「切れ切れの意識でデジタルゲームの儚さについて考える十の断章」

『ユリイカ』2017年02月号「特集=ソーシャルゲームの現在――『PokémonGo』のその先」(青土社)にエッセイを寄稿しました。

「切れ切れの意識でデジタルゲームの儚さについて考える十の断章」と題して、デジタルゲームについて切れ切れに(切れ気味に、ではありません)書いております。ご笑覧いただけたら幸いです。

 

2005年以来『ユリイカ』への15回目の登場となりました。

01:「人文系ブログ案内」(山本貴光+吉川浩満、2005年04月号「ブログ作法 あるいはweblog戦記」)

02:「投壜通信年代記――思想誌クロニクル1968-2005」(2005年08月号「雑誌の黄金時代――紙上で見た夢」)

03:「アンケート」(2005年11月号「文化系女子カタログ」)

04:「含羞の野蛮ポップ――野坂作品の二つの骨法」(2005年12月号「野坂昭如」)

05:「ゲームへの寄与――任天堂のスピリット・オブ・ワンダー」(2006年06月号「任天堂」)

06:「作る・遊ぶ・語る――叢書『All about Video Games』について」(2006年9月号「理想の教科書」)

07:「計算論的、足穂的――タルホ・エンジン仕様書」(2006年09月臨時増刊号「稲垣足穂」)

08:「存在と文字――白川静における「ロゴス」」(2010年01月号「白川静――一〇〇歳から始める漢字」)

09:「『失われた近代を求めてI――言文一致体の誕生』解題」(2010年06月号「橋本治――『桃尻娘』から『リア家の人々』まで…無限遠の小説家」)

10:「この辞書を見よ!20――言葉のアーカイヴ形成史」(2012年02月号「辞書の世界」)

11:「遊びを知り、知で遊ぶ――山口昌男、遊びの骨法」(2013年06月号「山口昌男――道化・王権・敗者」)

12:「山口昌男主要著作目録+重要著作解題」(同号)

13:「すべてがFである」(2014年11月号「森博嗣――『すべてがFになる』『スカイ・クロラ』から『MORI LOG ACADEMY』まで…クラフトマンの機知」)

14:「メールインタヴュー」(同号)

15:「切れ切れの意識でデジタルゲームの儚さについて考える十の断章」(2017年02月号「ソーシャルゲームの現在――『PokémonGo』のその先」)

 

ユリイカ 2017年2月号 特集=ソーシャルゲームの現在 ―『Pokémon GO』のその先―

ユリイカ 2017年2月号 特集=ソーシャルゲームの現在 ―『Pokémon GO』のその先―

  • 作者: 米光一成,渡邊恵太,磯光雄,稲見昌彦,コザキユースケ
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2017/01/27
  • メディア: ムック
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「楽天市場の「絶望的な使いにくさ」に隠された意図――深読みウェブ散歩」

講談社のウェブサイト「現代ビジネス」に寄稿しました。

編集部につけていただいたタイトルは、「楽天市場の「絶望的な使いにくさ」に隠された意図〜深読みウェブ散歩」

少々カタく申せば、ウェブ批評の試みです。

これまで、デジタルゲームをつくったり、つくり方を教育するなかで、画面や操作をどう設計するかということについて、あれこれ考えてきました。

そういう眼と頭でウェブサイトを眺めると、どんなことが見えてくるだろうか。そんなつもりで書いてみた文章です。

お楽しみいただければこれ幸い。

つぎはあなたのウェブサイトにもお邪魔します(嘘)。

でも、普段よく使っている書店や辞書のサイトについては、冗談抜きにこうした批評を施してみたいな、とこの文章を書いてみて思いました。

 

gendai.ismedia.jp

ジャック・メルロ=ポンティ「アンペールの『諸学の哲学についての試論』」

アンペールの『諸学の哲学についての試論』(Essai sur la philosophie des sciences)について調べているうちに遭遇したサイトと論文。

 

ジャック・メルロ=ポンティ「アンペールの『諸学の哲学についての試論』」(『科学史誌』第30巻第02号、1977)

Jacques Merleau-Ponty, L'Essai sur la philosophie des sciences d'Ampère (Revue d'histoire des sciences, Volume 30, Numéro 2, 1977, pp.113-118)

http://www.persee.fr/doc/rhs_0151-4105_1977_num_30_2_1474

 

ジャック・メルロ=ポンティは、モーリス・メルロ=ポンティのいとこなのね。

⇒wikipedia > Jacques Merleau-Ponty(仏語版)
 https://fr.wikipedia.org/wiki/Jacques_Merleau-Ponty

 

『週刊読書人』ウェブサイトのリニューアル

書評新聞の『週刊読書人』がウェブサイトをリニューアルしました。

ただのリニューアルではなく、同紙に掲載した記事をすべて無料で公開するようです。

まずは広く知ってもらうための試みとのこと。

ウェブで無料公開したら、有料の新聞そのものが売れなくなるのではないかとの見方もあろうかと思います。どうなるかは見守りたいところであります。

これは『読書人』についてではありませんが、私の場合、ウェブ上で公開されていて無料で読めるものでも、腰を据えて読みたいと思ったら、結局本や雑誌を買うことが少なくありません。そうはいっても、限られた紙束にまとまっている便利さがあり、いまのところその便利さはコンピュータで読むのとは別のものだからです。

他方でデジタル版は、バックナンバーをいつでも参照できるのがたいそう便利ですね。

今回の『読書人』のように紙とデジタルと、両方で提供してもらえるのは読者としてありがたい限りです。残る課題は、この状態を継続していただくためにも、デジタル版がなんらかの形で収益につながるしくみをつくることでしょうか。

 

――というわけで、先だって掲載された外山滋比古さんへのロングインタヴューもウェブでお読みいただけます。 

⇒週刊読書人 > 生きた知識、生きるための思考(外山滋比古ロングインタビュー)

 http://dokushojin.com/article.html?i=667

  

また、私が寄稿した書評、大澤聡さんが拙著『「百学連環」を読む』(三省堂)について書いてくださった書評も同様にウェブでお読みいただけます。

⇒週刊読書人 > 人物 > 山本貴光

 http://dokushojin.com/person.html?i=398

 

dokushojin.com

「百学連環と西周の哲学思想」

2017年02月19日(日)に、文京区立本郷図書館特別講演会「百学連環と西周の哲学思想」が開催されます。

要申し込みで、予約は1月20日(金)午前9時から受け付けとのこと。

(下のポスターには「1月20日(木)」とありますが、同図書館のお知らせに「1月20日(金)」と書かれておりました)

講師:張厚泉氏(上海東華大学教授)

コメンテーター:樺山紘一氏(印刷博物館館長)

日時:平成29年2月19日(日)午後2時より

※要申し込み 

f:id:yakumoizuru:20170118181316j:plain

 

文京区立本郷図書館 > 同イヴェントのお知らせ
 https://www.lib.city.bunkyo.tokyo.jp/opw/OPW/OPWNEWS.CSP?PID=OPWNEWSLIST&DB=LIB&MODE=1&LIB=&TKAN=ALL&CLASS=1&IDNO=101970

出典探索 アインシュタインの言葉

アルバート・アインシュタインの言葉に「宇宙について最も理解しがたいことは、それが理解可能だということである」というのがある。よく引用されるので、どこかで目や耳にしたことがおありかもしれない。

先日、原稿を書いている際に、この言葉がぴったりくるのでわたくしも引用しようと思ったことがあった。草稿では、よく調べないまま上記のように書いておいた。後で出典を確認する心算。

原稿をあらかた書き終えて、やはりこの引用を残そうと思ったので、原文の確認にとりかかる。

ネットで検索すると、こんな英文が出てくる。

The most incomprehensible thing about the universe is that it is comprehensible.

なるほど、これを訳せば「宇宙について最も理解しがたいことは、それが理解可能だということである」となる。これには別のヴァージョンもあって、universeの代わりにworldと書かれたものも見かける。

ただし、これらの文章を掲載するサイトのほとんどには出典が記されていない。だから本当にアインシュタインが述べた言葉なのかどうか、これだけでは不明である。

 

そこで出典を調べることにした。

上記の英文をgoogleで検索すると189000件がヒットする。

そのなかにこの英文の出所を示したサイトがあった。そこにはこう書いてある。

"The most incomprehensible thing about the universe is that it is comprehensible" from "Physics and Reality"(1936), in Ideas and Opinions, trans. Sonja Bargmann (New York: Bonanza, 1954), p292.

http://hyperphysics.phy-astr.gsu.edu/Nave-html/Faithpathh/Einstein.html より)

つまり、この言葉は"Pysics and Reality"という1936年の文章に出ているという次第。この文章はIdeas and Opinionsという本に入っており、それはSonja Bargmannが訳したもので、Bonanzaという版元から1954年に刊行されたというわけである。ページ数も書いてあり、たいへんありがたい。

さて、というのでこの本を見てみた。292ページにこうある。

One may say "the eternal mystery of the world is its comprehensibility." It is one of the great realizations of Immanuel Kant that the postulation of a real external world would be senseless without this comprehensibility.

 (Ideas and Opinions, p. 292から。下線は山本)

上で見た文章とはだいぶ違っているが、意味するところは同じといってよいだろう。訳せば「世界について永遠の謎は、それが理解可能であることだ」となろうか。先の引用では「宇宙(universe)」となっていたが、この本では「世界(world)」とある。しかも、これはカントの顰みにならってのことのようだ。

 

これで一応、英語での出典らしきものは目にした。しかし、この本は英訳であり、元はおそらくドイツ語で書かれたものだろう。

というのでPysics and Realityという文章そのものの出所を見てみる。

この英訳本にこうある。

From The Journal of the Franklin Institute, Vol. 221, No. 3. March,1936.

つまりThe Journal of the Franklin Instituteという雑誌に掲載された文章というわけで、探すべきはこの雑誌のこの号だ。

誌名と号数で検索すると、電子論文アーカイヴがヒットする。まことに便利な世の中だ。ありがたい。

www.sciencedirect.com

これはScienceDirect.comというサイトで、昨今学術界を賑わせているエルゼビア社(Elsevier)が運営する電子論文アーカイヴ・サーヴィス。

確かにお目当てのアインシュタインの論文Physik und realitätがある。ただし、この論文のPDFは$35.95とのこと(この論文が掲載された雑誌1冊の値段ではなく、論文1本の値段)。

他で読めない場合はここに戻ってくることにして、さらに探すと見つかった

先ほど見た英訳の元となったくだりはこんな具合。

Man kann sagen: Das ewig Unbegreifliche an der Welt ist ihre Begreiflichkeit. Dass die Setzung einer realen Aussenwelt ohne jene Begreiflichkeit sinnlos wäre, ist eine der grossen Erkenntnisse Immanuel Kants.

The Journal of the Franklin Institute, Vol. 221, No. 3. March,1936, S. 315から。下線は山本)

なるほど、たしかに「世界について永久に理解できないことは、世界が理解できるということだ」と書いてある。

――というわけで、これで一件落着。しかるべき語で検索さえすれば、こんなふうに目指す資料を読めるわけである(もちろんネット上にある場合に限るけど)。

以上、調べ物の一例でした。

 

Ideas And Opinions

Ideas And Opinions

 

 

「人文的、あまりに人文的」第9回

吉川浩満くんとの連載書評対談「人文的、あまりに人文的」の第9回を東浩紀編『ゲンロンβ10』に寄稿しました。

今回は荒木優太さん『これからのエリック・ホッファーのために――在野研究者の生と心得』(東京書籍)と、互盛央さんの『日本国民であるために』(新潮選書)について話しています。

『ゲンロンβ10』は「うごめく「もの」に目を凝らす」という特集。

観(光)客公共論 東浩紀/もの派と土木 黒瀬陽平/『劇場版 艦これ』論 渡邉大輔/ラップ・ジェスチャー論 吉田雅史/福島の観客 小松理虔/山本貴光×吉川浩満/批評再生塾/総会フォトレポート

 

genron-tomonokai.com

 

これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得

これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得

 

  

日本国民であるために: 民主主義を考える四つの問い (新潮選書)

日本国民であるために: 民主主義を考える四つの問い (新潮選書)