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衰亡と超新星――『セガ vs 任天堂』(あと湯川専務)

work book Blake J. Harris セガ vs. 任天堂 仲達志 早川書房 game

ブレイク・J・ハリス『セガ vs. 任天堂――ゲームの未来を変えた覇権戦争』(仲達志訳、早川書房、2017/03)

Console Wars: Sega Vs Nintendo - and the Battle that Defined a Generation (2014)の邦訳が刊行されました。

ゲーム業界に一時代を築き、いまもトップランナーの地位を保ち続けている任天堂にたいして、ハードとソフトの両面で、いわば勝負を挑んだセガの戦いぶりを中心に描いた本です。厖大なインタヴューや調査によって当時のゲームビジネスの裏舞台を臨場感たっぷりに再構成しています。ソニー・ピクチャーズ(!)で映画化されるとのこと。

僭越ながら、下巻の帯文を書きました。上巻は成毛眞さんです。

ご依頼を頂戴して最初に思い浮かんだのは「なんというゲーム帝国衰亡史!」という惹句でした。これはもちろんギボンズの『ローマ帝国衰亡史』やアシモフの『銀河帝国衰亡史』を念頭に置いてというか、そのもじりなわけです。我ながらいいじゃないの! と思っておりました。

が、考えてみたら「衰亡」だと滅びるという話になっちゃいます。セガが、ハードウェアから撤退した点についてはそう言ってもあながち間違いではないものの、セガ自体はゲームメーカーとして現在も健在ですので、紛らわしいと考え直してボツにしました。

そういえばなぜだか連想で思い出しただけなのですがついでに述べると、ときどき「超新星」(supernova)という言葉を、「期待の新人」のような意味で使っているのをお見かけします。気持ちはとてもよく分かります。なにしろ字面が「超」のつく「新しい星」ですから。

しかし、これもよく知られているように、「超新星」とは、どういう状態を指すかというと――

星が急に太陽光度の100億倍もの明るさで輝きだし,その後1~2年かかって暗くなっていく現象のこと。もっとも明るいときには銀河全体の明るさに匹敵し,新星の明るさの100万倍にもなるので,超新星と呼ばれる。これは,星がその進化の最後に起こす大爆発で(以下略)

(『世界大百科事典』平凡社、JapanKnowledge版「超新星」の項目より。ただし下線は山本による)

というわけでありまして、要するに爆発四散する直前の星の輝きのこと。上の説明にある通り、「新星」をはるかに超えた明るさになるから「超新星」なだけで、この字の組み合わせから連想される「すごい新星」という意味ではありませぬ。

だから、無闇矢鱈と期待の新人さんについて「超新星現る」などと書いてしまうと、「一瞬輝いているけどすぐ爆発して消えてなくなります」と言っていることになってしまうのであります(あ、分かった上で書いている場合は別ですが……)。

なんの話だか分からなくなりましたが、『セガ vs. 任天堂――ゲームの未来を変えた覇権戦争』は、ゲームやゲームの歴史に関心がある向きにももちろんのこと、ビジネスや1980年代から90年代半ばの時代の空気に触れてみたいといった人にも楽しめる本であります。このところ、デジタルゲームの歴史に関する良書が相次いで刊行されており、その方面の書棚も少しずつ賑やかになって参りました。

そういえば、比較的近年にも「任天堂の倒し方を知ってるぜ」と、一時、まぶしくて正視できないほどの光を発していたゲーム会社があったように記憶していますが、その後どうなったのかしら。

 

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セガ vs. 任天堂――ゲームの未来を変えた覇権戦争(上)

セガ vs. 任天堂――ゲームの未来を変えた覇権戦争(上)

  • 作者: ブレイク J ハリス,Blake J. Harris,仲達志
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/03/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

  

セガ vs. 任天堂――ゲームの未来を変えた覇権戦争(下)

セガ vs. 任天堂――ゲームの未来を変えた覇権戦争(下)

  • 作者: ブレイク J ハリス,Blake J. Harris,仲達志
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/03/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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www.youtube.com

2017年3月の講演について

work event

2017年3月に登壇する講演についてまとめてお知らせいたします。

三つあります。

 

★1.「座・芸夢」第19回(DeNA、2017.03.15)

若手ゲームプランナーの育成をを目標に掲げてDeNAが主催する座・芸夢に登壇いたします。モデレーターは、元DeNAで、いまは起業してファリアー社の代表取締役となった馬場保仁くん。

私が講師を務めるのは今回で3回目。毎回異なるテーマを設定して、自分でも半分未知のモンダイに取り組んでいます。

このたびは「飽きないゲームをつくるには?」というテーマで、ゲームの過去・現在を踏まえつつ、未来に向けて考える機会にするつもりです。

(聴講者の募集は既に締め切られております)

 

★2. 「「Lead Japan Summit 〜先駆者と語る日本の未来〜」 part.2 イノベーションを社会実装する里山都市構想」(2017.03.22)

「金沢工大学園の新たなチャレンジである白山キャンパスの取り組みを中心にイノベーションと地域の未来について語」るというイヴェントです。

棚橋弘季さんにお声かけいただいて、基調講演でお話しをいたします。

目下のところ「百学連環の計――発見と発想のための結合術(アルス・コンビナトリア)」というテーマを予定しています。

参加をご検討の方は下記リンク先をご覧ください。

(03.23追記:終了しました。ありがとうございます。)

peatix.com

 

★3. 「子供がゲームにハマるわけ――遊びの歴史としくみからときほぐす」(田口教育研究所、2017.03.25)

子供たちは、なぜゲームが好きなのでしょうか。
時に他のことを放り出してゲームにハマることもあります。
実は明確な理由があるのです。
そのヒミツは、ゲームと子供を外から見ているだけでは分かりません。

そこで今回は、ゲームとはどのようなものなのか、なぜ子供たちが惹きつけられるのかという仕組みをご一緒に考えてみます。

 というテーマでお話しします。

ご興味のある方は下記をご覧くださいませ。

www.taguchiken.com

文学における認知文法

book Cognitive Grammar in Literature University of Nottingham John Benjamin Publishing 2014

★Edited by Chloe Harrison, Louise Nuttall, Peter Stockwell and Wenjuan Yuan, Cognitive Grammar in Literature (University of Nottingham, John Benjamin Publishing, 2014)

ここしばらく、facebookに気になる本の書誌を投稿しておりましたが、同サーヴィスは過去の投稿を探すのが大変。そんなの最初から分かっておろうてなものですが、今日も今日とて「あれあれ、たしかfacebookに投稿したよな…」という本を探すのに苦労したのを機に、こちらにも転載していこうと思います。って、誰になんの言い訳をしておるのか。

『文学における認知文法』というタイトル。ちょうどいま、文学論と文法論について考え中のわたくしは必読であるかもしれない本。

This is the first book to present an account of literary meaning and effects drawing on our best understanding of mind and language in the form of a Cognitive Grammar. The contributors provide exemplary analyses of a range of literature from science fiction, dystopia, absurdism and graphic novels to the poetry of Wordsworth, Hopkins, Sassoon, Balassi, and Dylan Thomas, as well as Shakespeare, Chaucer, Barrett Browning, Whitman, Owen and others. The application of Cognitive Grammar allows the discussion of meaning, translation, ambience, action, reflection, multimodality, empathy, experience and literariness itself to be conducted in newly valid ways. With a Foreword by the creator of Cognitive Grammar, Ronald Langacker, and an Afterword by the cognitive scientist Todd Oakley, the book represents the latest advance in literary linguistics, cognitive poetics and literary critical practice.

(版元紹介文より)

 

John Benjamin Publishing > 同書紹介ページ

 https://benjamins.com/#catalog/books/lal.17/main

https://benjamins.com/covers/3d_flat_225x300/lal_17_pb.png

現実と虚構はどのように区別されるのか

memorandam 記憶

ずっと気になっていることのひとつに、私たちは、どうやって現実と虚構を区別しているのか(していないのか)、というモンダイがある。

そんなの区別できるに決まっておろう、とうとうリアルとヴァーチャルの区別もつかなくなったのか、と思われるかもしれない。

とはいえ、実際に記憶の研究を見ていると、かつて経験したことがないはずの出来事を、第三者からの示唆によって、そういう経験をしたと思い込んだりするという実験などもあるようだ。

私たちの記憶は存外柔軟な面もあるといおうか、事実とつくり話を簡単に取り違えられるといおうか。

このモンダイは、一方では個人の脳における記憶や知識のあり方はどうなっているのかという神経科学上の事実の方面から詰めていけることであり、他方では歴史と物語の関係やいかにという古くていつまでも新しい過去の遇し方のモンダイにも深く関わっている。

また、『吾輩は猫である』の吾輩の言い分ではないけれど、私たちは24時間の出来事を(24時間かけて)ありのままに記憶したり思い出したりできるわけではない。そうである以上は、知覚したことや経験したことは、必ず圧縮や省略などの処理を経て、つまりなんらかの加工を施されて記憶に収まる道理である。このとき、記憶された過去の出来事は、どこまで事実といえるのか、どこからが物語のようなものといえるのか。

話を冒頭の問いに戻せば、私たちは自分が現実に経験した出来事と、小説で読んだ出来事とを、どのように区別しているのか。

そんなことを考えているところに、facebookで三宅陽一郎さんが宮下保司研究室のウェブサイトへのリンクを投稿しているのを見かけた。

リンク先は、同研究室のウェブサイトに掲載されている「認知記憶の大脳メカニズム――イメージと創造力の起源」というページ。実際に眼でなにかを見る場合と、想像(心の眼)で見る場合とは、なにがどうちがうのか、というモンダイが俎上に載せられている。

 

想像力の起源

歌って踊ってシミュレーション、それが文芸ちゅうものやね

work essay 『本の雑誌』 町田康

『本の雑誌』2017年4月号(No. 406)「町田康の10冊/歌って踊ってシミュレーション、それが文芸ちゅうものやね」を寄稿しました。

好きな日本の作家を1人選んで、10冊を紹介するというコーナーです。

町田さんは、作家としてデビューされた頃から新著が出るつど読みつづけている小説家・詩人です(音楽も聴いています)。

いつか町田さんの文章のどこに惹かれるのか、自分なりに考えてみようと思っていたところ、この機会を頂戴して書いてみた次第です。

 

www.webdoku.jp

「座・芸夢」第19回「飽きないゲームをつくるには?」関連文献リスト

work lecture 座・芸夢

2017年03月15日の「座・芸夢」での講義「飽きないゲームをつくるには?」に関連する文献やウェブへのリンクなどをお示しします。当日触れたもの以外にも追加しています。(適宜更新します)

 

★イアン・レズリー『子どもは40000回質問する――あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力』(須川綾子訳、光文社)

 好奇心について。

 

★伊丹十三『問いつめられたパパとママの本』(中公文庫)

 

★國分功一郎『暇と退屈の倫理学 増補新装版』(太田出版)

 

★ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー――あなたの意思はどのように決まるか?』(村井章子訳、上下巻、ハヤカワ文庫NF)

 人間の本性について考える。

 

★『日経サイエンス』2016年10月号「特集=ゲームと脳」(日経サイエンス社)

 神経科学や認知科学が明らかにしつつある人間の側面についても見ておきたいところ。

 

★ユクスキュル+クリサート『生物から見た世界』(日高敏隆+羽田節子訳、岩波文庫)

 動物の知覚を知ると、人間の知覚も「異化」される。

 

★町田康『スピンク日記』(講談社文庫)

★ジャック・ロンドン『白い牙』(深町眞理子訳、光文社古典新訳文庫)

★ジョージ・オーウェル『動物農場』(山形浩生訳、ハヤカワ文庫)

★アーシュラ・K・ル・グィン『闇の左手』(小尾芙佐訳、ハヤカワ文庫)

★チャイナ・ミエヴィル『言語都市』(内田昌之訳、新★ハヤカワ・SF・シリーズ)

 人間以外の立場を想像するよすがとなる創作。

 

★ヴィクトル・シクロフスキ『散文の理論』(水野忠夫、せりか書房)

 非日常化/異化について。

 

★アリストテレス『詩学』(『アリストテレース詩学/ホラーティウス詩論』、松本仁助+岡道男訳、岩波文庫、所収)

 物語と驚きについて。

 

★アルフレッド・ヒッチコック+フランスワ・トリュフォー『定本 映画術』(山田宏一+蓮實重彦訳、晶文社)

 

★ライナー・クニツィア『ダイスゲーム百科』(正田謙訳、スモール出版)

 ゲームに用いられる確率の数理を考える参考に。

 

★ケイティ・サレン+エリック・ジマーマン『ルールズ・オブ・プレイ――ゲームデザインの基礎』(山本貴光、上下巻、ソフトバンククリエイティブ)

 第14章に「創発」についての解説あり。

 

★クリストファー・アレグザンダー『形の合成に関するノート/都市はツリーではない』(稲葉武+押野見邦英訳、SD選書、鹿島出版会)

 

★プラトン『アルキビアデス クレイトポン』(三嶋輝夫訳、講談社学術文庫)

 自分が何かについて知らないことを自覚する重要性について。

 

★レイ・オルデンバーグ『サードプレイス――コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』(忠平美幸訳、みすず書房)

 

★増川宏一『将棋の歴史』(平凡社新書)

 

★ロバート・A・ハーン+エリック・D・ドメイン『ゲームとパズルの計算量』(上原隆平訳、近代科学社)

 

篠田正人「将棋における実現可能局面数について」[ pdf ]

 

「将棋の局面数 1:局面数は無量大数」(コンピュータ将棋基礎情報研究所)

 

将棋の局面数 2:分岐の迷宮 : コンピュータ将棋基礎情報研究所(コンピュータ将棋基礎情報研究所)

 

「引き分けがないゲームには必勝法がある?」(クイズの部屋)

Hendrik Jan Hoogeboom and Walter A. Kosters , “The Theory of Tetris” [ pdf ]

 

小泉愛+天野薫+川人光男「恐怖記憶を消去するニューロフィードバック技術を開発ブックマーク」(Nature Human Behaviour、著者インタヴュー)

 

★山本貴光「誰よりも私のことを知る――「拡張人格」としてのゲームAI」(『世界思想』2017年04月号、世界思想社、掲載予定)

 

「人生がときめく知の技法」第3回

work essay 人生がときめく知の技法 吉川浩満 webちくま

吉川浩満くんid:clnmn)との連載「人生がときめく知の技法」(webちくま)の第3回が掲載されました。

「「なんで、この私が斬首に?」という生徒さんの相談」と題して、そろそろ本題に入って参ります。

折しも中公クラシックスから、エピクテトス『語録 要録』(鹿野治助訳、中央公論新社、2017)が刊行されました。まだ現物を見ていないので分かりませんが、これはかつて「世界の名著」に入っていたものだと思われます。 入手しやすくなってよかった。

吉川くんとは目下、この他、「ゲンロンβ」に「人文的、あまりに人文的」という書評対談を連載中です。そちらもそろそろ最新号が出ると思われます。お楽しみに!

www.webchikuma.jp

語録 要録 (中公クラシックス)

語録 要録 (中公クラシックス)