとっては互いのやりとりにも便利な用語です。他方でこれを非専門家に提示する際にはどうしたらよいか。ここにはまだまだ多くの課題や工夫できることがあるように思います。

ひょっとしたら、生活にかかわるさまざまな専門知識について、必要なときに理解を助けてくれるような事典があるとよいのかもしれない、などと想像したりもしています。

あるいは、一つの概念なり用語について、読者の理解の程度に応じて提示される説明文の量と内容が変化するような事典があってもよいでしょう。

てなことを、Googleの発表を読んで考えたのでした。

 

 

定型から生じる不定型

だからなにというわけではないけれど、つい地面にあらわれる模様を見てしまいます。

落ち葉が多い季節はなおのこと。

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ひとつひとつの葉は似たような形をしていて、それだけにパターンがあるのだけれど、こんなふうに重なったりすると、パターンがあるのにないという景色が生まれて、そこに目を惹かれるという気分です。

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『文学問題(F+f)+』ブックフェア・レポート:ブックファースト新宿店篇

『文学問題(F+f)+』(幻戯書房)刊行記念ブックフェア「文学とは感情のハッキングである」のレポート第3弾は、ブックファースト新宿店です。12月3日にお邪魔して参りました。

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(写真1.入り口)

 

このブックファースト新宿店は、モード学園コクーンタワーというビルに入っているのですが、そのビルの形状にあわせて、たいそうユニークな形をしています。

http://www.book1st.net/shinjuku/floormap/img/floormap_b1.gif

(図はブックファースト新宿店のサイトよりリンク)

先ほどの写真1は、この地図でいうと⑤に近い入り口を撮影したものでした。

私ははじめ、入り口から入って⑤のあたりを右手へ抜けて、赤いゾーンから右端のオレンジのゾーンを目指しました。というのも、オレンジゾーンの②の辺りに文芸コーナーがあるからです。

見てみると、文芸批評関連の棚に『文学問題(F+f)+』もありました。棚から棚へと、ブックフェア台はどこかしらと探し歩くも見つからず、目に入った「100分 de 名著」の『ソラリス』を見つけて手にとり、ついでながらまだ入手していなかった岩波文庫11月の新刊全冊を棚から抜いて、本を抱えてうろうろ。

どうやら文芸棚にはなさそうだと分かり、来た道を戻って今度は赤いゾーンから左端の黄色いゾーンへと移動しました。

ここは人文書や芸術書などのコーナーです。人文書の新刊棚に『文学問題(F+f)+』も置いていただいており、その反対側にありました。

 

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(写真2.ブックフェアコーナー)

写真上部にも拙著が積まれてあるのですが、お客さんが写っていたのでトリミングしております。

上のほうはこんな具合です。

 

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(写真3.リーフレット)

 

この右隣には美術書やデザイン書の棚があり、そこではばるぼらさんによるブックフェアが開催中でした。

ばるぼらさんと野中モモさんによる『日本のZINEについて知ってることすべて――同人誌、ミニコミ、リトルプレス―自主制作出版史1960~2010年代』(誠文堂新光社)の関連ブックフェアでしょうか。これは『アイデア』の連載をもとにつくられた本で、書名の通りこの50年ほどの日本のZINEをこれでもかと載せているものすごい本です。

 

ブックファースト新宿店に訪れるたび、私の脳裏ではウンベルト・エーコの書斎の映像が思い出されます。


迷宮のような書棚の森のなかをさまようような感覚です。場所によってゆるやかなカーヴを描く棚の形もあいまって、だんだんとどこにいるのか分からないような、見当識が失われるような気がするのは、私が方向音痴なこともありますが、先ほどお目にかけたフロアマップの形からもご想像いただけるかもしれません。ここに90万冊ほどの本があるとのことで、ちょっとやそっとでは見切れないわけです。

 

また、フロアのそこかしこに不定形の棚といいますか、円柱状に配置されたおすすめ本があったり、「名著百選」のコーナーがあったりして、歩いていると目にうつる景色が形を変えるようでもあります(私はその感覚が好きです)。

その「名著百選」は12月3日がちょうど最終日のようでした。私は、古賀弘幸さんの『文字と書の消息 ――落書きから漢字までの文化誌』(工作舎)を推薦したのでした。あるかなと思って探してみたら、品切れの札がついておりました。

 

そうそう、2016年の夏に『「百学連環」を読む』(三省堂)を刊行した際には、ブックファースト新宿店で刊行記念イヴェントとして竹中朗さんとの対談を行ったのでした。

ちなみにかつて魔術書を探して読んでいたら、見知らぬ人から「ひょっとして魔方陣とか描きますか」と尋ねられたのは、ブックファースト渋谷店(ビル丸ごと店舗だった折)でした。そういう意味でも忘れがたい書店であります。

いつもお世話になっています。

 

⇒ブックファースト
 http://www.book1st.net

『文学問題(F+f)+』ブックフェア・レポート:青山ブックセンター六本木店篇

『文学問題(F+f)+』(幻戯書房)のブックフェア「文学とは感情のハッキングである」のレポート第2弾です。

前回はMARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店の様子をお目にかけました。

本日は、青山ブックセンター六本木店にお邪魔してきました。

許可をいただいて撮影した写真を何枚か。

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(写真1)

本ごとにコメントもカードで展示してくださっています。

この右手に文学書コーナーが広がっています。

 

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(写真2)

角度を変えてもう一枚。下のほうにはポーランドBOOKフェアで、先頃全巻完結した「レム・コレクション」(国書刊行会)が見えますね。

レムといえば、『文学問題(F+f)+』でも「理論」について検討するくだりで、レムによるトドロフ批判の一文を脚注に引用しました。図らずも隣接して置かれるとは、うれしい偶然です。引用した文章は『高い城・文学エッセイ』の巻に入っています。

 

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(写真3)

リーフレットです。写真ではよく見えないかもしれませんが、リーフレットの下のほうに「青山ブックセンター六本木店」と店名を入れました。

このたびのブックフェアは目下3つの書店で開催中で、各店ごとに30冊前後を選んでおります。24冊ほどは共通の本で、残る書目はお店ごとに内容を変えてみました。

 

同店のtwitterアカウントでも、こんなふうにアナウンスしてくださっています。

 

青山ブックセンター六本木店には、ほぼ毎週足を運んでいます。

というのも、目下プロ契約というものを結んで勤務中のゲーム会社・モブキャストが六本木にあって、週に二度ばかり通っているのでした。

定期的に訪れる場所の近くによい書店があるのはたいへんありがたいことです。

 

モブキャストでの仕事が終わって帰る前などに立ち寄って、棚から棚へと眺めているうちに1日パソコンに向かってものを書いたり考えたりした疲れもどこへやら。

青山ブックセンターは、人文書や科学書の棚はもちろんのこと、デザイン、建築、美術、写真、映画、音楽、漫画、料理などの方面も充実しているのが特徴です。他にもサブカルチャー、ビジネス書、語学書、洋雑誌、文具などがバランスよく置かれている印象です。このところ使い続けているモレスキンのノートもあるので、1冊使い終わってしまったときなどもすぐ次が手に入ってありがたいのです。

また、入り口のドアをくぐってすぐのところにある新刊台は、ほとんどいつも「これは読まねばだわ」と思っている本ばかりが並んでいて、なろうことなら「この棚にあるのを全部ちょうだい」といって買って帰りたくなり、たいへんに困ります(うれしい悲鳴)。

そうそう、それからこれはぜひとも書かねばと思うのですが、文庫の並べ方がユニークで、普通なら新刊書で固めてありそうな目立つ場所に、新刊以外の文庫も置かれています。はじめのうちは新刊書だと思いこんでおりました。

それで、「おや、これは他の書店では見かけないなあ。面白そう」だなんて買って帰って読んでみると、既刊の本だったりするのを何度か経験してからようやく、「あ、おすすめを選書しているのね!」と気づいた次第です。考えてみれば、新刊だけを新刊っぽく並べるより、既刊書と組み合わせたほうがお互いのためにもよいですね。

というわけで、そのことに気づいてからは、文庫の棚もよく見るようになりました。

 

今日もなんのかんのといって、袋ひとつ分の本と雑誌を手にした次第です(レジにあった『宝石の国』最新刊も含む)。

 

表参道にある本店ともども大変お世話になっている書店のひとつです。

いつもありがとうございます。