★デイヴィッド・ヒューム『人性論』(岩波文庫、岩波書店)
David Hume, A TREATISE OF HUMAN NATURE(1739-1740)
長らく品切れで古書価も高騰していたデイヴィッド・ヒュームの『人性論』(大槻春彦訳、岩波文庫、全4冊、岩波書店)が、「2006年岩波文庫リクエスト復刊」でひさびさに重版するようです。私が10年前に手にした版が1995年刊行で、岩波文庫の新刊は余さず見ていますが、それ以来重版したのを見たことがないように思います。約10年ぶりの復刊ということになるでしょうか。
拙著『心脳問題』(朝日出版社、2004、amazon.co.jp)の「作品ガイド」で同書をご紹介したさい、何人かの方から、「ヒュームの『人性論』を読みたいのですが、手に入らないんですよ」とのお言葉を頂戴しました。この機会にぜひ。
一たい明かに、すべての学は多かれ少なかれ人性(human nature)に関係があり、外見はいかに人性から離れた学があるにせよ、それらもやはり何にか彼にかの経路を通って人性へ帰って来るものである。数学・自然学・自然宗教すら或る程度まで『人間』学に依存する。そのわけは、これらの学が人間の管轄下にあって、人間の力能・機能によって真偽を判断されるからである。もし我々が人間知性の広さと力とを隈なく識り、推理に当って用いる観念やその際営む作用の本性を解明し得たとすれば、いかほどこれらの学が変化し進化するか、これを語ることは到底できない。
(同訳書、第一分冊、p.21)
これから読まれる向きには、原書として——
★David Hume, A Treatise of Human Nature: Being an Attempt to Introduce the Experimental Method of Reasoning into Moral Subjects(David Fate Norton + Mary J. Norton ed., Oxford Philosophical Texts, 2000, amazon.co.jp)
をお薦めします*1。
この翻訳はそれとして(十分有用なわけですが)、そろそろ新しい完訳が刊行されてもよい時期かもしれません*2。
また、今回の復刊書目では、レッシングの『賢者ナータン』、ゴーゴリ『ディカーニカ近郷夜話』なども要刮目です。岩波文庫のゴーゴリ作品では、『死せる魂』(重版)、『外套・鼻』(改版)なども刊行されるようです。
刊行は、2006年2月23日予定。詳しい書目は以下のリンクでどうぞ。
⇒岩波書店 > 2006年2月復刊
http://www.iwanami.co.jp/fukkan/index.html
*1:amazon.co.jpのレヴューで「あまりにも親切過ぎるその姿勢が非教育的なので星四つです」というのがご愛嬌。
*2:法政大学出版局から刊行中の翻訳は、訳業自体はありがたいのだけれど、とてもリーズナブルとは言い難い価格設定なのです。