「誰よりも私のことを知る――「拡張人格」としてのゲームAI」

『世界思想』第44号(世界思想社、2017)に寄稿しました。

同号の特集は「人工知能」です。

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目次は次のとおり。

特別対談

・石黒浩+大野更紗「技術革新と人間の未来――豊かな社会、幸せな社会」

人工知能とは何か

・松原仁「人工知能の過去・現在・未来」

・矢野和男「人工知能時代の幸福論と進化論」

人間を超えるか

・茂木健一郎「人工知能とフロー体験」

・円城塔「空飛ぶ小説機械」

・谷口忠大「人工知能は言語を獲得できるか」

・斎藤環「AIが決して人間を超えられない理由」

人間とロボットの未来

・岡田美智男「ひととロボットが寄り添うとき」

・山本貴光「誰よりも私のことを知る――「拡張人格」としてのゲームAI」

・中谷一郎「ヒューロという新種の生物――人間とロボットの融合」

・久保明教「人工知能とジャガー人間――制御できない他者と生きる」

芸術と人工知能

・岡田暁生「人工知能はモーツァルトを超えられるか?」

・上田誠「脚本家と人工知能」

・大森望「SFは人工知能をどう描いてきたか」

・夏目房之介「善悪がわかるアトムの悩み」

2045年の社会

・落合陽一「ウニと雑用――人工知能時代の社会と教育」

・井上智洋「社畜のみなさんへの残念なお知らせ――AIは労働や生活をどう変えるか」

・塚越健司「2020年、2030年、2045年の社会――人工知能と人間の主体性」

・桑島秀樹「子らよ、肉の悦びと悲哀を忘るる勿れ――2045年、〈科学技術的崇高〉の逆説」

 

拙エッセイは、以前『現代思想』2015年12月号「特集=人工知能」(青土社)に書いた「人には遊び友だちが必要だ――ゲームと人工知能をめぐるスケッチ」の姉妹編であります。

また、『ユリイカ』2017年2月号「特集=ソーシャルゲームの現在」(青土社)に寄稿した「切れ切れの意識でデジタルゲームの儚さについて考える十の断章」、5月に刊行予定の『atプラス』(太田出版)次号に書いた「ゲームと人間――魔法円から人は何を持ち帰るのか」なども、合わせてお読みいただければ幸いです。

ついでながら、ゲームとAI方面については、三宅陽一郎さんとの共著でAIの本を、単著でゲーム論を準備中です。以前、『ゲームの教科書』(ちくまプリマ-新書)を共著で書いた馬場保仁君とも、続編をつくろうと話しているところでありました。

 

現代思想 2015年12月号 特集=人工知能 -ポスト・シンギュラリティ-

現代思想 2015年12月号 特集=人工知能 -ポスト・シンギュラリティ-

  • 作者: 新井紀子,小島寛之,石黒浩,茂木健一郎,竹内薫,西垣通,池上高志,深田晃司,三宅陽一郎,山本貴光,ドミニク・チェン,西川アサキ,藤原辰史,磯崎新
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2015/11/27
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ユリイカ 2017年2月号 特集=ソーシャルゲームの現在 ―『Pokémon GO』のその先―

ユリイカ 2017年2月号 特集=ソーシャルゲームの現在 ―『Pokémon GO』のその先―

  • 作者: 米光一成,渡邊恵太,磯光雄,稲見昌彦,コザキユースケ
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2017/01/27
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ゲームの教科書(ちくまプリマー新書)

ゲームの教科書(ちくまプリマー新書)

 

 

「ラテン語で他の言語を分析する」

「ラテン語で他の言語を分析する」

Using Latin to analyze other languages (ScienceDayly)

A researcher has figured out why Latin still turned up in many documents in the 17th to 19th centuries, even though it had not been a spoken language for a long time. During that period, Latin served as an instrument for translating languages that had hitherto been little known in Western culture.

https://www.sciencedaily.com/releases/2017/03/170327083256.htm

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小鹿原敏夫『ロドリゲス日本大文典の研究』

小鹿原敏夫『ロドリゲス日本大文典の研究』(和泉選書176、和泉書院、2015/03)

 

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戦国時代の日本にやってきたイエズス会士ジョアン・ロドリゲスは、日本語の文法を説いた『日本大文典』などをつくったことで知られています。本書は、その内容を詳しく検討したものです。

どのような検討がなされているかは、以下の目次をご覧いただくとお分かりになると思います。大文典に記された文法概念や、それ以前、あるいは同時代の類書との比較も交えながら検討が施されています。

 

序 木田章義

 

第一章 宣教師文典としてのロドリゲス日本大文典

第二章 大文典における文法記述について

第三章 大文典における語根について

第四章 大文典における中性動詞について

第五章 大文典の「条件的接続法」から小文典の「条件法」へ

第六章 大文典における「同格構成」と「異格構成」について

第七章 大文典クロフォード家本について

付章 『コリャード日本文典スペイン語草稿本』について

付 キリシタン資料について

 

初出について

参考文献

あとがき

précis 英文梗概

 

さらに詳しくは、次の通り。

 

序 木田章義

 

第一章 宣教師文典としてのロドリゲス日本大文典

(1) 宣教師文典について

(2) 大文典とラテン文典について

(3) 思弁文法学(Grammatica speclativa)について

(4) ネブリハのラテン文典について

(5) アルヴァレスのラテン文典について

(6) 大文典と天草版アルヴァレスのラテン文典について

(7) 大文典と小文典について

(8) まとめ:大文典巻I・IIにおける独創性とはなにか

 

第二章 大文典における文法記述について

(1) 大文典における語構成について

(2) 大文典における品詞分類について

(3) 大文典における動詞の法について

(4) 大文典における「主格」と「主語」について

(5) 小文典における「主格」と「主語」について

(6) 宣教師文典における「主格」と「主語」について

 

第三章 大文典における語根について

(0) はじめに

(1) 大文典における語根と動詞の活用分類について

(2) ラテン文典と語根について

(3) 俗語文典と語根について

(4) 新エスパーニャの文典と語根について

(5) 新エスパーニャの文典と大文典の共通点について

 

第四章 大文典における中性動詞について

(0) はじめに

(1) 形容詞から中性動詞へ

(2) 形容動詞から形容中性動詞へ

(3) 「文法家(たち)」による中性動詞三分類

(4) 大文典における絶対中性動詞とは何か

(5) おわりに

 

第五章 大文典の「条件的接続法」から小文典の「条件法」へ

(0) はじめに

(1) アルヴァレスのラテン文典(1572)と条件法について

(2) 天草版ラテン文典(1594)と条件法について

(3) 大文典(1604)と条件法について

(4) 小文典(1620)と条件法について

(5) おわりに

 

第六章 大文典における「同格構成」と「異格構成」について

(0) はじめに

(1) 思弁文法における統語論について

(2) 天草版アルヴァレスのラテン文典におけるintransitivaとtransitiva

(3) 大文典におけるtransitivaとintransitiva

(4) おわりに

 

第七章 大文典クロフォード家本について

(0) はじめに

(1) 大文典版本二部について

(2) クロフォード家本の伝来について

(3) クロフォード家本の書入について

(4) おわりに

 

付章 『コリャード日本文典スペイン語草稿本』について

(0) はじめに

(1) 大英図書館蔵スペイン語草稿本『八品詞による日本文典』(S本)について

(2) S本とL本に関するこれまでの研究

(3) S本以外の『八品詞による日本文典』について

(4) L本へのネブリハの影響について

(5) L本における不規則動詞について

(6) L本における第一活用動詞と第二活用動詞の混用について

(7) S本とL本における大文典からの範例文引用の相違

(8) S本とL本の関係についての考察

(9) おわりに

 

付 キリシタン資料について

 

初出について

参考文献

あとがき

précis 英文梗概

 

小鹿原敏夫『ロドリゲス日本大文典の研究』(和泉選書176、和泉書院、2015/03)
 http://www.izumipb.co.jp/izumi/modules/bmc/detail.php?book_id=107323

 

João Rodrigues, Arte da lingoa de Iapam (1604)
 https://archive.org/details/bub_gb_NwnUAAAAMAAJ
 ロドリゲス『日本大文典』(島正三編、文化書房博文社、1969)のようです。

 

Google books "João Rodrigues"検索結果

小鹿原敏夫 - Google 検索

 

ハンナ・アレントのマルジナリア

ハンナ・アレント(1906-1975)の蔵書がpdfで公開されているようです。

例えば、アリストテレス『ニコマコス倫理学』の英訳版、Aristotle, Nicomachean Ethics (Translated, with introduction and notes by Martin Ostwald, The Bobbs-Merrill Company)のページはこんなふう。

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鉛筆で薄く書き込みされています。アリストテレスの本のどこが気になり、どのような触発を受け、何を思い浮かべたのか、そして何を書いたのか、そうした読書という営みの痕跡が垣間見えます。

もうしばらく、いくつかのメモを眺めてみないと、私にはアレントの手がにわかに判読できませんが、自分の読解と重ねたり比べたりしてみるのもいいですね。

いつ頃からか、人がどのように本を使ってきたのか、ということに関心がわいて、関連文献などを集め読んできましたが、昨今はこうした作家たちの蔵書がデジタルアーカイヴで公開されるケースも増えてきて、誠にうれしくありがたいことです。

いつか、古今東西の人びとが、本の余白をどのように使ってきたかという図録のようなものをこしらえてみたい、とは例によっての空想企画であります。

最近、アメリカ合衆国では、トランプ政権との関連で『全体主義の起原』(The Origins of Totalitarianism, 1951)などが再読されているらしいと聞きますが、目下の日本の状況なら、なにをどう読むべきでしょう。

 

⇒The Hannah Arendt Collection > marginalia
 http://blogs.bard.edu/arendtcollection/marginalia/

 

ニコマコス倫理学(上) (光文社古典新訳文庫)

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全体主義の起原 1 ――反ユダヤ主義

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  • 作者: ハナ・アーレント,大久保和郎,ハンナアーレント,Hannah Arendt
  • 出版社/メーカー: みすず書房
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「性格」の変化

人間の性格は、年齢を通じてどのように変化するか、しないかというモンダイに関する最近の調査結果がWIREDで報じられています。

これと関連して、「性格」なるなにかを、どのように見立て、どのように評価・記述できるか、ということについて、これまでどんな工夫が凝らされてきたのかを知りたく思いました。

日本語の「性格」について『日本国語大辞典』(小学館)を見ると、18世紀末の用例があるようです。

通俗孝粛伝〔1770〕五・一回「崔慶性格(セイカク〈注〉キシャウ)又聰明特達常に詩書を学ひける」

現在使われている「性格」は、英語のcharacterの訳語でしょうか。これは例によって、ラテン語のcharacter、さらには古典ギリシア語のχαρακτήρ(カラクテール)に根があります。この語は「刻む」という意味のχαράσσω(カラッソー)に由来するようです。面白いですね。

『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)の「性格」の項目にある「性格研究の歴史」には、次のように書かれています。

性格に関する学説はギリシア時代の哲学者アリストテレスに始まるとされるが、医学者ヒポクラテスの体液説から同じ医学者ガレノスの四(よん)気質説への流れは、体液が気質に関係するとして、多血質、粘液質、胆汁質、黒胆汁質(ゆううつ質)の四気質説として説かれ、体液説が認められなくなった現代にも影響を及ぼしている。またイギリスの医学者ガルの骨相学では、頭蓋(とうがい)骨の形と精神的特徴を結び付けようとし、ドイツの哲学者クラーゲスの筆跡学では、筆跡によって書き手の性格をとらえようとした。近代の性格研究は、ヨーロッパの学者に多くみられる類型論的研究と、アメリカを中心とする特性論的研究とに分かれる。
[浅井邦二]

外から見てとれるその人の性質について、原因をどこに求めるか、その現れる現象はなにかといった観点から検討されてきているわけですね。

いくつかの言語で見てみるとこんな具合。

ドイツ語  Charakter [男性名詞]
フランス語 caractère [男性名詞]
スペイン語 carácter [男性名詞]
イタリア語 carattere [男性名詞]
中国語   性格xìnggé
韓国語   성격

日本語の古語『全文全訳古語辞典』(小学館)
・心(こころ)ばせ
心(こころ)ばへ
心柄(こころがら)
心様(こころざま)
人様(ひとざま)
人(ひと)と為(な)り
本性(ほんじやう)

というわけで、性格心理学の方面を検討してみたいと思います。英語にはCharacterology(性格学)という語もあるのですね。

 

wired.jp

宣教師の文法学

イエズス会士をはじめとするキリスト教の宣教師たちが、かつて世界各地に赴いて、現地の言葉を学んだり、その文法を分析したりする際に、どのように取り組んだのかというモンダイを追跡中。

日本語の場合、ジョアン・ロドリゲス(1561-1634)の『日本大文典』『日本小文典』他、いくつかの文法書が宣教師たちによってつくられていました。

イエズス会の活動について概要を得たいとき、最初に覗くのはウィリアム・バンガート『イエズス会の歴史』(上智大学中世思想研究所監修、原書房、2004/12)です。この邦訳書は、William V. Bangert, A History of the Society of Jesus, Second Edition: Revised and Updated (The Institute of Jesuit Sources, St. Louis 1986 [First Edition: 1972])、つまり原著第2版増補改訂版を訳したものです。創立から2000年代までの歴史を概観させてくれます。

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以下は、中国における文法関連の活動の様子を調べるなかで遭遇した文献です。。

 

★朱鳳「初期中国語文法用語の成立――モリソンの『英吉利文法之凡例』とその後の教科書」(『或問』第10号)
 http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~shkky/wakumon/no-10/wakumon10_4_zhu%20feng.pdf

 

★『或問』
 http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~shkky/wakumon.html


★何群雄「中国文法学の形成期についての研究:『馬氏文通』に至るまでの西洋人キリスト教宣教師の著作を中心に」(博士論文審査要旨)
 http://www.soc.hit-u.ac.jp/research/archives/doctor/?choice=exam&thesisID=35

 

何群雄『初期中国語文法学史研究資料――J.プレマールの『中国語ノート』』(三元社、2002)

 http://www.sangensha.co.jp/allbooks/index/093.htm

 

何群雄『中国語文法学事始――『馬氏文通』に至るまでの在華宣教師の著書を中心に』(三元社、2000)
 http://www.sangensha.co.jp/allbooks/index/072.html

 

何群雄「初期入華キリスト教宣教師にかかわる中国語教育と研究の事情について」(『一橋論叢』第124巻第2号、2000)
 http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/handle/10086/10488

 

★CiNii「何群雄」検索結果
 http://ci.nii.ac.jp/search?q=%E4%BD%95%E7%BE%A4%E9%9B%84&range=0&count=20&sortorder=1&type=0

 

★宣教師たちの日本語研究
 http://www.meijigakuin.ac.jp/mgda/bible/topics/senkyoshi.html

 

イノベーションを社会実装する里山都市構想

先日登壇したイヴェント「Lead Japan Summit 先駆者と語る日本の未来」SENQ霞が関)のレポートが掲載されました。

金沢工業大学の主催で「イノベーションを社会実装する里山都市構想」というテーマでした。わたくしは、同プロジェクトに参画しているロフトワークスの棚橋弘季さんにお声かけいただいて、基調講演でお話をしました。題して「百学連環の計――発見と発想のための結合術」。イノヴェーションという言葉の語源から説き起こしてみたりして。

写真は例によって、変な手つきをしており、なんだか恐縮です……

 

 

「百学連環」を読む

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