蒐書録#032:辻山良雄『365日のほん』

★辻山良雄『365日のほん』(河出書房新社、2017/11)

東京は荻窪の本屋さん「Title」の店主、辻山良雄さんによる楽しい本の本。 

 

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(写真1.表紙。イラストは中山信一さん、デザインは漆原悠一さん(tento))

 

辻山さんは、Titleの開店(2016年1月)以来、ウェブサイトの「毎日のほん」というコーナーで1冊の本を紹介しておられます。twitterでもこんなふうに。

 

ご覧ように、紹介文は一目で読めるくらいの長さでありながら、その本の勘所をとらえて読みたい気持ちをそそります。

ウェブの軽やかなデザインもあいまって、とても気軽に何気なくやっているように見えるかもしれません。でも、自分でやるとなったらとっても大変なことだと想像しています。

長年リブロにお勤めになって、それはたくさんの本を手と目にし、お客さんに手渡していた目利きの辻山さんだからこそできることです。

 

このたび刊行された『365日のほん』は、そんな「毎日のほん」を集めて1冊にしたものなのかな、と思っていたらそうではなくて、書き下ろしとのこと!

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(写真2.10個の分類)

とりあげられる本は、それぞれが「考える本」「社会の本」「くらし・生活」「子どものための本」「ことば、本の本」「文学・随筆」「旅する本」「自然の本」「アート」「漫画」という10種類のアイコンで表現されています。ものによっては、1冊の本に二つのアイコンがついている場合も。

 

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(写真3.『文体の科学』のようなややこしい本も辻山さんにかかればこの通り)

上でもちょっぴり述べましたが、本を手短に紹介するのは、実はそんなに簡単なことではありませぬ。しかも、内容を的確にとらえるのはもちろんのこと、自分の等身大の言葉で、実感を交えて語るとあってはなおのこと。

穏やかに本について語る辻山さんの文章に触れていると、お茶をいれてほっと一息つくような気分にもなります。

本は、春から始まって冬へと並べられていますが、もちろんどこから読んでも楽しめます。

 

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(写真3.巻末についている本の索引)

 

そうそう、11月25日から12月24日まで、「365日のほん展」と題して、同書で紹介した本がTitleに揃うようですよ。

 

 

 

『文学問題(F+f)+』予約の締切とブックフェア開催予定について

ご機嫌いかがお過ごしでしょうか。

わたくしが住む辺りは、この数日で急に寒くなりまして、キーボードを打つ指がかじかむようになりました。

さて、何度も同じようなお知らせをして恐縮ですが、『文学問題(F+f)+』(幻戯書房)がそろそろ書店にも並びます。早ければ11月24日くらいからご覧いただけるかもしれません。今回はおそらく文芸書や批評書などが並ぶ棚に置かれるかと思います。

 

ご予約いただいた方には22日から届き始めているようです。

twitterでお見かけしたつぶやきをいくつかご紹介してみます。

(気恥ずかしさをぐっとこらえて)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数年前と違って、多くの人が写真も添えるケースが増えたなあと思います。

そういえば、写真をあまり撮らなかった私でさえも、iPad Proを使い始めてから、少し写真を撮る習慣ができました(下手もいいところなんですけれどね)。

 

さて、その予約についてのお知らせです。

予約特典のお申し込みは、2017年11月24日24:00で締切となります。

幻戯書房にメールか電話でお申し込みいただきますと、本とともに特典の小冊子『メイキング・オブ・『文学問題(F+f)+』』(32ページ)をお送りいたします。

詳しくは下記リンク先の「幻戯書房NEWS」をご覧くださいませ。


それから、もう一つ新しいお知らせがございます。

『文学問題(F+f)+』の刊行を記念して、三つの書店でブックフェア「文学とは感情のハッキングである」が開催される予定です。

★MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店

★青山ブックセンター六本木店

★ブックファースト新宿店

漱石の『文学論』の隣に並べて読むといっそう楽しめる本を多方面から約30冊選んでみました。いわゆる文学に関わる本だけでなく、TRPG(ロールプレイングゲーム)のルールブックや『幻の惑星ヴァルカン』(亜紀書房)のような科学書なども入れてあります。その組み合わせもお楽しみいただけたら幸いです。

また、簡単なものではありますが、ブックフェア用のリーフレットも作成しました。無料で配布しておりますので、ぜひお立ち寄りください。(数に限りがありますのでお早めにどうぞ)

なお、選書内容は三つのお店それぞれで少しずつアレンジしてあります。その違いはリーフレットにも反映されておりますので、ご興味のある方はそれぞれのお店を訪れるとちょっと楽しいかもしれません。

 

『文学問題(F+f)+』の内容やページ見本については、下記の記事に書きましたのでご覧あれ。どうぞよろしくお願い申し上げます。

単著のあゆみ

書いている当人以外の人にはどちらでもよいシリーズ、今回は「単著のあゆみ」をお送りします。(え? 毎回どちらでもよい話しかしてないじゃないかですって? あはは)

 

今回の『文学問題(F+f)+』(幻戯書房)は、単著として6冊目です。

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(写真1.右から左へ向かって新しいもの)

 

6冊の書誌は次のとおりです。

★『デバッグではじめるCプログラミング』(翔泳社、2008)

★『コンピュータのひみつ』(朝日出版、2010)

★『文体の科学』(新潮社、2014)

★『世界が変わるプログラム入門』(ちくまプリマ-新書、筑摩書房、2015)

★『「百学連環」を読む』(三省堂、2016)

★『文学問題(F+f)+』(幻戯書房、2017)

 

こうして並べてみると、半分はコンピュータとプログラムの本。残り半分は人文系の本ですね。コンピュータのほうは解説する本。人文系は読み解く本という感じでしょうか。

また、プログラムの本にしても、文体や「百学連環」や『文学論』を読み解く本にしても、どうやら結果ではなく物事の過程や構造について考えたり書いたりするのが好きなようです。

 

目下は来年以降に刊行する予定の単著、共著、共訳書の準備を進めております。

引き続き、物事を理解したり、楽しんだりするきっかけや手助けとなるような本をこしらえて参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

以上、だからなんだってなエントリーでした。

(以下、書影を並べます)

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『文学問題(F+f)+』(幻戯書房)の内容と予約特典のご案内

こんにちは。ご機嫌いかがでしょうか。

ここで何度かお伝えして参りました『文学問題(F+f)+』(幻戯書房)が刊行となります。今回は、書影とともに中味をチラリとお見せしたいと思います。

 

まずはカヴァーをご覧ください。

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(写真1.カヴァー)

ブックデザインは小沼宏之さん、編集は中村健太郎さんです。

592ページの厚さのおかげで(!)、背にも書名を横書きできます。

背にうっすらと文字が浮かび上がっているのをご覧いただけるでしょうか。

 

表紙を、正面から撮影するとこのように見えます。 

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(写真2.表紙)

帯には謎の図も(正体は、本文中で解説しています)。

 

もう少し近づくと……

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(写真3.表紙のアップ)

ほら、光と影で文章が。

 

裏表紙はこんな具合。帯にはもう一つ謎の図が。

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(写真4.裏表紙)

 

では、中を見てみましょう。

まず、目次です。いうなれば本の地図ですね。

画像をクリック(タップ)すると、もう少し大きく表示されて、お読みいただけると思います。

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(写真5.目次1/3)

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(写真6.目次2/3)

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(写真7.目次3/3と「第I部使い方」)

ご覧のように全3部からなります。

はじめに、第I部では、漱石による二つの文学論『英文学形式論』と『文学論』の全体から重要な部分を抜粋して、原文に現代語訳と解説を添えています。

第II部は、「『文学論』で読む世界文学」と題して、古今東西の文学作品から選んだ10の作品を読解。

第III部は、漱石による様々な文学論、漱石以外による文学理論を検討して、漱石の『文学論』に不足がないかを確認し、その上で最後に「来たるべき『文学論』」の構想を提示しております。

また、写真7の左ページから、各部の使い方を説明してあります。

ちょっと手の込んだレイアウトであることがお分かりいただけるかと思います。

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(図8.「第II部の使い方」「第III部の使い方」)

こんなふうに部ごとに内容に応じた組み方を工夫しています。

ここだけ見ると、なんの本だろう? という印象もおありかもしれません。

 

次はいよいよ本文です。

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(図9.第I部内容見本)

これは第I部「漱石の文学論を読む」のページ。

右ページ中央あたりの見出しに続いて、033、034、035と番号が振られています。

これは漱石の『文学論』から精選した要点となる文章それぞれを一塊として番号を振ったものです。『英文学形式論』と『文学論』あわせて144のパーツで捉えています。これを読めば、この二つの本に何が書いてあるかを把握できるという意図です。

 

番号の直下には、まず現代語訳をお示ししました。

それに続いて天地に線の引かれた部分が対応する原文です。

また、下段には「注釈」や「文献」や「問い」をつけて、その箇所の理解を助けたり、他の本や概念へのリンクを示しています。

左ページの下には、帯で見かけた図がありますね。

 

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(図10.第II部内容見本)

お次は第II部「『文学論』で読む世界文学」です。

10とりあげた作品のうち、7つ目はジェイムズ・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』です。

ここではまず読解する作品の文章(訳文)をお示しして、それに続いて何がどのように書いてあるかを読解します。また、下段では漱石による文学論のレンズで読むとどうなるかについても解説しています。

 

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(図11.第III部内容見本)

第III部は「来たるべき『文学論』へ向けて」と題して、漱石の文学論をどうしたらヴァージョンアップできるかという課題に取り組んでいます。

この第III部では、漱石の文学論を土台として、文学と呼ばれてきた人間の営みを捉えるためにあれこれ検討を加えております。図も多用しています。

以上、本文でした。ここまでで531ページあります。

 

続いて終わりに、巻末の附録についてもご紹介しましょう。

全部で三つの附録がついています。

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(図12.附録1見本)

附録その1は、「『文学論』――110年の読解史」と題して、『文学論』が刊行された1907年から2017年まで、『文学論』がどのように読まれてきたのかを年表の形でまとめたものです。『文学問題(F+f)+』を書くあいだ集めた『文学論』へコメントした文献の数々を40ページ弱にわたって並べてみました。同書をどう評価したかが分かる文献からは、当該箇所を引用してあります。この附録を読むと、『文学論』がいかに毀誉褒貶にさらされてきた本であるかが痛いほどよく分かります。みんな、ほんとに同じ本を読んだの!? と言いたくなる年表です。

 

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(図13.附録2見本)

附録2は「『文学論』以後の一般文学論の動き」です。

漱石の『文学論』(1907)以後、2017年までの110年ほどのあいだにいろいろな人が提示した一般文学論にどのようなものがあったかをまとめてみました。

一般文学論というのは、文学なるものをできるだけ一般的な形で捉えようとする試みを指しています。つまり、古今東西の文学作品をまとめて説明してみようという猛者たちの記録です。

 

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(図14.附録3見本)

そして最後に附録3は「文学を考え続けるためのブックガイド」と題して、本書『文学問題(F+f)+』の延長上でさらに文学について考えてみたい人のために、私が目を通したなかから有益であると思う文献を選んでご紹介しています。

 

――本文の注釈でも関連文献をお示ししていますが、この三つの附録と合わせると、文学問題について考えるためのヒントとリンクが手に入る、という趣向なのでした。

 

以上、『文学問題(F+f)+』の中味をチラリとご紹介しました。

 

さて、刊行が近づいて参りました。

以前ここでもお知らせしたように、本書を幻戯書房でご予約いただくと、本とともに予約特典の小冊子「メイキング・オブ・『文学問題(F+f)+』」(32ページ、図版多数)を進呈いたします。

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今回の『文学問題(F+f)+』という本を、山本がどのようにつくったのか、その過程を恥ずかしながらお目にかけようという内容です。

『文学論』をどう読んだのか、この本のもとになるメモや原稿をどう書いたのか、普段本をどのように集めたり読んだりしているのかといったことを述べた2万字ほどの小文です。ノートのページの写真なども掲載しております。

ものを読んだり考えたり書いたりすることにご関心のある向きには、ちょっと興味があるかもしれない予約特典です。

 

――というわけで、もうすぐ締切となります予約をご検討いただければ幸いです。

ご予約は、下記「幻戯書房NEWS」に書かれている幻戯書房のメールアドレスか電話番号までご連絡くださいませ。

 

 

なお、予約特典は下記の書店でも承っております。

MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店

代官山蔦屋書店

BOOKS隆文堂

 

どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

ブックフェアなども予定されております。

これについては、また近々お知らせしたいと思います。

加島卓&山本貴光「エンブレム問題から考えるデザインの過去と未来」

★加島卓&山本貴光「エンブレム問題から考えるデザインの過去と未来」

 

2017年12月20日(水)の夜に神楽坂モノガタリにて、加島卓さんと対談いたします。

加島さんの新著『オリンピック・デザイン・マーケティング』(河出書房新社)の刊行を記念してのイヴェントです。

個人的にも各方面の仕事を通じて、デザインやマーケティングについて考えさせられることが多い昨今でした。この機会に加島さんに根掘り葉掘り、いろいろお話を伺おうと思います。

 


「マルジナリアでつかまえて」第3回

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『本の雑誌』通巻414号2017年12月号「特集=人生は「詩」である!」が出ました。

今月号は、いつものこわいうさぎおじさんのようなものが表紙ではないのですネ。

拙連載「マルジナリアでつかまえて」の第3回も掲載されております。

前回に続いて漱石先生のマルジナリアについて。驚愕のエピソードから始まっております。

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B&Bでの二つのトーク・イヴェントに登壇します

12月、二つのイヴェントに登壇いたします。

いずれもB&B(下北沢)です。

 

*2017/11/13追記:12月09日のイヴェントの曜日を間違えて「木」としておりました。正しくは「土」でございます。訂正しました。

 

★12月09日(土)

久保田晃弘×大林寛×山本貴光「因果の再編集のためのデザイン」

 

『エクリ叢書Ⅰ―デザインの思想、その転回』(オーバーキャスト)という本が刊行されました。これは大林寛さんが編集長を務めるウェブサイト「ÉKRITS」に掲載された文章を本に編んだものです。

私も以前、「記憶のデザインのために――来たるべき知識環境の構想」という文章を寄稿しました。今回の本にも収録していただいたところです。

この本の刊行を記念したトークイヴェントに登壇します。

デザイン、記憶、インターフェイス、経験など、気になっていることについて久保田さん、大林さんと検討する所存です。

 


★12月15日(金)

神田桂一×菊池良×仲俣暁生×山本貴光「なぜ『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』は10万部も売れたのか?」


『もし文豪たちがカップ焼きそばの 作り方を書いたら 青のりMAX』(宝島社)の刊行を記念したトークイヴェントです。

前作刊行時に、著者お二人、仲俣暁生さんと私というメンバーで、やはりB&Bにてトークをしました。

今回は、どうやったらお二人のような文体模写をできるのか、その場で具体的に参加者のみなさんとともにとりくんでみたりもしたいと念じております。