ジャック・メルロ=ポンティ「アンペールの『諸学の哲学についての試論』」

アンペールの『諸学の哲学についての試論』(Essai sur la philosophie des sciences)について調べているうちに遭遇したサイトと論文。

 

ジャック・メルロ=ポンティ「アンペールの『諸学の哲学についての試論』」(『科学史誌』第30巻第02号、1977)

Jacques Merleau-Ponty, L'Essai sur la philosophie des sciences d'Ampère (Revue d'histoire des sciences, Volume 30, Numéro 2, 1977, pp.113-118)

http://www.persee.fr/doc/rhs_0151-4105_1977_num_30_2_1474

 

ジャック・メルロ=ポンティは、モーリス・メルロ=ポンティのいとこなのね。

⇒wikipedia > Jacques Merleau-Ponty(仏語版)
 https://fr.wikipedia.org/wiki/Jacques_Merleau-Ponty

 

『週刊読書人』ウェブサイトのリニューアル

書評新聞の『週刊読書人』がウェブサイトをリニューアルしました。

ただのリニューアルではなく、同紙に掲載した記事をすべて無料で公開するようです。

まずは広く知ってもらうための試みとのこと。

ウェブで無料公開したら、有料の新聞そのものが売れなくなるのではないかとの見方もあろうかと思います。どうなるかは見守りたいところであります。

これは『読書人』についてではありませんが、私の場合、ウェブ上で公開されていて無料で読めるものでも、腰を据えて読みたいと思ったら、結局本や雑誌を買うことが少なくありません。そうはいっても、限られた紙束にまとまっている便利さがあり、いまのところその便利さはコンピュータで読むのとは別のものだからです。

他方でデジタル版は、バックナンバーをいつでも参照できるのがたいそう便利ですね。

今回の『読書人』のように紙とデジタルと、両方で提供してもらえるのは読者としてありがたい限りです。残る課題は、この状態を継続していただくためにも、デジタル版がなんらかの形で収益につながるしくみをつくることでしょうか。

 

――というわけで、先だって掲載された外山滋比古さんへのロングインタヴューもウェブでお読みいただけます。 

⇒週刊読書人 > 生きた知識、生きるための思考(外山滋比古ロングインタビュー)

 http://dokushojin.com/article.html?i=667

  

また、私が寄稿した書評、大澤聡さんが拙著『「百学連環」を読む』(三省堂)について書いてくださった書評も同様にウェブでお読みいただけます。

⇒週刊読書人 > 人物 > 山本貴光

 http://dokushojin.com/person.html?i=398

 

dokushojin.com

「百学連環と西周の哲学思想」

2017年02月19日(日)に、文京区立本郷図書館特別講演会「百学連環と西周の哲学思想」が開催されます。

要申し込みで、予約は1月20日(金)午前9時から受け付けとのこと。

(下のポスターには「1月20日(木)」とありますが、同図書館のお知らせに「1月20日(金)」と書かれておりました)

講師:張厚泉氏(上海東華大学教授)

コメンテーター:樺山紘一氏(印刷博物館館長)

日時:平成29年2月19日(日)午後2時より

※要申し込み 

f:id:yakumoizuru:20170118181316j:plain

 

文京区立本郷図書館 > 同イヴェントのお知らせ
 https://www.lib.city.bunkyo.tokyo.jp/opw/OPW/OPWNEWS.CSP?PID=OPWNEWSLIST&DB=LIB&MODE=1&LIB=&TKAN=ALL&CLASS=1&IDNO=101970

出典探索 アインシュタインの言葉

アルバート・アインシュタインの言葉に「宇宙について最も理解しがたいことは、それが理解可能だということである」というのがある。よく引用されるので、どこかで目や耳にしたことがおありかもしれない。

先日、原稿を書いている際に、この言葉がぴったりくるのでわたくしも引用しようと思ったことがあった。草稿では、よく調べないまま上記のように書いておいた。後で出典を確認する心算。

原稿をあらかた書き終えて、やはりこの引用を残そうと思ったので、原文の確認にとりかかる。

ネットで検索すると、こんな英文が出てくる。

The most incomprehensible thing about the universe is that it is comprehensible.

なるほど、これを訳せば「宇宙について最も理解しがたいことは、それが理解可能だということである」となる。これには別のヴァージョンもあって、universeの代わりにworldと書かれたものも見かける。

ただし、これらの文章を掲載するサイトのほとんどには出典が記されていない。だから本当にアインシュタインが述べた言葉なのかどうか、これだけでは不明である。

 

そこで出典を調べることにした。

上記の英文をgoogleで検索すると189000件がヒットする。

そのなかにこの英文の出所を示したサイトがあった。そこにはこう書いてある。

"The most incomprehensible thing about the universe is that it is comprehensible" from "Physics and Reality"(1936), in Ideas and Opinions, trans. Sonja Bargmann (New York: Bonanza, 1954), p292.

http://hyperphysics.phy-astr.gsu.edu/Nave-html/Faithpathh/Einstein.html より)

つまり、この言葉は"Pysics and Reality"という1936年の文章に出ているという次第。この文章はIdeas and Opinionsという本に入っており、それはSonja Bargmannが訳したもので、Bonanzaという版元から1954年に刊行されたというわけである。ページ数も書いてあり、たいへんありがたい。

さて、というのでこの本を見てみた。292ページにこうある。

One may say "the eternal mystery of the world is its comprehensibility." It is one of the great realizations of Immanuel Kant that the postulation of a real external world would be senseless without this comprehensibility.

 (Ideas and Opinions, p. 292から。下線は山本)

上で見た文章とはだいぶ違っているが、意味するところは同じといってよいだろう。訳せば「世界について永遠の謎は、それが理解可能であることだ」となろうか。先の引用では「宇宙(universe)」となっていたが、この本では「世界(world)」とある。しかも、これはカントの顰みにならってのことのようだ。

 

これで一応、英語での出典らしきものは目にした。しかし、この本は英訳であり、元はおそらくドイツ語で書かれたものだろう。

というのでPysics and Realityという文章そのものの出所を見てみる。

この英訳本にこうある。

From The Journal of the Franklin Institute, Vol. 221, No. 3. March,1936.

つまりThe Journal of the Franklin Instituteという雑誌に掲載された文章というわけで、探すべきはこの雑誌のこの号だ。

誌名と号数で検索すると、電子論文アーカイヴがヒットする。まことに便利な世の中だ。ありがたい。

www.sciencedirect.com

これはScienceDirect.comというサイトで、昨今学術界を賑わせているエルゼビア社(Elsevier)が運営する電子論文アーカイヴ・サーヴィス。

確かにお目当てのアインシュタインの論文Physik und realitätがある。ただし、この論文のPDFは$35.95とのこと(この論文が掲載された雑誌1冊の値段ではなく、論文1本の値段)。

他で読めない場合はここに戻ってくることにして、さらに探すと見つかった

先ほど見た英訳の元となったくだりはこんな具合。

Man kann sagen: Das ewig Unbegreifliche an der Welt ist ihre Begreiflichkeit. Dass die Setzung einer realen Aussenwelt ohne jene Begreiflichkeit sinnlos wäre, ist eine der grossen Erkenntnisse Immanuel Kants.

The Journal of the Franklin Institute, Vol. 221, No. 3. March,1936, S. 315から。下線は山本)

なるほど、たしかに「世界について永久に理解できないことは、世界が理解できるということだ」と書いてある。

――というわけで、これで一件落着。しかるべき語で検索さえすれば、こんなふうに目指す資料を読めるわけである(もちろんネット上にある場合に限るけど)。

以上、調べ物の一例でした。

 

Ideas And Opinions

Ideas And Opinions

 

 

「人文的、あまりに人文的」第9回

吉川浩満くんとの連載書評対談「人文的、あまりに人文的」の第9回を東浩紀編『ゲンロンβ10』に寄稿しました。

今回は荒木優太さん『これからのエリック・ホッファーのために――在野研究者の生と心得』(東京書籍)と、互盛央さんの『日本国民であるために』(新潮選書)について話しています。

『ゲンロンβ10』は「うごめく「もの」に目を凝らす」という特集。

観(光)客公共論 東浩紀/もの派と土木 黒瀬陽平/『劇場版 艦これ』論 渡邉大輔/ラップ・ジェスチャー論 吉田雅史/福島の観客 小松理虔/山本貴光×吉川浩満/批評再生塾/総会フォトレポート

 

genron-tomonokai.com

 

これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得

これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得

 

  

日本国民であるために: 民主主義を考える四つの問い (新潮選書)

日本国民であるために: 民主主義を考える四つの問い (新潮選書)

 

 

「紀伊國屋じんぶん大賞2017――読者と選ぶ人文書ベスト30」

「紀伊國屋じんぶん大賞2017――読者と選ぶ人文書ベスト30」が決まったとのことです。

 

これは、読者からの投票によってその年に刊行された人文書からベスト30を選ぶというイヴェントであります。

 

昨年は、岸政彦さん『断片的なものの社会学』(朝日出版社)が1位に選ばれました。(岸さんは芥川賞候補に選ばれておりますね)

 

今年は、加藤陽子さん『戦争まで――歴史を決めた交渉と日本の失敗』(朝日出版社)が見事1位となりました。加藤先生、おめでとうございます!

 

岸さんの本と加藤さんの本は、いずれも朝日出版社第二編集部が手がけたものです。それぞれ大槻美和さん鈴木久仁子さんがご担当。

 

じんぶん大賞2016については、斎藤哲也さん、吉川浩満くんとともに、じんぶん大賞のプレイベントで「「じんぶん」のモンダイを語る」と題して鼎談をしました。その際、控え室でその年のじんぶん大賞はなにになるかなと3人で予想した結果、満場一致で岸さんの本でしょうという見立てになりました。

 

また、今回のじんぶん対象2017については、やはり上記の3人で行ったゲンロンカフェの鼎談「『人文的、あまりに人文的』な、2016年人文書めった斬り!」で、加藤陽子先生の『戦争まで』が1位になると予想したのでした。

 

というわけで、2年連続で1位を当てたわけですが、こうなってくると来年も当てねばならないという気持ちになってくるから不思議です(誰にも頼まれていませんが!)。

 

あ、そうそう、拙著『「百学連環」を読む』(三省堂)も20位に選んでいただきました。投票してくださったみなさま、ありがとうございました!

 

なお、紀伊國屋書店では、2月10日からじんぶん大賞にかんするブックフェアを開催する予定とのこと。「加藤陽子氏の大賞受賞コメントならびに読者からの推薦コメントを掲載した小冊子を店頭にて無料配布いたします」(紀伊國屋書店ウェブサイトより)というわけで、楽しみにしたいと思います。

 

www.kinokuniya.co.jp

yakumoizuru.hatenadiary.jp

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