蒐書録#015:川上未映子責任編集『早稲田文学増刊 女性号』

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★芥川龍之介+谷崎潤一郎『文芸的、余りに文芸的な|饒舌録ほか』(千葉俊二編、講談社文芸文庫、講談社、2017/09)

 芥川と谷崎の論争にかんする文章を集めた本。こういう企画もありがたい。複数の人があちこちの雑誌などで意見を戦わせるような場合、これを後から追跡するのは存外大変だったりします。もっともそうして当時の雑誌を丸ごと眺めることでこそ目に入ることもあるので、本当に必要な場合には手を抜かずに現物に見たほうがよいわけですが。それとは別に、本書のような工夫も助かります。

 

★西田耕三『啓蒙の江戸――江戸思想がよびおこすもの』(ぺりかん社、2017/09)

 書を読んで甚解を求めずといえば、徹底的に理解しようとしないという悪い意味もあるけれど、本書で説かれるように、過度の分析によってかえって対象を掴み損なうという場合があるのも弁えておきたいものです。とは、自分がともすると細かくやりすぎてしまうので。

 

★師岡カリーマ・エルサムニー『これなら覚えられる!アラビア語単語帳』(NHK出版、2012/02)

 東京堂書店の特集コーナーで遭遇。語学の本は見かけるとつい買ってしまうのでした。

 

★川上未映子責任編集『早稲田文学増刊 女性号』(発行=早稲田文学会/発売=筑摩書房、2017/09)

 「「どうせそんなものだろう」、そう言ってあなたに蓋をしようとする人たちに、そして「まだそんなことを言っているのか」と笑いながら、あなたから背を向ける人たちに、どうか「これは一度きりのわたしの人生の、ほんとうの問題なのだ」と表明する勇気を。それが本当のところはいったいなんであるのかがついぞわからない仕組みになっている一度きりの「生」や「死」とおなじように、まだ誰にも知られていない「女性」があるはず。まだ語られていない「女性」があるはず。そして、言葉や物語が掬ってこなかった/こられなかった、声を発することもできずに生きている/生きてきた「女性」がいる。そしてそれらは同時に、「語られることのなかった、女性以外のものやできごと」を照らします。」(川上未映子「巻頭言」より) いま正気を保つためにも、こうした試みが必要だと痛感します。